東京 等々力の花屋『Iria(イリア)』花に恋するフラワースタイリストが創り出すモノとコト。
渡邊ありさ
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東京 等々力駅から歩くことおよそ5分。商店が並ぶ緩やかな坂道を上ったところに、ショップ兼アトリエを構える花屋『Iria(イリア)』。お店を営むフラワースタイリストの田野崎さんを訪ねました。
お店の成り立ち
高校時代のアルバイトがきっかけで花の世界へ
北海道出身の田野崎さん。高校生の頃にアルバイトで花屋に勤めたことがきっかけで花の世界へ。元々手芸や絵を描くことが好きだったこともあり、小さなブーケなどを作ることも楽しく、夢中になります。その後、生け花の教室に通うようになり、就職を機に上京。都内の生花店に約15年間勤めます。
都内の生花店に約15年勤めた後、渡仏。
都内の生花店で、マネージャー業など様々な仕事を積んだ田野崎さん。2015年の秋には渡仏を決意し、退職。フランスで色々なフローリストのレッスンを受けます。そして帰国後、東京を中心にフリーランスのフラワースタイリストとして活動を開始します。
歩き慣れた街の中に『Iria』をオープン
『Iria』をオープンした場所は、元々、田野崎さんの通勤ルートだったそう。
「ここは、ちょうど通勤に使っていた道沿いの物件だったんです。当時、お店をやろうと考えていたわけではないのですが、偶然この場所に空きが出たと聞き、試しに問い合わせてみたんです。そしたら、次に入るお店はまだ決まっていないということで。周りの人の後押しもあり、お店をオープンすることを決めました。フランスから帰国して半年後くらいのことでした。自分でも驚くような展開の速さでした。でも周りの人にも恵まれて、無理はなく進めていくことが出来ました。お店をオープンしてみて気が付いたことなのですが、このあたりは、花に興味のある方や花をお好きな方が多い街だなと思います。」
凹凸のある壁に光や色が反射して、時間帯によっても表情が変わる店内。実は中東の雰囲気が好きだという田野崎さん。内装も、どこかエキゾチックさを感じるイメージで作りあげられました。
Iriaの花
仕入れる花は、一目ぼれから始まる
『Iria』にやってくる色とりどりの草花。仕入れのこだわりについて田野崎さんに伺いました。
「気分ですね(笑)。まず最初に、これ可愛い!と思ったものを基準に、それに合わせて選んでいきます。全部一目ぼれです。事前にイメージを固めて仕入れに挑むわけではないのですが、仕入れたものを店頭に並べてみると‟前の日に見た風景がここにある”ということもよくあります。スクリーンショットじゃないですけど、物事を映像で覚えることが多いので、そうして記憶に残った風景などを無意識にイメージして花を選んでいるところもあるのかもしれません。それと、仕入れる草花の産地や生産者さんも大切なこだわりのひとつですね。」
田野崎さんならではの感性と直感、そして経験によって『Iria』にやってくる花が選ばれているのです。
フランスで見えた日本の花の素晴らしさ
田野崎さんは、フランスで出会ったフローリストたちから、色彩感覚や空間の使い方など、日本には無い発想をたくさん学ぶことが出来たと言います。また一方で、逆に日本の花の素晴らしさにも気づくことが出来たそうです。
「日本人は仕事がやっぱり丁寧だなと改めて感じました。そして生産者の方が皆さん職人気質で、非常に勉強熱心。日本の花のクオリティーは世界一だと思います。一度、外に出て花を学んだことで、日本とフランス両国の素晴らしさを発見することができたのは大きかったです。」と、教えてくれました。
この日『Iria』店頭に並んでいた国産のチューベローズも、予約をして仕入れたというとっておきの逸品。
インスピレーション
多種多様な草花が色とりどりに紡がれる『Iria』の花。ブーケやアレンジメントをつくる際には、シチュエーションや贈る相手の方の雰囲気など、なるべく情報を聞き出して、イメージを固めてから取り掛かります。そして、これまで出会ってきた景色や風景、あるいは雑誌の1ページなど、そういう田野崎さん自身の記憶の引き出しから、インスピレーションを得て花を紡いでいきます。
また、『Iria』の花は、ギフトはもちろん、ウエディングにも人気。SNSなどをきっかけに、『Iria』を知った新郎新婦さんから直接ご相談を受けるようです。最近ではブーケやブートニアのみならず、リストレットなど、花を用いたウエディングアイテムの種類はどんどん広がっているといいます。
「結婚式は一生に一回のイベントですからね。幸せなイベントに携わることが出来るのは嬉しいことです。」と、田野崎さん。
店内にはドライフラワーも。こちらは北海道にある田野崎さんのご実家から届いたラベンダー。
この場所があるからこそ、できること
空間のディスプレイも参考になる店内。おすすめの花や空間をお客様と共感できる瞬間が田野崎さんの喜びです。
また、『Iria』では季節のフラワーレッスンやイベントも開催しています。アロマセラピストの方など様々な分野の方と共にイベントを企画することもあり、とても人気です。
「ここに集ったお客様同士がお友達になって帰られる様子を見ると嬉しいです。それこそが店舗を構えた醍醐味ですね。」と、田野崎さんは言います。植物がつなぐ人との繋がりが、何よりの喜びだそう。
また以前、子供たちのワークショップを実施して以来、子供たちだけでお店を訪れてくれることもあるのだか。『Iria』は、地域の方々に愛される花屋として根付き始めています。
花を引き立てるもの
美しい花器
作家の青木浩二さんに特別にオーダーして作ってもらったという、『Iria』オリジナルの花器。ひとつひとつ微妙に異なる色味、そしてゆるやかな曲線がとても美しい花器は、草花を引き立てます。
カウンター脇には繊細な瓶類も並びます。
さいごに
今後の『Iria』について訊ねると「必ずこうなっていたいというイメージはありません。この先も花の世界にいることは変わりませんが、お店のあり方、自分自身についてもその時々のひらめきや出逢いを大切に、いい意味で流れに任せていきたいと思っています。その方が楽しいし、決めてしまってもなかなか計画通りにはいかないんですよね。(笑)」といたずらに微笑みながらお話してくれました。まさに、好奇心旺盛で、自身の心に素直に生きる田野崎さんらしい答えです。これからの『Iria』、そして田野崎さんから、目が離せません。
『Iria』の営業日や営業時間はホームページにて告知されていますので、事前にチェックしてから訪れてみてください。田野崎さんが素敵な笑顔と共に、とっておきの花を準備して皆さんを温かく迎え入れてくれます。
『Iria』のショップ情報はこちら!
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