「世界らん展2019」の空間を感じさせるディスプレイ展示が面白い!
土屋 悟
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今年も力の入った展示が目白押しのディスプレイ部門の展示。ランをはじめとする花やグリーンを、生活の中でさらに楽しむことを提案するディスプレイが多く見られました。
目次
■冬に咲くランのうれしさ…貝塚造園+RadiantGreenGarden+GreenCalmHouse
暮らしの中で花やグリーンを楽しむ提案が盛りだくさん
今年から、「世界らん展2019」が大きくリニューアル。それとともにディスプレイ部門にライフスタイルディスプレイというカテゴリーが登場。
これは、室内や庭など、住空間の中で花やグリーンをどう楽しむかを、ディスプレイの形で提案するというカテゴリー。ランを使ってオブジェ的な作品を作るのではなく、暮らしの空間の中にどのようにランを活かせるかを見せることが要求されます。身近な場所でどんな風にランやグリーンを楽しめるのか。興味深いディスプレイが多数出展されました。
空間全体にどのようにランを配置していくかという提案もあれば、上の写真のように木箱を飾り棚のように使って飾る提案(ワカヤマ・オーキッドクラブ)のように、一部だけ取り出して真似することができるようなアイデアも盛り込まれていたりします。今までよりもっとランを楽しむための参考になるアイデアも随所に見られました。
まずはそうした、ライフスタイルや空間に合わせてランを楽しむディスプレイを紹介しましょう。
和の空間でランを楽しむ…向山蘭園
華奢でシックな和テイストのシンビジウム品種、和蘭を数々世に送り出す向山蘭園が、和の空間でのランを楽しむ提案。床の間に飾ったり、食卓のセンターピースとして飾ったりといった楽しみ方が、パッと見てわかるディスプレイです。
おもむきのある平皿に植え、根元に苔を持って盆栽仕立てに。あるいは根鉢を苔玉に仕立てて、流木に載せて。こうしたあしらいのアイデアは、すぐに暮らしの中で生かせそうです。
丸窓の中から眺める、部屋の中の花。家の中から見て楽しめるように庭をつくるというのはよくありますが、これは外から中へと逆向きの視線。壁や家具などを額縁に見立てて植物を楽しむというヒントになりそうです。
庭で楽しむラン・・・相模庭園
奥にあずま屋が建てられた庭で、ガーデンの草花としてランを使ったディスプレイ。東屋の屋根にはデンドロビウムが植えられています。
いわゆる「洋ラン」だと、高い温度が必要な熱帯性のものが多くありますが、もともと日本に自生していたシンビジウムやデンドロビウム、エビネなどには寒さに強いものもあり、実際にそうした種類を庭の草花として生かしている例もあります。日当たりや風の抜け方などの条件にもよりますが、関東地方より西の平野部であればランを生かした庭をつくるのは、それほど突飛なアイデアではないかもしれない。そんなことにも気づかせてくれるディスプレイです。
あずま屋の軒からはネペンテスが垂れ下がり、構造物の硬い印象をやわらげてくれています。国内の戸外でネペンテスを育てるのは難しいですが、環境に合わせて「替わりにハニーサックルを使ったらどうなるかな?」などと空想してみるのも楽しいもの。
インドアとアウトドアをグリーンがつなぐ…コトハ
家の外は庭の草木が、中もグリーンでいっぱいという、植物好きには夢のような住環境。庭から家の中まで、暮らしのすべてをグリーンで包み込まれながら過ごせる住まいです。
コトハは京都にある、グリーンいっぱいの店内に趣味のよい暮らしの品が並ぶ人気の雑貨店。それだけに、什器やガーデングッズ、グリーンまわりのアイテムのチョイスもセンスがよく、上手い見せ方で提示しています。
硬い質感のバルブを持つセイデンファデニア・ミトラタは花が無くても、吊せる多肉植物のようなおもむき。野に咲く花のような可憐な花と草姿のエピデンドラム・セントラデニウムはむき出しの根にも迫力がある。着生植物は吊すことで置き場を取らないというメリットがあります。同時に、視線が高い位置に誘導されることで上へ広がる空間を意識させ、結果的に部屋を広く感じられるようになるので、活用したいテクニックです。
シックな空間をコチョウランで品よく彩る…椎名洋ラン園
サイズ、花色、模様など多彩なコチョウラン品種を生み出し続けている椎名洋ラン園の展示。
黒を基調とし、テーブル天板、床、カウンターとぬくもりのある木の素材を使った、飲食店を思わせる空間。室内に配置するコチョウランの花色を白〜濃いピンクまでのグラデーションでまとめることで全体の統一感が生まれ、引き締まった印象を生んでいます。特に、濃い色を中心に使っているのが効果的。
華やかさに目が行くコチョウランですが、こんなシックな使い方もできますよというメッセージを感じる展示です。
梁からラフに吊り下げられたコチョウラン。コチョウランは乾燥に強いところもあるので、こんな使い方もできます。
暮らしの空間に植物の柔らかさを…parkERs
青山フラワーマーケット・ティーハウスなどをはじめとする屋内緑化で人気のparkERs(パーカーズ)。
ディスプレイ前面では、硬い直線の柱を隠すのではなく、それを使ってコニファーの葉で柔らかさを出し、白花のコチョウランで控えめな華やぎと動きを演出。
中に入るとバークチップが敷き詰められた床面のところどころにシダの茂みがあり、濃いピンクのコチョウランが引き締まった華やかさを添えています。バークチップの床は一見奇をてらった演出にも見えますが、土足で歩く屋内スペースであれば実用化もされているのだとか。
シダとコチョウランはいずれも強い光がいらない植物。デザイン的に優れているだけでなく、屋内の限られた光で長く楽しめるように作られているあたり、さすが屋内緑化のプロフェッショナル集団といったところでしょうか。
冬に咲くランのうれしさ…貝塚造園+RadiantGreenGarden+GreenCalmHouse
昨年の国際バラとガーデニングショウで大賞を受賞したガーデナーユニット。
枯れたグラス類の中にちらちらと残る緑の葉。そして、うつむき加減に咲くクリスマスローズとユキノシタ類。庭自体が主役ではないのですが、地面に高低をつけ、落葉した樹木を配してメリハリのきいた冬の庭をサラッと作るあたりはさすがの実力です。
そうした庭の片隅にある建物の中では、ワーディアンケースの中でカトレアが咲いています。例年世界らん展の開催は、もっとも冷え込む2月。屋外ではまだささやかに冬の花が咲くだけのこの季節に、部屋の中ではランが咲いて目を楽しませてくれます。シンプルで、華美なところがないディスプレイですが、そんな冬のランの喜びを、さりげなく教えてくれる作品のようにも見えます。
「世界らん展2019」 開催概要
2019年2月15日(金)〜2月22日(金)場所・東京ドーム
『世界らん展2019 —花と緑の祭典—』についての詳細はコチラ!
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