あの人の庭⑤|雑草だらけの畑が、宿根草の揺れる庭になるまで
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暮らしがにじむ庭のかたちを訪ねる「あの人の庭」。
今回は、宿根草を中心にゆっくりと変化していく、藤井さんの庭を訪ねました。もともとは畑で雑草に覆われていた場所が、今では人が訪ねるスポットへと成長しています。
「自分の庭の教科書は自分の経験しかない」ーー。そんな言葉が印象的な藤井さんの庭とは?
仕方なく始めた庭づくり
藤井さんが庭に手を入れ始めたのは、ポジティブな理由からではありません。最初のきっかけはずばり「雑草対策」。2002年に建てた自宅は、もともと畑だった立地。スペースは広いものの、放っておくとすぐに雑草がはびこる状況だったそう。

土がむき出しの畑だったとは思えない今の庭
草取りがとても追いつかず、むき出しの土地に花の種をまいたり、草花の苗を植えたりして、雑草が生える場所を少しでも減らそうと始めたのが、庭づくりの第一歩。
ーー今の素敵なお庭からは、ここが雑草だらけの荒地だったとは想像できません。
最初は木がぽつんと1本立っているだけで、本当に何もない更地でした。放っておくとすぐに雑草だらけになりますし、雨が降ればぬかるんで、まともに歩くこともできない状態。
雑草を減らすために仕方なくはじめた庭づくりでしたが、どうせやるなら当時流行っていたイングリッシュガーデンのようにしたい! と思ったのが、ガーデニングにのめり込むきっかけでした。
はじまりは一本の小道をつくるところから

ーー庭づくりはどのように進めたのですか?
最初に着手したのは、庭の奥まで続くレンガの小道です。泥だらけの庭を歩けるようにしなければと、主人と一緒にレンガとモルタルでつくりました。

最初に作った庭奥まで続くレンガの小道
当初は海外の庭を真似てシンメトリーなデザインにしようと思い、小道の両端に4つの植栽エリアをつくりました。
その後も庭を回遊しながら植物を楽しめるように、レンガの小道に沿って植栽エリアを増やしていき、現在の形になっています。

小道を散策しながらエリアごとの植栽を楽しむことができる
これもあれもDIY? 夫婦二人三脚でつくる庭アイテム
ーーレンガの小道も敷石も、プロ並みの出来栄えです。
あまりコストをかけたくなかったので、自分たちで作れるものは作ろうと。といっても、私は紙にイメージを書いて主人にお願いするだけなのですが笑。

白いパーゴラや地面の敷石もすべてご主人がDIY!
ーー私も庭でレンガ敷きにチャレンジしましたが、でこぼこになってしまって……。
うちもそうですよ。場所によっては歩くとへこむ場所もありますし。ただ主人は水平器などを使って一応地面を平らにしてからレンガなどを敷いていたようです。
逆に隣家との境界フェンスや大型の木造小屋など、しっかりと作らなければ迷惑をかけてしまうような場所は、プロの方にお願いしました。

庭にアクセントをもたらすレンガのコーナーも自作

室外機を隠すカバー兼棚(右)は何度か作り直して現在3代目だそう
我が家に合う植物探しはパズルのよう
ーー宿根草を中心にとてもナチュラルな植栽をされていますね。
庭づくりをはじめた当初は、イングリッシュガーデンに憧れて海外雑誌に載っている植物を探していたのですが、入手が困難なうえ、日本の気候にも合わないものが多く……。自分の庭でそのまま真似をするのは難しいと気づきました。
ただ、季節ごとに変化していく宿根草中心の庭には強く魅了されたので、SNSなどを参考に日本の気候に合った品種をあれこれと探しては、トライ&エラーを繰り返してきましたね。
ーー植栽の組み合わせがとても自然で癒されます。
ありがとうございます。花期や花色・花形など、さまざまな宿根草の組み合わせを考えるのは、パズルのようで楽しいですね。

取材日に美しい姿を見せてくれたサルビア・カラドンナ
土の大切さに気づいた瞬間

ーー植物を育てる際に工夫していることはありますか?
最初の4~5年は、丈夫で育てやすい宿根草を植えても、我が家ではうまく育たないことが多くて。苗を買っては枯らしを繰り返していました。
ある時「そもそも土が悪いのかも?」と思いました。改めて庭の土質を観察してみると、粘土質で水はけが悪い土だったんですね。さらに、植栽場所はレンガ小道より低くなっていて、雨水も溜まりやすい。常に湿りがちな状態だったんです。
水はけを良くするため、試しに植栽場所の土を盛り上げて高さを出してみました。すると雨水が下へ流れやすくなり、水はけが改善したみたいで。植物が枯れる率が明らかに減ったんです。「土でこんなに変わるのか!」と驚きましたね。

レンガを積んで土を改善した花壇は、植物たちの特等席。少し弱いかな?と思う品種はここで様子を見る
さらに、レンガとモルタルで高さを出した花壇に、バークたい肥などを足した土を入れてみました。するとさらに水はけが良くなり、それほど世話をしなくても、植物が自分の力ですくすく育ってくれるように変わっていったんです。
庭づくりの教科書は「自分の経験」
ーー少しの土の改善が、劇的に庭を変えたのですね。ちなみに植物を育てるうえで何を参考にしていますか?
庭づくりを始めた当初は実用書などを参考にしていましたが、最近は見ないですね。ガーデニングって地域差がありますし、もっといえば各家庭ごとに環境が異なりますよね。自分の庭は自分にしかわからない。自分の経験が一番の教科書になると思っています。

我が家の庭の環境に合う品種を見つけること。その植物がより良く育つ環境をいろいろと試してみること。その途中には枯らしてしまう植物も多いけれど、その積み重ねしかないのかな、と。
一人で始めたオープンガーデンで生まれたつながり

ーー現在は春と秋にオープンガーデンで庭も公開されています。
当時はとにかくお花のことも庭のこともわからなかったので、いろいろなことが聞ける花友達が欲しくて。オープンガーデンを開いたら、花好きの方たちと出会えるんじゃないかと思って始めました。
ーー地域のオープンガーデンに参加するのではなく、個人で始めたそうですね。
そうなんです。昔はSNSも今ほど浸透していなかったので、地域新聞の一角にお知らせを載せてもらったり、よく行く園芸店などにチラシを置かせてもらったりしていました。
一人で作業しているだけでは知り合えなかった花友さんと親しくなれたり、植物や庭づくりの情報交換ができたり、同じ趣味の方たちとお話しできる喜びは何物にも代えがたい時間になりました。誰かに見てもらうことで目標ができ、日々の庭仕事も苦になりません。

周囲に住宅が増えてからは規模を広げず、マイペースにオープンガーデンを開催。インスタグラムで告知している
庭がくれる、半年先の未来

ーー庭づくりを始めて20年以上が経ちます。現在の藤井さんにとって庭とは?
雑草対策からはじめた庭づくりでしたが、いまでは気持ちを健全に保つためのビタミンみたいなものでしょうか。気づけば朝から昼過ぎまで庭にいて、夢中で作業してしまうこともしばしば。
庭に来てくださる方には「つくりすぎないナチュラルな庭」「肩ひじ張らず自然体で癒される」などと言っていただくことが多いのですが、最高にうれしい瞬間ですね。私自身、意図せず偶然つくりだされた景色や植物同士の重なりにハッとすることも多いです。
あと、常に半年先の植栽を考えるガーデニングは、脳の活性にもきっといいはず笑。
心身を健やかにしてくれる場所。私にとって庭は、そんな存在になっています。
藤井由紀さん プロフィール

愛知県の一軒家で、宿根草を中心に可能な範囲で無灌水・無施肥での庭づくりを実践中。ご主人と一緒にDIYで作り上げたガーデンアイテムや、各所に配置されたアンティークも庭の見どころ。春と秋にオープンガーデンで庭を公開中。








































