映画『ちはやふる』でおなじみ!写真で見る百人一首の植物【上巻】
LOVEGREEN編集部
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もうすぐ新年。お正月の遊びといえば、かるたがありますね。今年は映画『ちはやふる』が大ヒットしたこともあり、和歌の世界に興味を持った方も多かったのではないでしょうか。実は、和歌の世界では、植物のある風景がとても巧みに取り入れられているのです。
今回は、百人一首(1番~33番)に取り入れられた、植物のある美しい風景についてご紹介します。
百人一首とは
「百人一首」とは、呼んで字のごとく100人の優れた歌人の歌を一首ずつ選んだ歌集です。歌を選定した人物には諸説ありますが、藤原定家だと言われ、今日なじみ深い「小倉百人一首」の名前は小倉山にある定家の山荘のふすまの色紙に歌が書きつけられていたことから生まれたと言われています。
百人一首のなかの植物
※番号は百人一首の歌番号です
もみじ
5.奥山に もみぢふみわけ なく鹿の 声聞く時ぞ 秋はかなしき
詠み人:猿丸太夫
落葉したもみじと仲間を求めて鳴く鹿。物悲しい雰囲気がありますね
桜
9.花の色は うつりにけりな いたづらに わが身よにふる ながめせしまに
詠み人:小野小町
長雨を見ている間に、花も私の美しさも色あせてしまったなぁという、有名な歌です
春の七草
15.君がため 春の野にいでて 若菜つむ わが衣手に 雪はふりつつ
詠み人:光孝天皇
写真はクローバーですが、この歌の「若菜」は春の七草のことだと言われています
松
16.立ちわかれ いなばの山の 峰に生(お)ふる まつとし聞かば 今帰り来む
詠み人:中納言行平
「あなたが稲葉山の松のように待っていてくれるなら、すぐに帰るよ」。山の峰に生える松と、「待つ」のダブルミーニング
もみじ
17.ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは
詠み人:在原業平朝臣
池の水面にもみじが散って赤く染まっていますね
芦(アシ)
19.難波潟(なにはがた) みじかき芦(あし)の ふしのまも あはでこの世を すぐしてよとや
詠み人:伊勢
「芦のみじかい節の間のように、ほんの少しの間もあなたに会えないのでしょうか」。
草木
22.吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ
詠み人:文屋康秀
強い山風が吹いて草木がしおれる姿が、文字通り「嵐」ですね
もみじ
24.このたびは ぬさもとりあへず 手向山(たむけやま) もみぢのにしき 神のまにまに
詠み人:菅家
ぬさ(神に祈るときに使う道具)のかわりにしたいほど、山の紅葉が美しい情景です
さねかづら
25.名にしおはば 逢坂山(あふさかやま)の さねかづら 人にしられで 来るよしもがな
詠み人:三条右大臣
「人に逢える」という意味の逢坂山と、「人と寝る」という意味の名前を持つさねかづら。逢坂山のさねかづらよ、ひとに知られないように恋人に会う手立てはないかなぁ……と思っているのですね
もみじ
26.小倉山(をぐらやま) 峰のもみぢ葉 心あらば いまひとたびの みゆき待たなむ
詠み人:貞信公
「もう一度行幸(みゆき)に行くまで散らずに待っていておくれ」と紅葉にお願いしている歌です
菊
29.心あてに 折らばや折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花
詠み人:凡河内躬恒
白い菊が霜をまとって見つかりづらい様子の歌です
もみじ
32.山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ もみぢなりけり
詠み人:春道列樹
川の水面に散ったもみじが、流れることもなくたまっている風情を歌っています
桜
33.ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花のちるらむ
詠み人:紀友則
古典の世界では桜と言ったらソメイヨシノではなく、ヤマザクラなどのことを指します。ピンクの花色と小さく出た葉っぱが可憐ですね
いかがでしたか?一見とっつきにくい和歌の世界。でもこうして写真で見れば、意外と私たちと同じ感性で詠まれていることがわかりますね。それぞれの季節に見合った歌がありますので、心の片隅にとどめておいていつでも楽しみたいものです。