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植物はなぜ季節がわかるのだろう|二宮孝嗣の「自然・植物よもやま話」⑥

photo by 二宮孝嗣 中国・上海

世界のフラワーショーで数々の受賞歴をもち、庭・植物のスペシャリストであるガーデンデザイナー・二宮孝嗣さんによるコラム連載「自然・植物よもやま話」をお届けします。今回は「植物はどんな風に季節を感じているか」について、二宮さんと一緒に考えてみましょう。

植物が季節を感じるのはどうして?

日本では、植物が四季折々の姿を見せて我々を楽しませてくれます。今回は、季節をどんなふうに植物が感じ、移り行く季節を楽しんでいるのか考えてみたいと思います。

今、植物はちょうど紅葉も終わり、冬支度をしている最中です。日本の様に四季がはっきりとある国は温帯から寒帯にかけての国々で、日本より南にある国はあまり四季がはっきりせず一年を通して暑いです。ただ、雨季と乾季がある国もあり、それに合わせて植物も花を咲かせたり、落葉したりするものもあります。

ここでは、日本の植物と季節についてお話ししましょう。

まず、植物はどこで季節を感じているのでしょうか? 人間の様に皮膚はなく、脳もありません。ある程度は役割分担していますが、動物の様に命令を出す脳のような機関はありません。季節を感じるのは葉と言われていますが、そこから植物全体への指令を伝達する神経系は持っていません。

日長時間とフロリーゲンの不思議

photo by 二宮孝嗣 南アルプス

photo by 二宮孝嗣 南アルプス

日が短くなってくると花が咲く短日植物の朝顔の実験では、葉が短日を感じると成長点まで指令が行き、成長点で蕾を作る様になります。朝顔では、時間の長さは1時間単位で違いがわかると言われています。その伝達物質をフロリーゲン(開花ホルモン)と呼びますが、いまだにその物質は見つかっていません。フロリーゲンは植物ホルモンの一種であることはわかっていて、何十年も世界中で研究されているのですが、見つからない不思議な物質です。おとぎ話ではおじいさんが枯れ木に花を咲かせますが、きっとフロリーゲンを蒔いていたのでしょう。

温度(気温)と自発休眠・他発休眠の関係

日本の植物は、他にも温度(気温)で季節を感じています。紅葉は短日と共に気温が8℃以下になると始まると言われていますが、これも葉で季節を感じて、それが篩管を通って身体中に? 伝達物質が行き渡り、成長を止め、葉を落とします。そして冬の休眠に入ります。ただ、根だけは、少しですが伸び続けています。これは、水分を吸収する根毛が2〜3日で死んでしまうので、最低限の水分を吸収するためです。

 

photo by 二宮孝嗣 阿智村

photo by 二宮孝嗣 阿智村

休眠には自発休眠と言って小春日和の暖かさでも休眠を破らない休眠と、他発休眠と言ってもう冬は過ぎたので暖かい日が来ればいつでも目が覚める休眠とがあります。

休眠中の植物が「冬を越した」と思うのは、何度以下の状態を合計何時間過ごしたか(積算温度)によって自発休眠が終わり、あとは暖かい日が来るのを待っている状態になるからで、そのタイミングは植物によって違います。

時々、桜やツツジなどが初冬に咲く姿(狂い咲き)を見かけるのは、休眠がそれほど深くない種類と思われ、小春日和などで春と勘違いして花を咲かせてしまうためです。

休眠も植物ホルモンがコントロールしているのですが、こちらは大体わかっています。しかし不思議なのは原因と結果は分かりつつあるのですが、その過程はほとんどわかっていません。植物のどこでどれくらいの期間蓄えられ、十分に寒さを過ごせば、休眠打破の指令が作られ、伝わっていくのでしょうか? 単に植物ホルモンの移動だけで、花が咲いたり休眠に入ったり出来るのでしょうか? 何か微弱な電気信号みたいなものが体内にある様な気がしてなりませんが、今後段々解明されていくのでしょう!

植物のかしこい生態

photo by 二宮孝嗣 福寿草

photo by 二宮孝嗣 福寿草

さて、冬至を過ぎて気温も上がって春になると、自発休眠の解けている植物は、自分の発芽適温になると芽を出します。時として遅霜があると、慌てて出した新芽が痛んでしまうので気をつけないといけません。しかし、ゆっくりしていると他の植物が先に伸びて太陽を独り占めされ、日陰生活を送らなくてはなりません。なので、毎年春は植物同士の凌ぎ合いが見られます。

 

photo by 二宮孝嗣 阿智村の園原

photo by 二宮孝嗣 阿智村の園原

春咲きの植物の多くは、今度はいつ花を咲かせるかじっくり開花時期を見定めます。これは虫媒花の場合は、花に来てくれる昆虫たちの活動時期に合わせなくてはいけないので、虫が活発に活動できる気温になるまで待たなくてはいけません。昆虫の少ない真冬に咲く花では枇杷の花がありますが、これは数少ない越冬蝿を相手にしています。また日本では数少ない鳥媒花の椿は、めじろが渡ってくる2月から3月に咲きます。日本では少ないですが、赤い花の多くは赤い色が識別できる鳥に花粉を運んでもらうものが多いです。

この様に、植物は主に日の長さと温度で季節を感じていますが、体全体にその指令が伝達されたり他の花に伝わったりするのは本当に不思議です。

次回は「お正月・植物・縁起・鬼門」の話を書いてみようと思っています。ご興味のある方はまたご一読いただければ幸いです。

 

▼二宮孝嗣さんのインタビュー記事はこちら

 

photo by 二宮孝嗣 阿智村の園原

二宮孝嗣(にのみや・こうじ)

ガーデンデザイナー、樹木医。

静岡大学農学部園芸学科卒、千葉大学園芸学部大学院修了。

1975年からドイツ、イギリス、ベルギー、オランダ、イラク(バグダット)と海外各地で活躍の後、1982年に長野県飯田市にてセイセイナーセリーを開業。宿根草、山野草、盆栽を栽培する傍ら、飯田市立緑ヶ丘中学校外構、平谷村平谷小学校ビオトープガーデン、世界各地で庭園をデザインする活動を続ける。

1995年には世界三大フラワーショーのひとつ、イギリスのチェルシーフラワーショーで日本人初となるゴールドメダルを受賞獲得した。さらに、オーストラリアのメルボルンフラワーショー、ニュージーランドのエラズリーフラワーショーと、世界三大フラワーショーのゴールドメダルをすべて受賞、世界初となる三冠を達成した。ほかにも世界各地のフラワーショーに参加、独自の世界観での庭園デザインで世界の人々を魅了し、数々の受賞歴をもつ。

樹木医七期会会長、一級造園施工管理技師、過去に恵泉女学園、岐阜県立国際園芸アカデミー非常勤講師。各地での講演や植栽・ガーデニングのセミナーなども多数。著書『美しい花言葉・花図鑑-彩と物語を楽しむ』(ナツメ社)はロングセラーとなっている。

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