あの人の庭③|スコップひとつで育んだ森のような庭
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その庭は、まるで森の中にいるような心地よさをもたらしてくれる――。
今回の「あの人の庭」は、Instagramでも人気の浜島さん一家(botanical.0715)の庭をご紹介します。なんとこの庭、ほぼスコップひとつでつくりあげたというのだから驚き。一体どのようにして、この素敵な庭をつくりあげてきたのでしょう。
9月の上旬、まだ暑さが残る和歌山県へ、浜島さんの庭を訪ねました。
最初から庭を完成形にしない
残暑厳しい住宅街の中にあって、その家の一角だけは、瑞々しく茂る植物たちが目から涼を与えてくれます。出迎えてくれたのは、穏やかな笑顔の浜島さんご夫妻と、可愛すぎるトイプードルの「大福さん」「小福さん」。
森のような外観が遠目からも目を引く浜島さん宅
――スコップひとつでお庭を造られたそうですね。
ホームセンターで買った普通のスコップですね。我が家で一番大きい庭道具は本当にこれで。自分で穴を掘って庭木を植えて、数年かけて今の庭に育ちました。
この小ぶりなスコップひとつで数々の庭木を植えてきた
――庭にはどのような植物を植えていますか?
玄関のアプローチ部分にシンボルツリー的に大きなアガベ・アテナータがあり、その後ろに家を建てた際に植えたシマトネリコがそびえています。
3種類のミモザ(アカシア・ブルーブッシュ、サンカクバアカシア、アカシア・フロリバンダ)は、玄関前や庭エリアにバランス良く配置して植えました。
他にはユーカリやグレビレア、あとはオージープランツのバンクシアやプロテアなどがメインの庭木ですね。
風に揺れる姿がきれいな木々や、季節ごとに花を咲かせる植物が好きで。庭に彩りを添えてくれて豊かな気持ちになるんです。
小さな苗木が植えて数年でわさわさに。目隠しの木製フェンスも自作
――庭の管理で大変なことは?
庭木の剪定はかなり労力がいるので大変ではありますが、一方で生長を感じられるので楽しくもあります。
あとは、僕も妻も実は虫が苦手でして……(笑)。ミモザにつくカイガラムシなんかは剪定のときに一緒に除去するのですが、他の虫は……見ないふりをしています(笑)。
剪定した枝は奥様がつくるドライフラワーにも活用。自宅とは別のアトリエでドライフラワーのワークショップも行う
太い剪定枝はキャンプで使う薪用に確保
――庭づくりで意識している点はありますか?
最初から完璧な庭を求めなかったのが良かったかもしれません。
庭木は数年かけて大きくなるので、全体のバランスを見ながらゆっくり作り上げていくほうが失敗も少ないし、理想の庭に近づけやすいと感じます。
それはハード面でも同じで、育てたい植物が決まっていないうちに、花壇などをレンガやコンクリートで作りこんでしまうと、実際に暮らしてみて「ここに〇〇の木を植えたいな」と思っても自由度が減ってしまいますよね。
うちの庭も家を建てて1年間は手つかずでした。自分たちに植物の知識がついてきた頃から、好きなテイストの庭木を選んで、少しずつ植えていったんです。
古い靴にアガベの子株を植えて。小さな遊び心が楽しい
ちなみに、家庭菜園も何度かチャレンジしたことがあるのですが、ことごとく失敗してしまい……(笑)。もし家を建てた時に家庭菜園コーナーをガチガチに作りこんでいたら後悔していたかもしれません。
――庭木を植える際に気をつけたほうがいいポイントはありますか?
生長した後に、全体がどのようなシルエットになるのかを想像するのが大事だと思います。植えた子が大木になる樹なのか、中木なのかを調べてから植えるのがおすすめですね。
無趣味だった僕がいつの間にか植物の虜に
浜島さんの庭は屋外だけではありません。一歩リビングに足を踏み入れると、そこには「室内の庭」ともいえる緑に囲まれた空間が姿を現します。床から頭上まで植物で埋め尽くされた様子は、まさに植物とのルームシェア!
――すごい数の植物ですが、そもそもいつから植物を育てるように?
2013年に家を建てた時からなので、約12年前ですね。近所の雑貨屋さんで見かけた観葉植物が気になり、リビングにゴムの木系の観葉植物を置きだしたのがはじまりです。
――それが今や家の中も外も植物だらけに。
その雑貨屋さんが植物専門のお店も始められ、いろいろと相談しながら植物の話をするのが楽しくて、あれよあれよという間に緑が増えていきました。
植物の置き場所がなくなってきたため、梁と梁の間にワイヤーを張って植物を吊るしている
――植物は昔から好きだったのですか?
それが家を建てるまで、僕も妻も全く植物のことを知らなくて、お花といえばチューリップやヒマワリを思い浮かべるぐらい……。植物だけでなく、学生時代からこれといった趣味がなく、遊びで少しギターを弾く程度。なので、40歳にして初めてできた趣味が植物を育てることでした。
奥様:
私も大切に水やりをして育てていた庭の植物が、犬の散歩中にそこら中に生えているのを見て「一生懸命育てていたのは雑草だった!」と愕然としたり(笑)。最初はそれぐらい植物のことを知りませんでした。
自分の生活サイクルと相性のいい植物が残る
――これだけの植物を育てていると、枯らすことも多いと思います。
最初の頃はたくさん枯らしてしまいましたね。
自分のなかでルールがあって、同じ品種を3回までは育ててみようと決めています。3回育ててみても枯らすなら、自分の生活サイクルや住環境に合っていない植物なんだとあきらめるようにしています。
――室内ではどのような植物が多いですか?
エアプランツやビカクシダなど、ジメジメ系の植物が多いですね。特にエアプランツは形のユニークさや育てやすさが魅力です。品種にはあまりこだわりがなくて、それよりも見た目や育てやすさ、空間全体のバランスを重視して植物を選んでいます。
夏の間はバルコニーにあるパーゴラに遮光ネットを張り、屋外でビカクシダやエアプランツを吊るして管理する
――どの植物もとても状態がいいのに驚きました。管理が大変なのでは?
大変なこともありますが、あまり「完璧」を目指さないようにしています。すべての植物を同じように管理するのは難しいので、強い子と弱い子を見極めて、負担なく続けられるペースで世話をしています。
あと利点としては、うちのリビングは吹き抜けになっていて天井にシーリングファンがあるので、常に空気が動いていることと、犬がいるので快適な室温に保っているのが、植物にもいい環境になっていると思います。
人や動物にとって快適な環境は、多くの植物にとっても快適なんだなと実感していますね。
庭で過ごす時間が、かけがえのないものに
――庭では普段どのように過ごしていますか?
木製の目隠しフェンスを自作して、庭全体がプライベート空間になっているので、人目を気にせず植物を見てまわる時間が楽しいですね。
庭でご飯を食べることも多いです。森の中のような非日常感を感じることができて、遠くにキャンプに行かなくても自然を感じられるのはうれしいですね。コロナ禍の時には、庭にテントを張って楽しんだりしました。
チェアーを出すだけで、たちまち庭がプライベートキャンプのような空間に
あとは、少し離れた場所から、家と庭木のバランスを眺めるのも好きです。次はどうやって剪定しようかな?と考えたりして。近所の人が見たら怪しいかもですが(笑)
――浜島さんにとって、植物や庭のある暮らしとは?
植物や庭は暮らしを豊かにしてくれる欠かせない存在です。植物の生長に励まされたり、花が咲くことで季節を感じたり。忙しい時でも庭に出ると心が落ち着きます。
暮らしの中で植物が呼吸をしているのを感じられる、家にいながらにして、森の中にいるような感覚になる。そのちょっとした非日常感が楽しくて、ずっとその魅力に夢中です。
浜島 輝さん プロフィール
和歌山市に12年前に家を建てて以来、植物にどっぷりハマった昭和60年生まれの会社員。スコップひとつでつくりあげた庭や、緑に囲まれた暮らしをInstagramで発信し、フォロワー数は約10万人。ご夫妻と高校生の息子さん+トイプードルの大福さん・小福さん、そしてたくさんの植物と共に暮らしている。
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