オオイヌノフグリ|名前の由来、花と実の特徴、ネモフィラとの違いを解説

山田智美
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可憐な春の野花オオイヌノフグリについて、名前の由来、花と実の特徴や季節、花言葉、ネモフィラや他の似た花との違いと見分け方など、わかりやすく解説します。
目次
- オオイヌノフグリとは?基本情報
- オオイヌノフグリの花言葉
- オオイヌノフグリ|名前の由来、実の特徴
- オオイヌノフグリ|花の特徴や季節
- オオイヌノフグリとネモフィラの違い
- オオイヌノフグリに似た花4種|違いと見分け方
オオイヌノフグリとは?基本情報
- 学名:Veronica persica
- 科名属名:オオバコ科クワガタソウ(ベロニカ)属
- 分類:越年草
- 別名:星の瞳、瑠璃唐草、天人唐草
オオイヌノフグリの特徴
オオイヌノフグリは、水色の花がかわいらしいオオバコ科クワガタソウ(ベロニカ)属の越年草。草丈低くほふくするように広がっていくので、満開の時期には水色のカーペットのような美しい景色に出会えます。花は一日花で、日が昇ると開き、日が陰ると閉じてしまいます。
身近な場所で見かける春の野草として人気がありますが、実は日本の固有種ではなくヨーロッパ原産の外来種です。可憐な姿とは裏腹にたくましく日本で増えてきた草花。外来種というと厄介な雑草というイメージを持たれがちですが、春を報せる水色の小花として多くの人に愛されている野草です。
越年草とは、秋に発芽して、ロゼット状に緑の葉を出したまま越冬し、翌春開花する一年草のこと。耐寒性のある一年草に含まれますが、区別して越年草という表現を使用することがあります。レンゲソウやナズナなどが越年草です。
オオイヌノフグリの花言葉
オオイヌノフグリの花言葉は「忠実」「信頼」「清らか」です。
可憐な佇まいのオオイヌノフグリらしい花言葉です。またこの花言葉は、ゴルゴタで処刑地に向かって歩くキリストの血を、自らのハンカチで拭おうとした献身的な女性ヴェロニカの伝説に由来するそうです。この時のヴェロニカのハンカチには奇跡を起こす不思議な力が宿り、やがて聖女ヴェロニカと呼ばれるようになったといわれています。学名の Veronica は、聖女ヴェロニカの名前に由来します。
オオイヌノフグリ|名前の由来、実の特徴
オオイヌノフグリの実
オオイヌノフグリの名前の由来
オオイヌノフグリという名前の由来は、イヌノフグリという日本在来種の植物に似ていて、それよりも花や草姿が大きいことによります。イヌノフグリよりも大きいからオオイヌノフグリという、とてもシンプルな命名です。
フグリとは睾丸という意味で、イヌノフグリの実が犬の睾丸に似ているということから名付けられました。命名は牧野富太郎博士ということですが、オオイヌノフグリにとってもイヌノフグリにとっても災難な名前なのではないでしょうか。
オオイヌノフグリの実の特徴
オオイヌノフグリの実は、直径5mm程度、全体に軟毛があり、中央で2つの分かれたようなフォルムをしていて、種の入っている部分はふくらみを帯びています。実は、花が終わった後にできますが、花や葉よりも小さく、色もグリーンで目立たないのでわかりづらいかもしれません。花の盛りの時期には同じ株の中に花と実が混在しているので、少しは見つけやすいと思います。オオイヌノフグリがたくさん咲いているのを見かけたら、ぜひ観察してみてください。
実際にオオイヌノフグリの実をじっくり観察してみましたが、あまり犬の睾丸に似ているようには思えませんでした。あるいは最近の犬の多くは去勢手術をされているので、ピンとこなかったのかもしれません。また、イヌノフグリの実の方が丸みを帯びていて、より犬の睾丸に似ているという話も聞きますが、残念ながらそちらはまだ確認できていません。
オオイヌノフグリ|花の特徴や季節
オオイヌノフグリの花咲く季節や見頃
オオイヌノフグリの花が咲くのは、2月~5月です。まだ寒さが残る早春からちらほらと咲き始め、春が深まるにしたがって花数を増やしていきます。花の見頃は、4月中旬から下旬。ソメイヨシノが散り葉桜になった頃、野原に水色のカーペットを敷いたように群れて咲き誇ります。
オオイヌノフグリの花の特徴
オオイヌノフグリの一つ一つの花は、直径径1cm足らずととても小ぶりです。花びらは4枚、花色は中心が抜けるように白く、外側は鮮やかな水色をしていて、中心には点のような小さなしべ類があります。さらに花をよく観察すると、水色の部分には縞模様のような色の濃淡があります。小さな花ながら単色ではなく、複雑な色のグラデーションをしているのが特徴です。
オオイヌノフグリの花は一日花で、日が当たる時間しか開かないという特徴があります。日中早い時間でも建物の陰になったりする場所では花を閉じてしまいます。花は、指で触れるとほろりと落ちてしまい、強い風が吹いても飛んでしまうような、はかなく可憐な花です。
オオイヌノフグリとネモフィラの違い
ネモフィラの花
オオイヌノフグリによく似た花に、ネモフィラという園芸品種の花があります。
オオイヌノフグリはオオバコ科クワガタソウ(ベロニカ)属、ネモフィラはムラサキ科ネモフィラ属。花が咲く時期や花色が似ていますが、オオイヌノフグリとネモフィラは、まったくの別種です。また、オオイヌノフグリの花は直径1cm足らず、ネモフィラの花は直径2cm程度と大きさが違います。さらに、オオイヌノフグリの葉は緩やかな鋸歯がある丸みを帯びていて、ネモフィラの葉は深く切れ込みの入ったフォルムをしているので、葉も違います。
オオイヌノフグリとネモフィラの一番の大きな違いは、オオイヌノフグリは野に咲く花、ネモフィラは園芸品種であり販売されている花という点です。どちらも水色の花がかわいい草花ですが、オオイヌノフグリは園芸店では販売されていません。
オオイヌノフグリとネモフィラの見分け方
咲いている場所で見分ける
・オオイヌノフグリは、空き地や公園、野原など、身近な場所で見かける野草
・ネモフィラは園芸店で流通している他、花壇や鉢植えなどで人為的に栽培される園芸品種
花の特徴で見分ける
・オオイヌノフグリは、花径1cm足らずで、花びらに縞模様がある
・ネモフィラは、花径2cm程度で、花びらに縞模様はない
葉の特徴で見分ける
・オオイヌノフグリは、緩やかな鋸歯のある丸みを帯びたフォルム
・ネモフィラは、深く切れ込みの入ったフォルム
▼ネモフィラについて詳しくはこちら
オオイヌノフグリに似た花4種|違いと見分け方
イヌノフグリ
- 学名:Veronica polita
- 科名属名:オオバコ科クワガタソウ(ベロニカ)属
イヌノフグリは、クワガタソウ(ベロニカ)属の越年草。日本在来種の草花で、オオイヌノフグリよりも花も葉もずっと小さく、花は淡いピンクや白をしています。花の後にできる実が、犬の睾丸に似ているというのが名前の由来です。
今では外来種のオオイヌノフグリに押されるように数を減らしてしまい、絶滅危惧種にも指定されています。身近な場所ではあまり見かけない花です。見分けるポイントは、花の色と大きさです。
フラサバソウ
- 学名:Veronica hederifolia
- 科名属名:オオバコ科クワガタソウ(ベロニカ)属
フラサバソウは、オオイヌノフグリと同じくクワガタソウ(ベロニカ)属の越年草。アメリカ原産の外来種で、オオイヌノフグリによく似ています。見分けるポイントは、全草に細かい毛が生えているところや、花が小さいところ、果実のフォルムなどです。
タチイヌノフグリ
- 学名:Veronica arvensis
- 科名属名:オオバコ科クワガタソウ(ベロニカ)属
タチイヌノフグリは、オオイヌノフグリと同じくクワガタソウ(ベロニカ)属の越年草。ヨーロッパ原産の帰化植物で、10~30cm程の草丈に、花径3~4mmの小さな花を咲かせます。
見分けるポイントは、オオイヌノフグリが地面を這うように生長するのに対し、タチイヌノフグリは上にまっすぐに伸びていきます。イヌノフグリに似ているけど、立って伸びるからタチイヌノフグリというのが名前の由来です。身近な場所で見かける野草です。
ベロニカ・オックスフォードブルー
- 学名:Veronica peduncularis ‘Oxford Blue’
- 科名属名:オオバコ科クワガタソウ(ベロニカ)属
ベロニカ・オックスフォードブルーは、オオイヌノフグリと同じくクワガタソウ(ベロニカ)属の多年草。真青な花が美しく、園芸品種として流通しています。花壇で楽しめる花です。
見分けるポイントは、花の色と見かける場所です。ベロニカ・オックスフォードブルーは、園芸品種なのでお庭や花壇、鉢植えで人為的に育てられています。
春の野を明るい水色で彩るオオイヌノフグリ。道端で見かけると、ついついしゃがみ込んで眺めてしまうようなかわいらしい花です。小さいながらも可憐な花を咲かせる野草について、じっくり観察する時間を持ってみませんか。身近にある小さな春を味わってください。
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