山梨県でターシャに会える美術館「ターシャ・テューダー ミニミュージアム」
LOVEGREEN編集部
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世界的に有名なガーデナー、人形・絵本作家でありスローライフを実践していたターシャ・テューダーは、2015年に生誕100年を迎えターシャを記念した展覧会も開催され、多くの方がターシャの世界観にふれました。
その最後の集大成が
映画「ターシャ・テューダー 静かな水の物語」
~足りないものを嘆くのではなく、全てを受け止め感謝する、静かな水のようにありたい~
ターシャを季節の流れとともにフィルムに収めた映画が現在公開中(地域によっては公開予定)です。
▼ターシャの映画のことならコチラ
ターシャ・テューダー ミニミュージアム
ターシャの本の翻訳家「食野雅子さん」と、ブックデザイナーの「出原速夫さん」が今から4年前に始めた山梨県北杜市にある「ターシャ・テューダー ミニミュージアム」。
全国からターシャのファンが訪れる「ターシャ・テューダー ミニミュージアム」は、前向きな生き方で今も多くの人に勇気と感動を与えているアメリカの絵本作家ターシャ・テューダーの常設の美術館です。
▼左:食野雅子さん 右:出原速夫さん
画像提供:ターシャ・テューダー ミニミュージアム
ターシャ・テューダー ミニミュージアムには、ターシャが実際にお料理の際に使っていたバター型や計量カップ、長男セスが作ってくれた実際に座ることができるターシャ愛用の椅子のレプリカ、ターシャの家の家具のミニチュアが展示され、ターシャのぬくもりを感じることができます。
また、ガーデナー以外にも絵本作家や人形作家としても有名なターシャのスケッチ原画や自筆の手紙、ターシャ手作りのドレス、人形、ミニバスケットの他にも、若い頃のターシャの写真を見ながら、より深くターシャを知ることができます。
画像提供:ターシャ・テューダー ミニミュージアム
今回、山梨県にある「ターシャ・テューダー ミニミュージアム」の設立者のお一人であり、ターシャ自身を良く知る、ターシャの本の翻訳家の食野さんにお話を伺いました。
翻訳家 食野 雅子さん
プロフィール
■名前: 食野 雅子 (めしの まさこ)
■年齢: 73歳
■職業: 翻訳業
■出身: 東京
■居住地: 東京
画像提供:ターシャ・テューダー ミニミュージアム
自己紹介をお願いします。
国際基督教大学卒業後、同大広報部、サイマル出版会を経てフリーの翻訳家になりました。児童書、
画像提供:ターシャ・テューダー ミニミュージアム
「ターシャ・テューダー ミニミュージアム」を山梨県でオープンしたきっかけは何でしょうか?
ブックデザイナーの出原速夫と私は、『ターシャ・テューダー手作りの世界 暖炉の火のそばで』 や絵本『コーギビルの村まつり』『喜びの泉』など、アメリカで出版されていたターシャの本の翻訳・出版を通してターシャと知り合いました。お訪ねするようになると、会うたびに、汲めども尽きぬ泉のようなターシャの魅力に圧倒されました。それで、ターシャから話を聞きながら次々本を出してきたのですが、その間に集まった資料が何箱にもなっていました。
また、本にできていない事柄もたくさんあり、それらを私達だけの物にしておくのはもったいないと考えるようになったのです。読者から「常設の美術館を」という要望をたくさんいただいていたこともあり、なんとか……と考えていた矢先、八ヶ岳にある今の建物を貸していただけることになり、ターシャの家族も喜んでくれたので、4年前に思い切って始めました。
画像提供:ターシャ・テューダー ミニミュージアム
実際にミュージアムを運営する中で、一番大切にされていることは何ですか?
一口に言えば、ターシャのすべてを知っていただきたいことですね。
ターシャは絵本作家・画家、ガーデナーであるだけでなく、アンティークの収集家、人形作家、料理名人、すばらしい子育ての経験者などなど、いろいろな顔を持っていました。
また、私達と同じように、ターシャにも少女時代、娘時代があり、子供の頃から手仕事が好きで、人形の服を作ったり料理を楽しんだりしていました。アンティークの道具も、母の手伝いをするうちに使い方を覚えました。
離婚したものの、夫と共に農場を営みながら子育てを楽しんだ20年という年月もあります。子供達が自立し、ひとりになってみたら、ニューハンプシャーの農場も家も広すぎるし、家が公道に面しているのでコーギの交通事故が心配、ということから、すでにバーモントに住んでいた息子のセスに、ひとりでゆったり暮らせる土地を探してもらって見つけたのが今の場所です。
バーモントでの暮らしは、ターシャにとってはそれまでの生活の延長でありながら、子育てから解放され、それまでできなかったことに思い切り打ち込んだ幸せなリタイアライフだったのです。
そう思って見ると、ターシャのあの暮らしに納得が行きませんか?
ろうそくで暮らしていたと聞くと、頑なに古い暮らしを守っていた人のように思われますが、どうしてどうして、ターシャは柔軟で合理的です。ニューハンプシャーでもバーモントでも、最初は電気も水道もなかったので、そういう暮らしをしていましたが、そんなものだと思っていたので苦にならなかったそうです。
電気が通れば洗濯機や冷蔵庫は取り入れ、ニューハンプシャーでは照明も電灯でした。でもろうそくの光は好きだったので、行事や遊びではろうそくを効果的に使い、バーモントでは、ろうそくの光に慣れてしまったので、電気が通った後も、電気スタンドをいくつか使っただけで、部屋の照明にはろうそくを使い続けました。
車も80歳まで運転していました。
ミュージアムでは、そうしたターシャの生涯や、ターシャのいろいろな側面、柔軟な生き方、周囲の人を楽しませたターシャの人柄など、ターシャのすべてが伝わるような展示を心がけています。
画像提供:ターシャ・テューダー ミニミュージアム
訪れる方に一番おすすめしたいターシャ・テューダー ミニミュージアムの魅力をお教えください。
ほかでは見られない、20代の子育て中のターシャの写真や、細かい所まで配慮されたターシャ手作りのドレスや人形、窓の桟の数まで正確に再現されたコーギコテージ全景の模型、200点近いターシャの絵のグリーティングカードなどが見られることです。
それと、原書やターシャが使った生活の道具などが手に取って見られること。ターシャが気に入って座っていた「セトル」と呼ばれるアンティークの木の椅子も、セスが同じ物を作ってくれて、皆さんに座っていただけるように置いてあります。
画像提供:ターシャ・テューダー ミニミュージアム
翻訳者でもあり、実際にターシャさんと交流のあった食野さんですが、ターシャさんと初めての出会いはいつ頃で、その際に印象に残っているエピソードはございますか?
初めて訪ねたのは2001年です。ターシャの本を訳せば訳すほど好きになって、ある時手紙を書きました。その頃、ターシャは山奥でひっそり暮らしていて誰にも会わないという噂があったので、特別な意味はなく、ただ普通に「いつかお訪ねできたらと思っています」という文でしめくくったところ、セスから「母がプリーズ・カムと言っている」とメールが届いたのです。それで、一緒に本を作ってきた出原と編集者を誘って訪ねました。お会いしたターシャさんは、気さくで、心配りがあって、とても楽しくおしゃべりし、それから親交が始まりました。
画像提供:ターシャ・テューダー ミニミュージアム
食野さんがターシャさんに影響を受けて好きになった植物や花はございますか?
そうですねえ……、あ、レディスマントル! 黄緑色の花で地味なのですが、葉の表面が細かい毛に覆われていて、葉にたまった水が球になるのです。ターシャは「おもしろいでしょう?」と、わざわざ水をかけて見せてくれて、「これを鳥が飲みにくるのよ」と、楽しそうに話してくれました。よく増えるので、ターシャの庭にはあちこちに群生しています。
ターシャさんの暮らし方で影響を受けたことは何でしょうか?
与えられた環境でベストを尽くし、だめなら「そんなもの」と思ってやり過ごす。どうせやるなら楽しんでやる。私は、昔はくよくよ後悔するたちだったのですが、ターシャの言葉を訳すうちに、そういう生き方・考え方が身につきました。ターシャはまず誉め、亡くなる直前まで周囲の人への感謝を忘れませんでした。ほんとうにすごい人です。
ターシャさんが残した数多くの言葉は、食野さんを通して私たちに伝えられたものですが、その食野さんが一番好きなターシャさんの言葉は何でしょうか?
「ターシャのように生きたかった、できたら人生をやり直したい」という読者にこたえて語ったターシャの言葉ですが、
「人生をやり直すことはだれにもできません。私も過ちや失敗をたくさん経験しましたが、人生をやり直したいとは思いません。なぜなら、やり直した人生が今よりよくなる保証はどこにもないのですもの」
それはそうだ、と思いませんか?そう思ったら、ふっと楽になり、前を向いて進めます。ターシャは「昔の過ちや失敗を思い出して心が沈んだ時は、いそいでスイレンの花を思い浮かべるの」と言っていました。すると、思わず顔に笑みが浮かぶと。私は、そういう時、ターシャのことを思い出します。そうすると気持ちが楽になり、思わず口角が上がります。
最後にターシャさんと交わしたお話や、ターシャさんのご様子はいかがでしたか?
最後にお会いしたのは、亡くなる1年前でしたから、まだ、いつものようにユーモアがあり、やさしく、気配りが細やかで、でも、前年より弱々しく感じられたので、心配でした。亡くなられた後、コーギコテージを訪ねると、いつも開いていたドアは閉まり、庭にもターシャの気配はなく、涙が止まりませんでした。
画像提供:ターシャ・テューダー ミニミュージアム
ターシャさんのお庭に今も変わらぬ憧れの想いを抱いているLOVEGREEN読者の方に一言お願いします。
私は庭づくりはしろうとなので、しろうとの目で観察して感じることですが、ターシャの庭の美しさには、ターシャ流の庭づくりにヒントがあるような気がします。
たとえば、植物をかたまりで植えて、それをくりかえしてリズムを出す。予算がなかったら、あり金を1種類の植物に投じて大量に咲かせる。「アメリカのコテージガーデンの最高の手本」と評されたターシャの庭づくりは、もちろん、祖母や母と庭づくりをしてきた何十年という経験のたまものですが、その中にもターシャ流の工夫があることを知ると、取り入れてみようかな、と思われるヒントが見つかるかもしれません。
画像提供:ターシャ・テューダー ミニミュージアム
食野さんありがとうございました!
「ターシャの庭」として多くのファンに愛されたアメリカの絵本作家・さし絵画家ターシャ・テューダー(1915 – 2008)は、2008年に92歳でこの世を去りましたが、ターシャの生き方やメッセージは、今も多くの人に影響を与えています。
今回食野さんにお話を伺うことで、まだ知らなかったターシャの素顔に出会い、一段と自らの生活にターシャの生き方が入ってきたように思います。
皆さんもターシャがもっと身近に感じる「ターシャ・テューダー ミニミュージアム」に出かけてみてはいかがですか?
【2017年度ターシャ・テューダー ミニミュージアム 開館スケジュール】
開館期間 | 4月21日(金)~11月6日(月) |
休館日 | 火・水・木曜日 ★祭日・8月は無休 |
開館時間 | 10:00~17:00 |
入館料 | 大人 700円 小学生~中学生400円 団体(10名以上)大人650円、小学生~中学生350円 |
〒409-1501
山梨県北杜市大泉町西井出8240―4579
TEL・FAX0551-45-8788
アクセス/小海線「甲斐大泉駅」から徒歩7分 中央自動車道「長坂インター」から車で20分
▼詳しくはコチラ
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