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ムーミン×神戸松蔭大学|共学化「自分が自分らしく生きること」を受け入れ合う大学

2025年度から共学化した神戸松蔭大学では、「ムーミン」を教育に取り入れるという新しい取り組みを行っています。「ムーミン」は教育世界一ともいわれる北欧・フィンランド発祥の作品で、哲学的な作風の物語としても有名ですが、「自分が自分らしく生きること」や「他者が自分らしく生きることへの寛容さ」など、「多様性とどう向き合うか」を考えるうえで大切なことが多く描かれているため、共学化に踏み切った神戸松蔭大学の象徴としてふさわしいと考えたそうです。

「ムーミン」を教育に取り入れることになった神戸松蔭大学の方針や経緯、具体的に「ムーミン」に関わる授業がどのように行われているかについて、神戸松蔭大学の石田原 弘先生に詳しくお話をお聞きしました。

目次

なぜ「ムーミン」を教育に取り入れることになったのでしょう?

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写真:神戸松蔭大学リーフレットより

神戸松蔭大学の教育理念との親和性

2017年から大学が掲げているモットー“Open Yourself, Open Your Future“ には、学生たちが自分自身の殻を破り、成長して未来を切り拓く力を獲得して欲しいとう願いが込められています。

また、ミッションスクールとして「キリスト教の愛の精神を基本として教育を通じて他者への思いやりの心をもって社会に貢献する人材を育成する」という目標も継承しています。

「ともに拓く、新しい社会」というメッセージを掲げ、一人ひとりの力に合わせて新しい社会の在り方を作り上げていく大学を目指しています。

「ムーミン」の物語が描く「多様性」「寛容性」から学ぶ

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写真:神戸松蔭大学リーフレットより

神戸松蔭大学は、もともとは「神戸松蔭女子学院大学」という女子大でしたが、2025年4月から共学化しました。「ムーミン」の物語には、個性豊かな登場人物たちが互いの違いを受け入れる「多様性」「寛容性」が多く描かれていて、大学のモットーや目標とも親和性があり、共学化するにあたって「ムーミン」の哲学から学ぶことがたくさんあります。

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ムーミンを用いた具体的な授業について教えてください

小説を読んでインテリアやデザイン、色彩、ライフスタイルの研究まで行います

ファッション・ハウジングデザイン学科の3回生のゼミでは、テーマとなるムーミンの小説を決めて、それぞれのゼミの特色に合った研究をしています。昨年は「ムーミン谷の彗星」、今年はムーミン小説の第1作である「小さなトロールと大きな洪水」をテーマに進めています。

インテリア関係をテーマにしているゼミであれば、「ムーミンの小説のイメージでホテルの客室を作る」とか、カラーや色彩を勉強しているゼミでは、小説を読んで「物語全体の色を決めていく」であったり、さらにはライフスタイルの提案につながる研究まで行っています。

 

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石田原先生『私の授業では、ムーミンのキャラクターを使ってテキスタイルデザインを作る研究をしています。写真は「4Dbox Plans」というテキスタイルシミュレーションソフトを使ったムーミンのテキスタイルデザインの授業の様子です。』

 

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石田原先生『オープンキャンパスで配るノベルティのクリアーファイルなども学生が作っています。まだ試行錯誤の段階ではありますが、これからもっと面白いことをしていきたいです。』

「読めば読むほど」「使えば使うほど」愛しくなるムーミン

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写真:神戸松蔭大学リーフレットより

大学では毎年、ムーミンのライセンサーである株式会社ライツ・アンド・ブランズの方にゲストスピーカーとして登壇してもらい、学生たちに貴重なお話をしていただいています。

石田原先生『その際に「ムーミンを知ってる?」と聞かれると、学生はみんな知ってはいるのですが「お母さんが好きだから知っている」という学生がほとんどで、学生にとって「ムーミン」は新鮮なキャラクターです。実際に小説を読んでみてその奥深さを知ったり、デザインや研究にキャラクターを使えば使うほど愛着がわいてきている様子です。』

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神戸松蔭大学の地域連携活動とは

「ひと」と「まち」を繋ぐ、地域に根差したプロジェクト

神戸松蔭大学では2024年に「地域連携研究センター」を開設し、学生たちは地域の皆さんと地域に根差した多彩なプロジェクトに取り組んでいます。

ムーミン×Calbee×神戸松蔭大学の「じゃがいも収穫体験!」を実施

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※このイベントの受付は終了しています。

例えば、カルビーポテトが開発したオリジナル品種『ポロシリ』を神戸松蔭の学生が大学の敷地内で育てて、そのじゃがいもを地域の方々と共に収穫し、さらにはワークショップを通じてじゃがいもやSDGsについて学ぶ取り組みがあります。

このプロジェクトは、カルビー株式会社が環境配慮の取り組みや自然を楽しむ企画として展開する「Jagabee Happee3プロジェクト」の1つとして開催されます。

松蔭ビオラプロジェクトでは「ムーミン」をモチーフにしたことも

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写真:神戸松蔭花田ゼミInstagramより

人間科学科では、学生と花卉生産者がコラボレーションして、ビオラで空間をカラーコーディネートする取り組みを行っています。2024年度は「ムーミン」をモチーフにしたビオラのコーディネートも考えました。

リユースやリサイクルにつながる服の交換会「マツクロ(松蔭closet)」

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写真:神戸松蔭花田ゼミInstagramより

神戸松蔭大学の学生、教職員、卒業生、地域の皆さまによるボーダレス企画の「マツクロ(松蔭closet)」という服の交換会も行っています。

石田原先生『将来的には、マツクロのシステムを流用して、学生の制服の交換会もできたらいいなと思っています。制服は3年間使おうとしてぶかぶかのサイズを買う方が多いですが、ピッタリのサイズを買って成長したら大きなものと交換することができたらいいですよね。』

性別にとらわれない「神戸モデル標準服」の導入

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石田原先生『2023年度から、神戸市内の市立中学校の制服には、「神戸タータン」をデザインに取り入れた「神戸モデル標準服」が導入され、現在33校で着用されています。パンツ、スカート、リボン、ネクタイなど、男女とも好きな服を選ぶことができるんですよ。共通デザインにすることで性別にとらわれることもなく、大量生産して価格を安く抑えたり、リユースもしやすくなる利点もあります。』

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「神戸タータン」と「神戸松蔭タータン」は世界に一つだけのデザイン

タータンとは何なのでしょう?

石田原先生『タータンとは、主にスコットランドで伝統的に用いられてきた格子柄の織物、またはその柄のことで、柄の一つひとつが、発祥の地スコットランドにて登録・管理されています。

「神戸タータン」と「神戸松蔭タータン」は、スコットランドの政府機関「The Scottish Register of Tartans(スコットランドタータン登記所)」において正式なタータンとして登録され、生地が永久保存されているんですよ。』

「神戸タータン」が生まれた経緯

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写真:神戸タータン協議会ホームページより

石田原先生『実は、私は神戸で紳士服を仕立てる洋服店(石田洋服店)を営んでいて、もともと神戸の紳士服の発展のために神戸市と関わりがあり、神戸開港150周年記念の際に「何か将来残るようなイベントをしましょう。」という話が出たときに「神戸のシンボルになる「神戸タータン」をつくることを提案したんです。そして、民間の商店街の人たちが集まって神戸タータン協議会を立ち上げ、「神戸タータン」をつくりました。』

神戸タータンに使われている色は、青が神戸の海、赤がポートタワー、白が神戸の白亜の建物や神戸で加工される真珠、グレーは都会のアスファルト、緑は六甲山に由来しています。

石田原先生『神戸タータン協議会に神戸市も参画してくれることになったので、「神戸タータン」を用いて産官学連携で神戸を盛り上げる活動を行うことができています。ゆるキャラで神戸タータンを着ているものもけっこうありますし、三宮で開催された「ムーミンマーケット」で、「ムーミン」と「神戸タータン」がコラボしたこともあるんですよ。』

神戸タータン【公式】Instagramはこちら

学生とつくった「神戸松蔭タータン」

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写真:神戸松蔭タータンInstagramより

石田原先生「神戸松蔭タータン」は、神戸松蔭の学生たちと大学の歴史を勉強しながら色のイメージを決めてつくりました。サーモンピンクは、大学のレンガ色の建物が六甲山に昇る朝日をあびてキラキラ輝いて見える様子であったり、白と赤とネイビーは松蔭中学高校の制服の色、緑は松蔭の松の緑や六甲山の緑を表しています。

学生たちと歴史を学び、将来どうありたいかまでもイメージしながらそれをデザインに落とし込んでいく工程がとても楽しかったです。』

 

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授業では、学生たちがグループごとに神戸松蔭タータンのグッズを制作しています。グッズはデパートの催事やインターネットの神戸松蔭タータンショップでも販売しているのでどなたでも購入できます。

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神戸松蔭大学では、今後も「ムーミン」を教育に取り入れ、作者トーベ・ヤンソンに関する学びや、「ムーミン」作品にあるさまざまな「価値」を教育の場面で活用していきます。

神戸松蔭大学のホームページはこちら

神戸松蔭大学のInstagramはこちら

今回お話をお聞きした石田原 弘先生のご紹介

他記事使用不可:神戸松蔭大学 石田原先生

石田原 弘
神戸松蔭大学 客員教授
慶應義塾大学経済学部卒
ヨーロッパ留学、商社勤務を経て2000年に石田洋服店を開業。
2019年より神戸松蔭女子学院大学(現・神戸松蔭大学)専任教員。

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石田原先生、ありがとうございました。

2025年は「ムーミン」小説出版80周年の記念すべき年で、80 周年のテーマは“The door is always open”。2025年に共学化した神戸松蔭大学の方向性と本当にぴったり合っています。

「ムーミン」の物語の中で描かれている「多様性」「寛容性」を教育に取り入れつつ、大学全体で様々な地域連携活動を行うことで、学生さんたちは地域の役に立ち、かつコミュニケーション能力を磨いたり、実践能力を身につけることができる。そしてその活動は、連携するすべての機関にとってプラスになる。本当に素敵な取り組みですね。

神戸松蔭大学の学生さんたちの地域連携活動については、今後さらに詳しく取材していきたいと思います。お楽しみに!

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