ビカクシダ・ウィリンキーを胞子培養して育ててみよう

峰亜由美

ビカクシダというシダ植物をご存知でしょうか?コウモリの羽根のような個性的な形をしている事から、別名コウモリランとも呼ばれています。
今回はLOVEGREEN編集部に大きなビカクシダのウィリンキーが仲間入りし、一枝折れてしまった葉の裏に沢山の胞子がついていたので、胞子培養でビカクシダを増やしてみる事にしました。5つの育て方で胞子から育てていく事にしましたが、どの育て方で胞子が発芽するのか?観察してみましょう。ビカクシダ胞子培養の世界へ。
目次
ビカクシダ・ウィリンキーってどんな植物
ビカクシダは樹木に着生して自生しているシダの仲間です。ビカクシダは個性的な生育をする植物で、役割の違う2種類の葉を持っているのが特徴です。
一つは、株元に張り付くように生えている「外套葉(がいとうよう)」という貯水の役割をする丸みを帯びた葉で、もう一つは、長細く葉の先が鹿の角の様に分かれた様な形をしている「胞子葉(ほうしよう)」という葉です。
胞子葉は、大きく生長すると葉の先の裏側に沢山の胞子嚢(ほうしのう)をつけます。
ビカクシダは、色々な種類と原産国がありますが、今回育てるビカクシダ・ウィリンキーは、赤道直下の熱帯地方に多く分布しているビカクシダです。
ビカクシダ・ウィリンキーは、ビカクシダの中でも大型の種類で、水を溜める外套葉と胞子をつける胞子葉が上下に伸び、胞子葉は長く垂れ下がり優雅な姿をしています。
生長は、乾期と雨季がはっきりとした地域が原産の為、4~10月の乾期の間に外套葉を生長させ、雨季の11~3月までは生長期で胞子葉を大きく生長させる特徴があります。
ビカクシダ・ウィリンキーの胞子培養をしてみよう
胞子培養に挑戦してみたいと思います。この写真の様に葉の裏についている茶色の部分が胞子です。葉の先の部分にビロードのようなフワフワとした様子で着いています。
ビカクシダの胞子ってこんな形
顕微鏡でのぞき込むとクルっと先が丸まった胞子の殻が葉の裏を覆っています。この殻の中に胞子のうが隠れています。
胞子を集めてみよう
ビカクシダ・ウィリンキーの葉の裏についている胞子をスプーンを使って集めてみました。
集めた胞子は小さな器に入れます。
収穫したら、一週間ほど乾燥させて胞子のうという小さな種を出します。この茶色く見える所は胞子の周りを包んでいる皮です。乾燥させる事によって付着している小さな種が剥がれ落ちます。
乾燥させる為、紙などに包んで10日程、保存しましょう。
乾燥させた胞子からは、青い丸の中に見える卵型で金色の胞子のうが出てきました。キラキラしていて美しい様子をしています。
いよいよ胞子のうを撒ます。
準備するもの
1.バーミキュライト
2.ピートモス(今回はピートモスを固めた小さな鉢を使用します。)
3.水苔
4.ジフィーセブン(ピートモス、やし繊維、肥料が混ざっている種まき用の土)
5.素焼きの置き物(素焼きのヤギ)
6.タッパー
7.筆
準備が出来たらいよいよ胞子を撒いてみよう。
ビカクシダ・ウィリンキーの胞子培養をする前に
胞子をまく前に、バスタブに熱めの湯を張り、バスルームを蒸気でいっぱいにし、空気中のカビなどの菌を殺菌してから、蒸気の中で胞子を撒きます。室内を温め蒸気を充満させた部屋を準備しておきましょう。
ビカクシダ・ウィリンキーの胞子をバーミキュライトにまく
バーミキュライトをタッパーに入れて、バーミキュライトの高さ半分くらいまで水を入れます。
そして、水とバーミキュライトが入ったタッパーを殺菌の為に、電子レンジで加熱し冷ましておきます。
室温を上げた蒸気いっぱいのバスルームでビカクシダ・ウィリンキーの胞子をまく準備。筆の先に胞子をつけます。
そのまま、蒸気をいっぱいにし温度を上げた部屋で、ビカクシダ・ウィリンキーの胞子を筆の先につけて撒きます。
ビカクシダ・ウィリンキーの胞子をピートモスポットにまく
事前に、ピートモスポットに水を含ませて柔らかくしておきましょう。
水を含ませたピートモスポットを入れたタッパーに蓋をして、電子レンジで加熱をして殺菌します。
加熱後、熱を冷ましてから、バスルームなど、蒸気をいっぱいにし温度を上げた部屋で、ビカクシダ・ウィリンキーの胞子を筆の先につけて撒きます。
ビカクシダ・ウィリンキーの胞子を水苔にまく
水苔に水を含ませておきましょう。
水に含ませた水苔は熱湯又は電子レンジで加熱して殺菌します。加熱した水苔は、タッパーの蓋をしたまま冷ましておきます。
冷ました水苔は、軽く水を絞って、そのままタッパーに敷き詰めても大丈夫ですが、今回はピートモスの鉢に詰めて胞子を撒いてみる事にしました。
バスルームなど、蒸気をいっぱいにし温度を上げた部屋で、ビカクシダ・ウィリンキーの胞子を筆の先につけて、水苔に胞子を撒きます。撒き終わったらタッパーに蓋をして発芽までそのままで待ちます。
なかなか発芽しなかったビカクシダ・ウィリンキーでしたが、4週間程たったら、うっすらと、水苔の表面に発芽した胞子が緑色に色づきはじめました。
顕微鏡で発芽したビカクシダ・ウィリンキーをみてみよう
ビカクシダ・ウィリンキーを20倍のマクロレンズを使って観察すると、小さなビカクシダ・ウィリンキー。
顕微鏡を使用して観察すると細い茎の先にハート形をした葉が広がっています。モザイクの様な凹凸があり、光の反射でキラキラと輝いています。なんとも繊細で可愛らしい様子です。
ビカクシダ・ウィリンキーの胞子をジフィーセブンにまく
ジフィーセブンに水を吸わせます。右側が水を吸わせる前のジフィーセブンで小さくてコンパクトです。
水を吸わせた後に、カビなどの菌を殺菌する為、密閉出来るタッパーに入れて電子レンジで除菌し、蓋をしたまま熱を冷まします。
タッパーの中のジフィーセブンの熱が冷めたら、バスルームなど高めの温度のシャワーでスチームでいっぱいにし、空気中のカビ菌などを殺菌し、胞子をジフィーセブンに撒きます。撒いた後は蓋をします。このまま蓋をして新芽が出てくるまで待ちます。
ジフィーセブンに撒いたビカクシダ・ウィリンキーの胞子は、水苔よりも3週間後に発芽したのですが、その後の生育は水苔のビカクシダよりも速く、グリーンも鮮やかです。
ジフィーセブンに発芽したビカクシダ・ウィリンキーを拡大してみるとハート形をした葉が沢山連なっていました。
ビカクシダ・ウィンリキーの胞子を素焼きの置き物にまく
素焼きの羊も水を含ませます。この素焼きの置き物はグァテマラから来た、種蒔きができる素焼きの置き物で、置き物にあるたくさんの凹凸と筋になった溝があります。チアシード等をまくと、ふわふわもこもこの羊になる置き物です。この置き物にもビカクシダ・ウィリンキーの胞子をまいてみました。
素焼きは熱湯消毒をします。
素焼きのヤギを、バスルームなど、蒸気をいっぱいにし温度を上げた部屋で、素焼きの置き物に、ビカクシダ・ウィリンキーの胞子を筆の先につけて撒きます。
ビカクシダ・ウィリンキーの胞子を撒き終わったら
直射日光は苦手の為、明るく気温の高い日陰で管理しましょう。
室内の場合、植物育成ライトを使うと育ちも良くなりますが、無い場合は昼間は日光が当たる窓辺で、タッパー内の温度を上げて、直射日光には当たらせない用に、タッパーの蓋の上に影が出来るような紙などで遮光してあげるとより生育が速くなります。
バーミキュライト、ピートモス、水苔、ジフィーセブン、素焼き、其々にビカクシダ・ウィンキーの胞子をまく事が出来ました。全てのタッパー内は殺菌をしてあるので、蓋をしめて発芽までは開けない様に観察してみましょう。
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