たいせつな樹木を守る集団!じゅもくい女子会に迫る

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都内では、桜が開花する暖かい時期となってきました。公園や神社、お寺にある大きな桜の木は存在感のある美しさですね。

ところで、桜の木や大きな樹木などを診察している樹木のお医者さんである「樹木医」の方が、どのように樹木を診察しているか知っていますか?

今回、樹木医として活躍される株式会社木風(こふう)の代表の後藤瑞穂さんとスタッフのみなさまに密着してきましたので、実際の樹木医の一日や作業現場を見てみましょう。

そもそも樹木医とは?

樹木医は天然記念物などの巨樹古木の診断治療や、都市の街路樹の危険度診断、個人のお宅の大切な樹木の診断治療を行います。さらに単木の診断治療だけでなく、森林や環境全般の調査や保全にも関わる仕事です。

樹木医の一日について教えてください。

日によって全く違いますが樹木医は外で樹木に治療をするだけではなく、例えば街路樹診断をする場合は、朝から夕方まで100本ほどの樹木を1本1本診断して回ります。その時に調べた内容を別の日にはパソコンでまとめないといけません。さらにその1本1本のカルテを報告書にまとめたり、場合によっては今後の管理マニュアルの作成や提言書なども作ります。

 

 

単木の樹木の診断の場合は、1日2~3件回って調べたり、また同じようにカルテを作成したり処方箋に基づいて治療の準備を行ったりします。そして実際に治療を行う時は、1日樹木のそばで土壌改良を行ったり腐朽部の手当てなど現場の作業となります。

また、私の場合は独立している樹木医ですので、講演会やテレビ、ラジオに呼ばれたり、雑誌や新聞記事の原稿作成をする時間も多くあります。ブログを書いて情報発信をすることも大事な仕事ですし、セミナーなどに参加して勉強もします。多くの人に出会い、仕事の依頼を増やそうと営業活動も積極的に行っています。

どちらかというと地道な下作業が多く、樹木の診断治療の作業は全体の僅かな割合なのが実際のところです。

 

樹木の診察現場に密着!

今回、樹木医として活躍される株式会社木風(こふう)代表の後藤瑞穂さんが取り組まれている「NPO法人フォーエバーツリーネットワーク」の実際の診察現場に密着しました。

>>「NPO法人フォーエバーツリーネットワーク」とは?

予算が無く治療することがなかなかできない見放されている公共性の高い樹木を助けるために設立されたNPO法人です。

▼今回の診察場所は芝中学校・高等学校

 

診察する樹木は、どのような状態なのでしょうか?

大きな樹木はとても素晴らしいのですが、都市化が進む中管理が難しくなってきているのが現状です。管理される方も倒伏や枝折れの心配があります。

▼学校の裏門にある背の高い樹木のヒマラヤシーダー

 

今回、樹木を診断するメンバーについて教えてください。

 

後藤 瑞穂 [樹木医] 

NPO法人フォーエバーツリーネットワーク代表理事。株式会社 木風 代表取締役。樹木医・一級造園施工管理技士。九州造形短期大学卒業後、造園建設会社に入社。ハウステンボス建設事業、住宅開発、公園設計などに携わる。2001年、熊本県初の女性樹木医となり、天然記念物や貴重な樹木の診断および調査を手掛ける。最新樹木診断機器「ピカス音波計測器」を日本初導入し、以後、全国的に業務を行う。

 

福留 ユーサ [樹木医] 

樹木医後藤瑞穂の主宰する樹木医受験応援講座出身。東京農業大学 地域環境科学科 森林総合科学科 卒業。大洋造園土木株式会社入社。2013年 現在、通常の植栽管理業務に加え、街路樹診断、民間の保存樹木診断を行う。

 

 

樹木医を目指し、東京環境工科専門学校に通う学生3名

 

どうやって診断するのでしょうか?

「ピカス樹木腐朽診断」

ピカス音波計測器は、ドイツ製の音波を使った樹木の腐朽診断機器です。

音は、個体>液体>気体という密度の順に伝わりやすい性質を持っている為、音が樹木内部を伝わるときも健康な部位は密度が高く速度が上がり、腐朽を受けた部位は密度が低く速度が下がります。ピカスはこの「腐朽と音との関係」を要することで断層画像を測定しています。

※腐朽(ふきゅう)とは、腐って崩れたり、傷んでいることを指す。

 

ピカス樹木腐朽診断の流れ

▼樹木の胴囲に釘を打ち込んでいく

 

▼ピカス音波計測器を樹木を囲うようにつけていきます。

 

▼パソコンと釘を線でつなぎ、ハンマーで叩き音が樹木内部を伝わる様子を確認します。

 

▼パソコンで正確に数値が取れているか確認する。

 

▼外部から樹木の状態を確認し、樹木内部の検査をしていきます。今回の診察結果は腐朽病害がなく、健全な状態でした。

 

腐朽が進んでいた場合の対処は、どうするのでしょうか?

樹木は内部が腐ってしまうとその部分は組織が回復しません。腐った箇所はだんだん空洞になってきます。そうすると幹の強度は下がり倒伏や枝折れを引き起こす危険性が高まります。

以前はその空洞にコンクリートやウレタンなどを充てんする治療法がありましたが、私が資格を取った頃は既にこの方法は湿度が高まり逆に腐朽を進行させてしまうことがわかり、現在では腐朽部はできるだけ乾燥させて殺菌剤を塗布し腐朽菌の進行を抑制するようにします。

 

腐朽している可能性のある樹木の見分け方とは?

外から見てわかりやすい腐朽は、空洞です。

樹木に腐朽菌が侵入すると木材を栄養源として摂取し材が強度を失い朽ちていきます。その結果が空洞となります。

しかし、外から見てわからない内部の腐朽もあります。その傾向としてキノコの存在があります。キノコは腐朽菌のいわば花です。内部で木材を多量に摂取し、外部へ移動するときに樹皮の外側にキノコを形成し胞子を飛ばして伝搬し新たな樹木を腐朽させます。ですからキノコが出ている場合は樹木が腐朽しているということになります。

▼写真は外観から見てベッコウタケが発生しているものです。

 

 

▼この樹を調べた結果のピカス画像。

 

 

さらに、キノコが出ていなくても腐朽している場合がありますが、私たち樹木医は木槌で叩いて内部の状況を確認します。中身の詰まった高い音がする時は腐朽していませんが、ボクボク、といったように手に木魚のようにうつろに響く音の時は内部は腐朽しています。

しかし、より太い樹木の時はそれすらもわかりませんので、その時は精密診断機器を使って内部の空洞の状況を診断します。診断機器は針を刺す物理的な診断機器から、音波やγ線を使った精密診断機器があり、外から見てもわからない内部の腐朽の様子を調べるのに利用されています。

 

「ピカス樹木腐朽診断」をオススメする理由とは?

 

そもそも、なぜ樹木を診断しなくてはいけないの?

人間には人間のお医者さん、動物には獣医さんがいるように、樹木も生き物ですので、病気やけがの時は診断治療が必要です。

私たち人間を始めとする動物は、樹木や植物といった生産者がいないと生きていけません。しかしながら特に人間は時として、その重要さを忘れ樹木や植物を蔑ろにしてしまうことがあります。森林破壊や都市化などによって緑が失われています。また、街路樹においては重要度は高いものの倒木などの危険も無視できない為、人間社会と自然環境のバランスを保つために樹木を診断して適切な治療を施す必要があるのです。

 

大切な木を守る「じゅもくい女子会」

今回、密着した樹木医さんは女性ばかりの集団。

樹木医と聞くと、男性のイメージをされることもあるのでは。樹木医として活躍される木風さんは、「じゅもくい女子会」という活動もされています。

 

じゅもくい女子会とは

「NPO法人フォーエバーツリーネットワーク」で発足した女性樹木医さんの為のプラットフォームです。じゅもくい女子会は樹木医であることや、樹木医を目指している人が入会することができます。

 

じゅもくい女子会を立ち上げた経緯とは

樹木の診断治療の仕事は、イメージするほど多くありません。

その為、樹木医の資格を取っても仕事の機会は少なく、目指している人にとっても経験する場所がほとんどありません。

樹木医はまだ全国に2600人程度。女性樹木医においてはそのうちの1割の約250人です。普段は交流できない女性樹木医同士の交流や情報交換、技術の向上の為に会社や組織の枠を超えて集える場所ができないかと考えて立ち上げました。

>>じゅもくい女子会をみてみる

 

日頃どんな活動をされてますか?

「ご神木プロジェクト」「街の樹プロジェクト」「学校の樹プロジェクト」などのように、助けを求めている樹木の診断治療の依頼があった時に診断治療やイベントを実施したり、株式会社木風の仕事の現場に研修として参加したり、エコプロダクツなどの展示会で活動紹介を行っています。 

 

▼こちらは市川八幡宮のクスノキを再生したビフォーアフター

 

他の活動を見てみよう!

 

樹木医として、今後どんなことを伝えていきたいですか?

これまでにない、全く新しい樹木や環境の保全活動を確立したいと思っています。

「ご神木プロジェクト」やその他のプロジェクトなど、全国で助けを必要としている巨樹古木を診断治療して、木だけでなく、街や人、地方そのものが元気になるような活力源になりたいと思っています。樹木そのものが文化的で実際の収益を生み出す存在になって行ければと考えています。

樹木が人を、社会を豊かにし、私たち人間とより良い関係となるよう懸け橋になりたいです。

 

今回、診察現場に密着させて頂いた株式会社木風 代表の後藤瑞穂さんは、国土交通省をはじめとする官公庁からの樹木診断業務、生態系のバランスを考慮した企業の森林修景アドバイス、樹木医式緑地管理をされています。さらに環境資材の開発、セミナー開催、講演会講師、熊本日日新聞での連載をまとめたエッセイ本「樹を診る女のつぶやき」出版など幅広く活動しています。

>>エッセイ本「樹を診る女のつぶやき」はコチラ

 

 

 

株式会社木風さんの樹木診断や治療、活動も是非チェックしてみてください。

 

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