フランスで親しまれる「造血のビタミン」ラズベリー|山下智道の世界の文化と植物紀行#9
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シャーマニズムが根強く残る土地や人と、そこで用いられる植物との関係を探求するシャーマンハーブジャーナリスト/野草研究家の山下智道さんが、世界を旅する中で出会ったと文化や風習と植物の関係について紹介いただく本連載。人・土地・植物の知られざるつながりを覗いてみませんか?
フランスで親しまれるラズベリー
今回、私が訪れたのは西洋ハーブの聖地・フランスである。
修道院や教会などから派生・進化した、独自の民間薬やハーブのレシピと出会いに行った。

アマゾンや東南アジア、中東などはこれまで行ってきたが、ハーブの王道でもあるフランスはなぜか後回しにしてきた。
今回はなぜかピンときたので、フランスの南仏に行ってみることにした。
羽田から一本、約16時間のフライトでフランスのシャルル・ド・ゴール国際空港に到着。まずは数日間パリに滞在し、マーケットや教会や薬局などをリサーチすることにした。
ルーブル美術館周辺のホテルに着き、重たい機材や荷物をふかふかのベッドにドサッと置くと、周辺を適当にぶらぶらしてみる。
フランスは18時だが、まだ全然明るい。仕事帰りのサラリーマンたちが、バルでワイン片手にムール貝をフォークで突き刺し、貪り食っている。
当たり前だが、日本ではあまり見ない、まるでフランス映画に入り込んだような感覚に、自然と足も早まる。

適当にパリの街を歩いていると、あらゆるところにオーガニックマーケットがある。そこには必ず、入り口付近にまるで宝石のような輝きを放つフレッシュなベリーが並んでいる。ブルーベリー、フサスグリ、クロスグリ、アンズ、セイヨウスモモ(プルーン)、そして一際目立つラズベリー。

ラズベリーは、オーガニックマーケットのみならず、コンビニや商店にも必ず置いてある。パリではラズベリーの消費量が非常に高く、パイ、タルト、ソースにジャムと、日本ではありえないぐらいふんだんに利用している。

私もパリでカフェをハシゴし、アメリカーノ片手にパイやタルトを食べたが非常に美味しく、ラズベリーを頬張った瞬間、口の中で薔薇が咲いたかのような香りが漂った。
フランスのラズベリー品種

フランスでは、フランボワーズ(framboise)と呼ばれ、和名ではヨーロッパキイチゴとも呼ばれる。バラ科キイチゴ属 (Rubus) に属す低木。およびその果実。
ヨーロッパキイチゴを原種とするもの以外に、北米大陸原産のアメリカイチゴ(R. strigosus)やクロミキイチゴ(R. occidentalis)を原種とするものが重宝されている。
これらの選抜や交配で生み出された品種群は、果実の色で赤ラズベリー、黒ラズベリー、紫ラズベリーに大別される。
ラズベリーは「造血のビタミン」

ラズベリーは薬用として、主に葉を用いる。葉には葉酸が含まれており、貧血予防に役立つことが期待されている。
葉酸は、プテロイルモノグルタミン酸および、その派生物の総称で、水溶性ビタミン、ビタミンB群に属している。
ラズベリーの葉に多く含まれ、黄色結晶で光や熱に不安定な物質とされ、ビタミンB12とともに赤血球を作るので「造血のビタミン」といわれている。
葉酸の働き
葉酸は、ビタミンB12とともに赤血球の生産を助けるビタミンである。
また、代謝に関与しており、DNAやRNAなどの核酸やたんぱく質の生合成を促進し、細胞の生産や再生を助けることから、体の発育にも重要なビタミンである。
葉酸は細胞の分裂や成熟を大きく左右するため、特に胎児にとっては重要な栄養成分であり、妊婦が葉酸を十分に摂取することで、胎児の先天異常である神経管閉鎖障害のリスクを減らすといわれている。

シャーマンハーブジャーナリスト/野草研究家 山下智道
生薬・漢方愛好家の祖父の影響や登山家の父の影響により、幼少から植物に親しみ、卓越した植物の知識を身につける。現在では植物に関する広範囲で的確な知識と独創性あふれる実践力で高い評価と知名度を得ている。国内外で多数の観察会、ワークショップ、薬草ガーデンのプロデュース、ハーブやスパイスを使用したブランディング等、その活動は多岐にわたる。TV出演・著書・雑誌掲載等多数。







































