D&DEPARTMENT TOKYOで開催された【もののまわりトーク 植物の産業を知る】をレポート!
LOVEGREEN編集部
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植物産業の店舗形態の割合
伊藤 ホームセンターで植物が売られているとはいえ、販売チャネルの全体構成比をみると、半分以上はフラワーショップや園芸専門店が占めています。そうした構造から、それぞれのお店は自店の情報発信を一生懸命されてはいるのですが、植物の業界全体として、世の中に向けて大きな発信というのがなかなかできていませんでした。ネット上の情報整備も他の業界に比べて遅れていて、例えば飲食であれば「食べログ」などで、自分の行きたいお店がすぐに検索できますが、植物業界には他業界では当たり前にあるプラットフォームすら長い間ありませんでした。
ナガオカ もう花ログとか作ったら良いんじゃないですかね。
伊藤 LOVEGREENはまさに植物のプラットフォームになろうということでスタートしました。当時は育て方や飾り方、店舗やイベントの情報など、植物のある暮らしにまつわる情報を全方位的に発信するメディアがなかったので。
ナガオカ やっぱり、誰かが大きな力でマーケットを底上げしなくてはいけないということですよね。
伊藤 garageさんでも手掛けられていますが、最近は公共の施設やオフィスに植物を取り入れることが増えていますよね?
ナガオカ それはなぜ増えてきたんですか?
二村 働き方改革などで、植物が人の心身にもたらす効果が注目されるようになってきたのが大きいですね。植物があることでストレスが軽減したり、あとは空間にゆとりを持たせる効果であったり。最近は植物をインテリア感覚で捉えることがスタンダードになってきて、家の中にグリーンがあることが当たり前になってきましたが、そうした流れと並行して、一日の大半を過ごすオフィスや、多くの人が行き交う公共施設でも植物を取り入れる動きが強まっています。
伊藤 これまでなんとなく「植物の癒し」と言っていたことが、数値として実証されてきたのも大きいと思います。例えばキャンプでカレーを作るとご飯が焦げていたりして大して美味しくないはずなのに、なぜか美味しく感じますよね。
ナガオカ あー、ありますね(笑)
伊藤 それは決して気のせいではなくて、植物が見える空間が、味覚に良い影響を与えるということも分かってきました。となると、飲食店にある植物が単なる飾りではなく、機能面でも必要とされてくる。また、空間に植物があればあるほどいいわけでもなく、視界に入る植物の割合=緑視率が10~15%の空間が、ストレス軽減や生産性の向上に最もいいバランスであることも実証されています。企業としても、植物を取り入れることで社員のストレスが減ったり生産性が上がったりするのを、数値で示されることで導入しやすくなり、「あったらいいもの」から「なくては困るもの」に植物のステージが上がってきているのが今ではないでしょうか。
ナガオカ 人類的にはどういう傾向なんでしょうね。少し前にペットブームなどもありましたが、人間ではどうすることもできないもの――自然や動植物を、自分たちの都合のいいようにできると思ってきたことに対して、そうではなくて、植物といま一度共生してくことで、自分たちの暮らしを豊かにしたいと思っているのか。逆に言えば、それぐらい現代人は病んでいるといえるのか……。
二村 太古の昔から人間の身近には植物があったわけで、時代が進んでも、というか進むほど、自然や植物を求める気持ち強まるのではないでしょうか。一方で、人の居住空間に植物を取り込むのは人間のエゴなのでは?と思うこともあります。でも、共存できるような手助け――、それは植物が育ちやすい環境をいかに作るかとか、育てる人へのアドバイスであったり、そうしたことをしていくのが自分の役目なのかなと思っています。
植物産業のユーザー割合
伊藤 園芸の今のコアユーザーは60~70代といわれていて、一方でもっと下の世代にも興味をもってもらうことが課題となっていますが、なかなかうまくいっていないのが現状です。garageさんでは、お客さんの層はどうですか?
二村 garageでは逆に30~40代のお客様がメインです。店を始めた当初は女性客の割合が多かったですが、最近は植物のある暮らしが浸透してきて男性のお客様も増えてきました。男性はハマると、そのジャンルの植物を突き詰めたくなる傾向が強く、年間購入額、リピート率ともに高いですね。
ナガオカ garageさんは値段の付け方が絶妙だと感じますね。高すぎない。まぁ安くもないんですけど(笑)
二村 コンセプト的には高くない設定にしたいと思ってます(笑)。ただ最近は珍しい植物が人気で、どうしても高くなってしまうっていうのはありますね。
ナガオカ 実際garageさんに行ってびっくりしたのが、植物だけでなく、ホースやジョウロなどがみんなおしゃれになっているんですね。昔はもっと「ザ・園芸!」っていうものだったけど、今はすごく洗練された道具がたくさんあるんですね。
二村 昔は本当に少なかったのですが、自分が見た目から入っていきたい人なので(笑)、少ない中からどうにか洒落たものを集めていました。最初はそうして苦労して集めていましたが、最近はメーカーさんの商品開発も進んできて、素敵なツールが比較的増えてきましたね。
園芸が盛んな愛知県
ナガオカ 私は愛知県出身なのですが、今思えば夜にハウスに明かりが灯っている光景、電照菊ですか。あれって他県からすると特殊なものだったんですね。
二村 愛知県は花の産出額が日本一ですから。
ナガオカ それってなぜなのですか?
伊藤 愛知県のなかでも、渥美半島を擁する東三河地方が県全体の7割の花きを生産しているのですが、常夏ならぬ「常春」と言われるぐらい年間通して温暖なため、農産物の生産に適しています。植物の生産も昔から盛んでした。
ナガオカ 常春、良い表現ですね~。
伊藤 ちなみに愛知県には、鉢物植物の取扱量がアジア最大、世界でも第5位の市場「豊明花き市場」もあるんです。
ナガオカ へぇ~!
二村 観葉植物が20数年前に流行りだした時に、幸福の木とか青年の木とかありましたよね?
ナガオカ 幸福の木! ありましたね、どこの家にも幸福があった(笑)
二村 幸福の木は渥美半島の生産者さんが最初に日本に流通させたんです。そこから徐々に個性的な観葉植物が増えてきましたね。
ナガオカ 昔の観葉植物の印象が強いので、当時のままセンスが停滞していて、生産者さんのハウスに行っても30年前と同じような植物しかないのでは?という印象もあります。二村さん、実際はどうなのでしょうか?
二村 渥美半島に関して言えば、現在はかなり多様な品種を作っていて、今の暮らしに合う植物を少量多品種で作る生産者さんも多いです。garageでも生産者さんのハウスにお邪魔して、一点一点選んで買い付けたりしています。
ナガオカ そうだったんですね。garageさんに行ったときに、昔はなかったような観葉植物がたくさんあって、そういう植物は二村さんが自分で輸入しているのかと思っていました。でも地元の愛知県で生産されていたのですね。日本で生産されている観葉植物も昔とずいぶん印象が違うわけだ。
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