【前編】「とくべつ」なお花屋さん。ル・ベスベ代表 松岡龍守氏 インタビュー 「ルベスベ20周年 これまでとこれから」
小野寺葉月
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青山にあるル・べスべはたくさんの人にとって「特別」なお花屋さんです。お花が好きな人たちにル・ベスベのお話をすると、みなさん優しさと憧れが混ざったようなお顔でご自身とル・ベスベのお話をしてくださいます。
渋谷の東急ハンズ内にあったフラワーショップで働き、その時代からたくさんのファンがいた高橋郁代さんと松岡龍守さんのお2人が1997年に青山にオープンしたル・ベスベは、今年20周年を迎えました。そんなル・ベスベのこれまでとこれからを代表の松岡さんに伺ってきました。ノーカット・前後編でお送りします!
ル・べスべのいま。
―よろしくお願いします。
松岡:よろしくお願いします。
―まず簡単に現在のお店の状況を教えて頂きたいのですが、店頭の生花、会場装花、あとインスタグラムで拝見しましたがお庭のお手入れもされてるんですね。
松岡:そう。お庭のお手入れね。しています。お庭を最初から作るって言うよりは、出来上がってから2、3年経ったお庭が、な〜んか格好わるくなってきてたりするのね。それを「ちょっとやってよ」なんてお願いされるので、直す。
―お庭のリフォーム、みたいな?
松岡:そうそう。お庭のリフォーム。いいねその言葉。
―個人のお庭ですか?
松岡:うん、商業(施設)もやるんだけど、ご近所の。ベランダとか。
ダメなのは、完璧にきれいにしちゃって、「景色」にしちゃうこと!
松岡:やっぱりな〜んか、格好悪くなってくんだよね。僕がお庭のことをするときっていうのは、完璧に仕上げました! っていうふうにはしないの。その人たちの(手を入れる)スキマを残すっていうか。ある程度は自分がやってください、みたいな感じ。球根とか多年草とか植えて、毎年楽しめるようにしたり・・・ダメなのは、完璧にきれいにしちゃって、「景色」にしちゃうこと!そしたら絶対ほったらかしちゃうから。 緑があるとさ、やっぱり落ち着くじゃない。心が落ち着くスペースを作るきっかけづくりと言うか。そんな感じでベランダとかさ、片付けてあげながら良くしていく。
▼店内はお花の色ごとに置いてある。サンルームは白っぽいお花のコーナーだった。
忙しいでしょう、今は皆さ。仕事も家事もあって、子供もいたら。しかも意外とベランダ出ないじゃん。見過ごしがちなんだよね〜。だからすこしでも自分が手を入れて自分のサイクルを決めないとやらないよね。
―わかります。水やりって・・・わすれがちというか・・・
松岡:今はさ、自動灌水の装置とか、昔に比べてすっごい値段下がってるからさ。昔10万位してたのが1〜2万くらいだったりするから。ベランダとかでも使っていいと思うよ。2 年も持てば、枯らすストレスも減るからもと取れるんじゃない?
―松岡さんのご自宅には植物はどれくらいあるんですか?
松岡:うーん、まあ展示会とかでさ、「トロピカルっぽいのがいい」とかいってさ、「あんまり知らないけどこんなかんじかな〜」とかいって飾るじゃない。それで、3日間とか行って(植物が)帰ってくるじゃない。そういうのは捨てられないから、僕の家に来るんですよ。
ル・ベスベ
―どんどん増える!
松岡:それでまあ、またその子がお出かけしてくれることがあればそれで活かすから、それはそれでいいんですけど。 なんかそういう感じの植木しか僕は持ってないから。なんかいいなと思って買ったのも、もう始末に負えない感じのもあるんだけど。気が向いた時には水やってるかなあ。昨日は、あげたかな?うん、 あげたあげた(笑)ここんとこほら(20周年で)忙しかったから。葉っぱを見ると色の具合で僕はもう大体わかるから、もうぎりぎり限界〜なんて感じだったから。
母の日について。
やらないってことを決めるのに勇気がいる
―これからまたお忙しい時期ですよね、母の日で。もう既にお忙しいんですか?(※取材日は4/21)
松岡:そうですね、うちはまあバタバタしてるかな。日本中からオーダー頂けるので。 母の日は数を限定してすぐ閉め切りますね。今一番困ってるのは送料。その時期暑いからクール便で送らせて頂いてるんだけど、送料が結構かかっちゃうから・・・お客さんのご負担が増えちゃうのが心苦しいんだけど・・・
▼奥ではスタッフさんたちがてきぱきとお花を束ねていらっしゃいました。
―今年の母の日のテーマなどはあるんですか?
松岡:カーネーション売らないっすよ、うち。(カーネーションが悪いわけじゃなくて)カーネーションもきれいだし、すごく持つし、今は輸入物もクオリティ高いのといろんな色があるから綺麗。でも何故やらないかって言うと、気持ちをやり取りしてるから、毎年同じって言うのもねえ? なんか。。。つっまんない。。。(笑)こんなこと言うとまた怒られちゃうんだけど・・・まいっか(笑)お花とかって意外とそういうところがあるから、うちなんかだと季節のお花をいろいろ入れて届いた方が毎年楽しいのかなって思って、置いてないですね。
松岡:20年、ここに来て(ル・べスべを開店して)20年ですけど、ある時に、「もうカーネーション置くの止めよう」とか、「もうカスミソウみんな使うから止めよう」とか、そういう風にやって、日々そういう風にお店の考え方というか、お店を作り上 げてきてるから、中々大変ですけどね。なんかひとつ決めてしまうと意外と楽だったりするんだよね。
―「やらない」ってことを決めるってことが大変?
松岡:うん、(それ)が、勇気がいります。 でもまあ、いっぱいお花屋さんあるからね。うちだけじゃないし。皆頑張ってるし。ただ、その・・・こうやって(Botapiiを手に取りながら)喚起して頂いている割には、やっぱり昔に比べると(花を飾ることが)減ったんじゃないかなあ。
▼ダリアが大人っぽい赤いコーナー
それが減るってことは、仏様の仏花とは別にね、花を飾るっている文化がなくなってい く可能性がね、あるから・・・それはちょっとヤですね。そうすると作る人もい なくなり、お花屋さんもみんなぎりぎりで頑張ってるから。。。 みんな、贅沢に(お花を)バーって使え・・・るような文化というか・・・残したいよね。
ありがたいっすよね!だってさ、食べ物じゃないんだもん。お花は。それを飾って、って。てことは、おそらくお花には気持ちとか、そういうのを伝えるって言う役回りがあって。その後にそのお花を楽しんで、頂いた方のことを反芻できるじゃないですか。心で。それが意外と心地よかったりとか。 あとはその、お花飾ってる自分が気持ちよかったりするンだと思うんだ。
―それは絶対そうだと思います。
松岡:そんでなくなってくれるからね。お花は。最後汚いんだけど、きったないんだけどお、なんかそれでリセットできるから。
▼オレンジから黄色。オレンジ、とひとことで言っても微妙な色味の違いがあるんだなあ・・・
―最近娘が4歳になったとこなんですけど、雑草を摘むことを覚えたんですよ。
松岡:偉い!エライ(笑)!いい子だ(笑)
―雑草を見つけて、摘んで、家に持ち帰ってはさみで切って瓶とか小さい器に入れる。それを「きれいでしょ!」って見せる。
松岡:うんうん。あーいいねえ!すばらしい。
―やっぱり、「きれいなものをみつけて、飾って誰かに見せて共有する」っていう原始的な喜びみたいなものがあるんだなって思ったんですよね。
松岡:ある、ある。そういう機会はやっぱり親が作ってあげないとダメなんだよねえ。 結局、次の世代のお父さんお母さんがお花に接しなくなると、人が亡くなったり、結婚式とか、冠婚葬祭以外の時に花と接することを増やさないと。。。親がやんないと子供は絶対やんない!
―松岡さんが好きなお花って何ですか?
松岡:季節季節であったりするんだけど。まず、僕が下っ端の頃に、先輩から冬にストックの花束を教えてもらったの。だから、ストックの匂いをかぐと、そのときの初々しい気持ちになります。違う意味での好き。
▼薄い紫から濃い紫まで。色と花の形の組み合わせは無限で、どう合わせたら?と思うけれど、ル・べスべの店内にある花はどう組み合わせても合うような気もしてくる。
毎回仕入れで僕は好きな花を買っているわけで、季節季節でその瞬間が花によって違うんです。その瞬間は「ウワーいいな」って思うから・・・一概にコレ! っていうのは言えないなあ。難しいなあ。 例えば一つ今週競りで買ったこれが好き!って言うのがあったり。ああ、いまこれいいね!っていうのがあったり。どうしても長い間やっているから、旬なもので一番きれいなものを買おうとするから、だから皆好き。って言う結論でもいい(笑)?
▼松岡さんの好きがつまった店内はやさしくているだけでおちつく。
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