生命とは? 植物と動物との違い|二宮孝嗣の「自然・植物よもやま話」②
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世界のフラワーショーで数々の受賞歴をもち、庭・植物のスペシャリストであるガーデンデザイナー・二宮孝嗣さんによるコラム連載「自然・植物よもやま話」をお届けします。楽しく真面目に植物や地球環境について考えてみませんか?
生命とは?植物と動物との違い
前回の自然・植物よもやま話「宇宙の誕生と植物の辿ってきた道」はいかがでしたでしょうか? わかりにくいところが多々あったと思いますので、もう少し付け加えたいと思います。
初めは生命の誕生についてですが、生命とは何か? 生きていることと生きてはいないものの違いは何か? ということと、その後で、植物と動物との違いは何か? ということを僕なりにまとめてみます。
生命って何だろう
まず生命とは何か? という事ですが、以下のようにまとめてみました。前回も書きましたが、どうやってどこで生命が出現したかはいまだにわかっていません。僕はタンパク質同士の分子間エネルギーが何かの刺激(電気ショック等)によって動き始めたのではないかと思っています。
生命の条件を以下に書いてみました。あくまで僕の私的見解ですので、疑いながら読んでいただきたいです。
1.外界と隔てる膜があること
周りに自分が溶け出さないことは、最低限自分を維持していくことの絶対条件です。
2.代謝を行う事
自分を維持していくために、なんらかのエネルギーを利用していくことです。これは他のものを分解あるいは消費していく過程で発生してくるエネルギーを利用していくこと、または外界のエネルギーを利用していくことです。
3.自己複製ができること
自分のコピーを作ることで、自分の複製を残し、増殖することです。
4. 変化(進化)すること
これは僕が考えたことですので、異論のある方がいらっしゃるかもしれませんが、自分の複製を作っていく過程の中で、どこかの情報伝達の間違いが起き、親と違った生命が生まれ、そのうちの多くが死んでしまう中、たまたま生き残るものがでることを「進化」と、今は呼んでいると思います。
如何でしょうか? さらなる興味が出てきましたら、ご自分でより深く調べてみてくださいね。
植物と動物の違いは何だろう
次に、植物と動物の違いについて書いてみます。
1.細胞壁と細胞膜があるのが植物、細胞膜だけなのが動物
植物は細胞壁(主にセルロース)を細胞膜の外側に持っているので、自分の形状を維持でき、動物の骨や外骨格のような形状維持組織は必要ではありません。
2.植物は、光合成を行うことにより太陽エネルギーを利用できる。
ほぼすべての植物が、太陽エネルギーを自分が使えるように変えることができます(光合成)。勿論、これは葉緑体を持つ動物らしき物、葉緑素を持たない植物もいるので例外はあります。
3.植物はその場にとどまるが、動物は自力で移動することができる。
これはあくまでも人間の時間軸内での話で、時間をもっとゆっくり動かせば、植物は地球上をかなり自由に移動してきたし、今も気候変動や生育環境の変化に伴って移動していると言えます。
4.植物は、生命活動でできた物質を体外に排出できないが、動物は不要物を体外に排出できる。
植物は、生命活動でできた物質を体外に排出できないため、多くは液胞という細胞内のゴミ袋に溜め込むので常に新しい細胞が必要になるが、動物は不要物を体外に排出できるので、同じ細胞を長く使うことが出来る(老化)。
動物、植物と、もう一つの生命グループ
生命と無生物の違い、植物と動物との違い、少しは分かっていただけたでしょうか?
前回書きましたが、動物と植物はかつては一緒だったのですが、地球上には動物、植物の他にもう一つ変わった生命グループがいます。
それは、菌類と呼ばれるカビやキノコなどの仲間です。動物か植物かというと植物なのですが、葉緑体は持っていません。植物につくうどんこ病やすす病などは、カビの仲間が起こす病気です。興味深いことにこのカビの仲間が起こす病気には、植物や動物、そのほかの地球上にある物質(毒素、薬品)などでは、なかなか根絶することはできません。ですから僕は菌類は全く違った生命グループなのではないかと時々考えています。
今回はこれくらいにして、次回は植物の進化(分化)について書いていこうと思っております。
▼二宮孝嗣さんのインタビュー記事はこちら
二宮孝嗣(にのみや・こうじ)
ガーデンデザイナー、樹木医。
静岡大学農学部園芸学科卒、千葉大学園芸学部大学院修了。
1975年からドイツ、イギリス、ベルギー、オランダ、イラク(バグダット)と海外各地で活躍の後、1982年に長野県飯田市にてセイセイナーセリーを開業。宿根草、山野草、盆栽を栽培する傍ら、飯田市立緑ヶ丘中学校外構、平谷村平谷小学校ビオトープガーデン、世界各地で庭園をデザインする活動を続ける。
1995年には世界三大フラワーショーのひとつ、イギリスのチェルシーフラワーショーで日本人初となるゴールドメダルを受賞獲得した。さらに、オーストラリアのメルボルンフラワーショー、ニュージーランドのエラズリーフラワーショーと、世界三大フラワーショーのゴールドメダルをすべて受賞、世界初となる三冠を達成した。ほかにも世界各地のフラワーショーに参加、独自の世界観での庭園デザインで世界の人々を魅了し、数々の受賞歴をもつ。
樹木医七期会会長、一級造園施工管理技師、過去に恵泉女学園、岐阜県立国際園芸アカデミー非常勤講師。各地での講演や植栽・ガーデニングのセミナーなども多数。著書『美しい花言葉・花図鑑-彩と物語を楽しむ』(ナツメ社)はロングセラーとなっている。