一度は訪れたい、野川沿いに佇む『北中植物商店』
渡邊ありさ
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三鷹市大沢の野川沿いに佇む『北中植物商店』は、素敵なご夫婦おふたりで営まれるお店。代表取締役である北中祐介さん、そして北中さんの奥様であり取締役の小野木彩香さんの、おふたりを訪ねました。
お店の成り立ち
すべては、自然豊かな三鷹の地が引き合わせた縁
北中さんは造園の仕事を、小野木さんは花の仕事を、それぞれに営んでいたおふたり。そんなふたりを引き合わせたのは、この自然豊かな三鷹の土地だったと言います。なんと、小野木さんの自宅のお隣に、後から北中さんが引っ越しをしてきたことがおふたりの出逢いのきっかけ。
また、『北中植物商店』の店舗は、元は民家を改装した蕎麦屋だったそう。おふたり暮らすご自宅のすぐ近くで営業されていたこの蕎麦屋が閉店し、空き家になったことをきっかけに、『北中植物商店』をスタートします。まさにこの場所との出会いも三鷹の地によって引き合わされた縁。古き良き姿を残した店内は、どこか懐かしいような、和やかな雰囲気が漂います。
『北中植物商店』の花
仕入れる花のこだわり
フローリストとして書籍を出版されるなど、様々にご活躍される小野木さんが『北中植物商店』の花のしごとを担っています。小野木さんが仕入れる花について尋ねると「草花が好きなのでふわっとしたお花を選びますね。また、切り花は季節を少し先どりして出回るので、そういったものを取り入れて、もうすぐ秋なのでこんなお花はどうですかなどと、お客様とおしゃべりを楽しみながら伝えていけたらと思っています。」と、教えてくれました。
そんな小野木さんが紡ぐブーケやアレンジメントは、まるで野の花を摘んできたように多くの種類の花を少しずつ加えた贅沢なもの。ふんだんに色を用い、可憐さの中に力強さが感じられるその仕上りに、多くの方が魅了されています。
プリフィクススタイルのレッスン
『北中植物商店』では、定期的に花のレッスンも開催しています。季節の花を参加者自身でセレクトしてアレンジメントを作るという、プリフィクススタイルを取り入れたレッスンです。
そうしたスタイルを取り入れた理由を伺うと「花は、作る時間も楽しいですが、選ぶ時間も楽しんでほしいなと思っています。もちろんアドバイスもさせていただきますが、慣れてくると皆さんどんどん花を選んでくれるようになります。私自身も、その時々の気分で、いつもとは違う色を選んでみたくなることもありますし、花選びは難しいですが、本当に面白いんです。」と、教えてくれました。
自然に囲まれた環境の中で、ひとりひとりの個性や感性を大切にしつつ、花の醍醐味を伝えてくれる小野木さんのレッスンは、とても好評です。
店内にはドライフラワーも。デザインやサイズも様々なリースがとても可愛らしく吊るされていました。
『北中植物商店』がつくる庭
自然の景色がお手本
『北中植物商店』では、東京近郊を中心に、雑木を使った自然風の庭づくりや、庭の手入れを行っており、造園家の北中さんが担っております。
庭をつくりあげる際のインスピレーションについて伺うと「自然の景色がお手本というのはいつも頭の中にあります。そのため、雑木と呼ばれる野山の木を使うことが多いですね。現在暮らしている環境も自然に囲まれていますし、また、山に行くことが好きなのでそういった自然の景色をイメージして、そこから引き算をし、生活環境に合ったものを仕上げていきます。」と、教えてくれました。
『北中植物商店』の素敵な店先の庭で北中さんにお話をうかがいました。
そして、実際に北中さんが手掛けられたお庭を案内していただきました。
長く伸びたアプローチの両脇を、緑が青々と彩ります。郵便受けなども、基本的には既製品を使わず、北中さん自身がお庭に合わせてデザイン、製作を行います。そうした丁寧な手仕事がお客様から厚い信頼を寄せられる秘訣です。
手掛けた庭は、その後定期的にメンテナンスも行っています。こちらの庭は約2年前に施工したそうですが、当時はまだ赤ん坊だったという施主さんの娘さんも、すっかり大きくなり、撮影当日も元気に北中さんを迎えていました。そのようにお客様との深く長いお付き合いが出来るというご縁も、庭の仕事の魅力だと北中さんは言います。
『北中植物商店』こだわりのモノ
「それぞれ職人なので、やはりモノづくりにはこだわりたいという気持ちがあります。店内には、植物以外にもいくつかモノをセレクトしておいていますが、それも全て職人さんがつくっているものです。」と、北中さんがお話してくださったように、店内にはこだわりのモノが数多く並びます。こちらは絵柄の美しい瀬戸焼の鉢。店内外に並ぶ鉢植えのひとつひとつも、こだわりの鉢にあしらわれているので、注目です。
こちらは、窯元さんに直接オーダーをしているという『北中植物商店』オリジナル受け鉢。裏側には「北」の刻印も。
受け皿の上に陳列されるのは、小野木さんによる染物。向かって左側がヨモギ、右側が藍で染められたものです。小野木さんのお人柄を表すような優しい色合いが魅力的。
さいごに
最後に、今後の『北中植物商店』について尋ねました。
「ふたりとも好きなものが似ているんです。‟良いもの”を柔軟に取り入れていきたいと思っています。すごく売れるものだとしても、自分たちのこだわりのラインから脱するものであれば取り入れません。そのラインを言葉にするのは難しいのですが。そうした自分たち想いや理想を変えずに、続けていけたら。あとは、この建物がとても古いので、残っていれば。(笑)」と北中さんが言うと「本当にね、古いもんね。(笑)」と小野木さんが隣で微笑んでいました。
三鷹の自然に魅了された北中さんと小野木さん。そこから始まった『北中植物商店』の物語。花や庭づくりを通した縁を大切に、今後もその物語を末永く紡ぎ続けてくれることでしょう。
是非、訪れてみてください。
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