「古」と「生」が生みだす唯一無二の世界『はいいろオオカミ+花屋 西別府商店』
渡邊ありさ
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東京、南青山の裏路地に佇むマンションの1室にお店を構える『はいいろオオカミ+花屋 西別府商店』。目じるしは、マンションを覆う群青色のタイルと、マンションの前にそっと掛けられた看板。この日、『花屋 西別府商店』店主の西別府久幸さんにお話を伺いました。
はじまりは、店主ふたりの出会い
その独特なセンスと世界観から、ファンも多い『はいいろオオカミ+花屋 西別府商店』。まずはその成り立ちについてお伺いしました。
中目黒の花屋に勤務していた西別府さん。表参道にお店を構えることとなり、その際に『道具と雑貨 はいいろオオカミ』として、既にこの場所にお店を構えていた佐藤克耶さんと知り合います。
これが、『はいいろオオカミ+花屋 西別府商店』始まりのきっかけです。
西別府さんは、佐藤さんが主にロシアから仕入れてくる古物と自身がセレクトする植物は絶対に相性が良いと考え、合同でお店を構えることを決めます。そうして、『道具と雑貨 はいいろオオカミ』に、西別府さんの花屋が加わり『はいいろオオカミ+花屋 西別府商店』として改めてスタートをしたのです。
『はいいろオオカミ+花屋 西別府商店』としてスタートするにあたり、西別府さんと佐藤さんの間で決めごとを設けたり、お店のコンセプトを明確に共有するようなことはありませんでした。「僕らふたりに共通していたのは、モノを売りたいというよりも、僕らが表現した世界観を味わってもらいたい。非現実に浸ってもらいたい。という想い。そこにモノがついてくるという感じかな。」と話す西別府さん。おふたりの共通した想いから創り出される空間は、まさに、唯一無二。古物と植物が互いに引き立てあうように見事に調和し、共存しています。
古物と、植物。「古」と「生」。真逆の要素が混ざり合う店内は、遠い異国の古い静物画を彷彿させるような、しんとした空気の流れと、生き物たちの息遣いが感じらる空間。
自然の花は‟ここに生けてくれ!”と、僕が動かされる
育てやすさや美しさが追及され、あらゆる植物の品種改良が進む一方で、伸び放題の雑草など、人の手が加えられていない植物に惹かれるという西別府さん。店内に並ぶ植物も、オーストラリアのワイルドフラワーを中心に、長野の知人の山から仕入れるなど、自然の花たちが多いそうです。
さらに自然の花について「つくられた花は、僕がここに生けようと思って生ける。でも自然の花は‟ここに生けてくれ!”と、僕が動かされる。この違いは何なのでしょうね。そこが面白いです。」と、その不思議な魅力を教えてくれました。
今、食虫植物に惹かれています
そんな中でも、西別府さんが今、特に気になっている植物は食虫植物。年に2度タイへ赴き仕入れているとのことで、店内を見渡すと至る所にウツボカズラが生息していました。その魅力を尋ねると、「やっぱり形ですかね。このツヤ感と。尚且つ、中に虫が入るんですよ?未知な植物だなあって。でも、そこにいる理由がちゃんとあるんですよね。」と、まさに惚れ惚れとした様子で教えてくれました。
おっと。少しヒヤッとするシーンも。この世界はいつだってドラマチックです。(ちなみに、西別府さんは虫が苦手なのだそう。)
種から知る植物の魅力
もうひとつ、西別府さんのお話で興味深かったのが、種の話。「僕、すごく種が好きなんです。」と、様々な種を取り出し、いくつかその特徴を教えていただきました。こちらはカエンボクの種。「ハートの形をしているんです。可愛いですよね。この種は、ヒラヒラと風に舞って、海を渡るんです。」と、その場にヒラヒラと種を蒔きつつ話をしてくれました。
入り口の脇に置かれた引き出しを空けると、個性的な種の数々。こんなところに、こんなにたくさん種が潜んでいたとは驚きます。ひとつひとつに理由があり、物語がある種。是非『はいいろオオカミ+花屋 西別府商店』に行かれる際には、お花についてはもちろん、種についてもそのエピソードを訊ねてみてください。より植物が愛おしく感じられます。
さいごに
「この花かわいいなあ」と、まじまじと一輪のディケロステンマを眺める西別府さん。実は、ジブリ映画が描く不思議な植物の世界や色使いに大きく影響を受け、「ここにいたい」「こういう空間を作りたい」と思ったことがきっかけで花の世界へ飛び込んだそう。
鹿児島の自然に囲まれて育ったこともあり、とことん植物への愛が深い方です。そんな西別府さんが佐藤さんと共につくる、まるでおとぎの国のような、絵本の世界のような、はたまた異国にいるかのような『はいいろオオカミ+花屋 西別府商店』の世界へ、是非訪れてみてください。
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