感染前に予防したい。「モザイク病」の原因と対策
LOVEGREEN編集部
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モザイク病とは
ウイルスによる伝染性の病気です。
発生部位は花弁と葉です。花びらにすじ状の斑が入って花がらが小型化したり、葉に濃淡のあるモザイク状のまだら模様が現れ、葉縁が縮れて、株全体の生育が抑えられます。アブラムシやアザミウマ、コナジラミによって媒介されます。このほか、剪定ばさみや手についた汁液から感染することもあります。
モザイク病が発生しやすい時期
1年を通じて発生します。特にアブラムシの発生時期には多くなります。
モザイク病が発生しやすい植物とは?
草花:アイリス、インパチェンス、グラジオラス、サルビア、シクラメン、ジニア、ミヤコワスレ、チューリップ、パンジー、プリムラ、ペチュニア、ユリなど
野菜:ダイコン、トマト、カブ、ハクサイ、ミツバ、コマツナ、ホウレンソウなど
モザイク病の発生を予防するには?
まずアブラムシを防除しなければなりません。周辺の雑草は、モザイク病の伝染源になるので、きちんと除草します。アブラムシの嫌いな銀色のシルバーポリマルチを張って飛来を防ぐ方法もあります。
モザイク病とアブラムシ
アブラムシは、植物の汁を吸って暮らしています。アブラムシが病気にかかった植物の汁を吸うと、ウイルスがアブラムシの体内に入ります。そして、そのアブラムシが別の植物の汁を吸う際に、ウイルスが植物の体内に移行します。人間の血を吸う蚊と同じですね。こうして、健康な植物にウイルスが伝染するので、モザイク病の予防には、アブラムシの防除が大切なのです。
モザイク病が発生してしまったら?
ウイルスによる病気なので、発病すると治療することはできません。発病した植物を放置すると、アブラムシなどによって健全な株にうつされてしまうので、見つけたら球根や地下茎なども含め、株ごと処分して伝染源を断ちます。
ウイルスに感染した植物を治療する薬剤はないので、アブラムシを防除する薬剤を、周辺の草花も含めて散布します。
アブラムシの退治に効果ある薬品は次の通りです。
草花全般:ベニカXファインスプレー、オルトランDX粒剤
ハーブ・野菜全般:ベニカマイルドスプレー
発病した植物を処分するときのポイント
発病した植物の処分は、健全な植物の作業後にします。発病株を最初に扱うと、手やハサミなどについたウイルスが、健全な植物に伝染する可能性があるからです。熱処理するか、第三リン酸ナトリウムの飽和液で消毒しましょう。
モザイク病ウイルスの特徴と各種植物でのモザイク病の症状
モザイク病の原因となるウイルスはカビや細菌とは違い、電子顕微鏡でないと見えないくらい微小な大きさです。接触感染が主で、空気感染することはありません。また、このウイルスは人間に感染することはありません。
ミヤコワスレのモザイク病
葉に白色ですじ状の斑が入って奇形になったり、花弁に斑が現れます。アブラムシの発生が多い春や秋に多発し、病気にかかった植物を扱った後など、剪定ばさみや手についた植物の汁液が、その後の作業で傷口について伝染します。
チューリップのモザイク病
花びらにすじ状の斑が入り、葉に濃淡のあるモザイク状のまだら模様が現れて、生育が悪くなります。特に赤色系品種など有色の花に斑が現れます。アブラムシによって媒介され、切り花などの際に、剪定ばさみで病気にかかった株を扱ったり、手についた汁液が、その後の作業で健全な植物の傷口について伝染する場合もあります。
ハクサイのモザイク病
夏から晩秋に発生しやすく、葉に緑色の濃淡のあるモザイク状の斑が入り、表面が凹凸になって縮れます。進行すると株の生育が抑えられ、結球不良になりやすく、発病すると治療できません。
トウガラシのモザイク病
発生時期は4~10月
葉がモザイク状のまだらになり、細くなったり変形したりして発育不良になります。果実もつぶれたような形に変形します。主にアブラムシによって媒介されますが、発病したジャガイモから伝染することもあります。春と秋のアブラムシが活発な時期に多発します。
ピーマンのモザイク病
発生時期は4~10月
葉がモザイク状のまだらになり、細くなったり変形したりして発育不良になります。果実もつぶれたような形に変形します。主にアブラムシが原因で発病しますが、発病したジャガイモからの伝染や、ウイルスに汚染された土やタネが原因になることもあります。
ストックのモザイク病
発生時期は4~5月と9~11月
花弁にすじ状の斑が入って小型化し、葉に濃淡のあるモザイク状のまだら模様が現れ、株全体の生育が悪くなります。
ジンチョウゲのモザイク病
発生時期は通年
葉に黄色いすじ状の斑が入ったり、淡緑色のモザイク症状が現れたりします。主にアブラムシによって媒介されますが、接ぎ木や挿し木でも伝染します。発病すると葉が波打ったり、よじれて変形し、生育が悪くなります。ジンチョウゲに感染するウイルスは5種類あり、2~3種類が同時に感染していることもよくあります。
樹木のモザイク病
発生時期は1年中
新葉が開くころに発病が目立ちます。葉にすじ模様やまだら模様が現れたり、葉がゆがんだりします。樹木の生育は悪くなりますが、枯れることはほとんどありません。原因となるウイルスは複数あり、植物によって異なります。
モザイク病のまとめ
・アブラムシを防除しましょう
アブラムシが媒介になって発生するウイルス性の病気なのでまず、アブラムシの発生を抑制することが大事です。
・発生してしまったら
モザイク病は、いったん感染したら治すことができません。ウイルスに感染した植物を放置すると伝染源になるので、発病した植物はすぐに根や球根ごと抜いて処分します。
モザイク病のトリビア
モザイク病にかかったチューリップはヨーロッパで珍重された
チューリップの原産地は中央アジアから地中海沿岸地帯といわれ、16世紀にヨーロッパへ伝えられました。17世紀にはオランダで「チューリップ狂時代」と呼ばれる大ブームが起こりました。レンブラントやヤン・ブリューゲルなど、オランダの画家たちの描いた絵に登場するチューリップの多くは花が斑入りで、今ではモザイク病にかかっていた花だと分かっています。でも、当時は斑入りのチューリップは大人気で珍重され、球根がかなり高値で取引されていました。
歴史の中のモザイク病
モザイク病に関する世界最古の記載は『万葉集』の句に「黄葉(モミ)」という言葉で現れますが、これはモザイク病に感染したヒヨドリバナの葉であると考えられています。
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