【後編】「とくべつ」なお花屋さん。ル・ベスベ代表 松岡龍守氏 インタビュー 「ルベスベ20周年 これまでとこれから」
小野寺葉月
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南青山の大通りから一本入ったところに静かに佇む、物語に出てくるようなお花屋さん「ル・べスべ」。今年で20周年を迎えました。「これまでとこれから」というテーマで代表の松岡さんに伺ってきたお話をノーカットで前後編にわけて連載します。後編スタートです!
共同代表 高橋郁代さんのこと。
こんな人はもういないと思いますね。僕の中ではね。
松岡:お店を始めたときはのんびりして、自分たちのルーティーンで仕事して、食べていけたらいいねって。そんでまあ、もうかったら皆で遊びにいこうって。それはどこの起業家さんもある程度するよね、旅行とか。。。社員旅行もずっと行ってたんですよ。ここ5年くらい、行ってないけど。なかなか厳しいんですよ(笑)
―ホームページのIkuyo’s Eyeで色々なところに行かれているのを見て「すてき〜!」と思ってました(☆注1)
松岡:はいはい。彼女は。彼女は、仕事を沢山する人なので。ダイアリーを毎年作らせてくれって言うのを5年間、僕と約束してて。クライアントがいて仕事をするのと、自分のため仕事をするのとは違うから、5年はいいよっていったらず ーっと続いて、大変だったンですよ(笑) で、あとは年に 1 回海外って言うのも約束してたので。突然行くんですよ。パ ッと。2回行くときもあったし。仕事の合間見て。だから一緒に行ったことは殆どないかな。
―ああ、そうなんですか。
松岡:うん、ないない。最後に一緒に行ったのは・・・長野県かな。その前は・・・オランダ行ってイギリス行って・・僕が運転して。彼女イギリス沢山いって来てたから、案内してもらって。それが最後かな。きっと庭とか草花が好きだっから、イギリスのが好きだったんだと思う。フランスなんて全然行かなかったな。最後の後半・・・50代になって初めていったんじゃないですか?
―「ルベスベ物語」のなかにも「『お店がパリっぽいですね』っていわれるけど行ったことはなかった」と書いてありました(☆注2)
松岡:そうそうそう良く言われてました。でも逆に、行くと見るから。真似って言うんじゃないけど、頭にインプットされちゃうから、本とかいろんなものを見て(頭の中で)絵描いていったのが正解だったような気がしますよ。で、イギリス行って植木見たり、なんかまた吸収していろんなものをヒントにしていたんだと思いますよ。
―Ikuyo’s Eye や本を読んでいて、エネルギーがものすごい方だったんだ!というのを感じました。
松岡:すっごいですよ。ほんとに。こんな人はもういないと思いますね。僕の中ではね。あのー、お金に執着まずないし。初めて会った時に「この子は違う」って僕は感じたから。東急ハンズでね。作る花が違うんですよ。今みたいに色んなのがあるわけじゃなくて、普通のお花屋さんですよ。
彼女が手を加えると、なんかあか抜けるんですよ。カスミソウ一つでも、束を売ってたんだけど、カスミソウは 普通、棒状にすっと作るのが多いんだけど。びっくりしたのは彼女はね、きれいにほぐして、まあるくブーケにして。セロハンをまくんだけど、更にそのセロハンを切ったりしてました。
そんでそれを並べるんだけど、なんだか知らないんだけど売れんですよ!そのブーケが!今日の一品じゃないけど、なんかちょこちょこつくってました。光り輝くものを。今でこそ日替わりのブーケって売ってるところあるけど、当時はないしね。
であるときから、花は全部彼女に任せて、僕は仕入れと植木の方をやったのかな。で、植木もこの人面白くて。他の人は絶対買わないような伸びきったへんなのとかを買うんですよ。でも、植えるじゃないすか。そしたら雰囲気が、もう(違う)。
―へえー!
松岡:要するに多分。温室とかできれいに育てられたものって、かしこまりすぎて、 きれいなんだけど色気がないんですよ。それを考えてたんじゃないかなあって。 だからちょっと時間があって庭の方来ると真直ぐ植えようって言うのに斜めに植えたりとかね。なんか変なんですよ、感覚が。だけどねえ、植え終わってみると、「ああなるほど・・・!」って言う風にねえ、なるんですよ。
―それはやっぱり小さな頃から野山で自然に生えている植物のバランスを見てきて何が好きか、どういうものが美しいかというのが自分の中でとてもはっきりしていたんでしょうか。
松岡:彼女の中に感覚として入っている分はもちろんあるけど、人のものを見て学んだりとか吸収していたんだと思う。彼女は勉強が嫌いではないタイプだから、いろんなことを見て勉強しているんだと思うし。花と関係ないことも興味いっぱいでしたね。で、独立したら好きなものが買えるようになり、(後ろを見ながら)こんなふうになり・・・
▼本、花瓶、雑貨小物・・・ここにしかないものがきっと沢山ある。これだけのものがありながら、雑多な感じはなく、まとまって見えるのは全て郁代さんのフィルターを通しているからなのだろう
松岡:こんなもんじゃないんです(笑)まだまだありますね。で、僕は「なんでこんなにいっぱいあるのに買うの?ばかじゃないの、こんなカンオケまでもってけねえぞ」ってイヤミも言ってたんだけど、よくよく考えて、ここで今仕事をしてみると、好きなもの「これいいなって思ったものを買っておかないとなくなっちゃう」と良く言っていたんだけど、まあお給料もね、昔よりは良くなったから少しは、僕が管理してたから使いすぎないようにしてたんだけど。
あいつお店行ったり下行ったりぐるぐるしてたんだけど、ここが一 番ほっとする場所だったり、彼女が原稿描いたりする場所で、自分がいいなと思ってるものに囲まれて生きてるわけだから、きっとそれが一番落ち着く場所だったのかなあと思いますね。ある意味幸せだったのかなあと思います。
野の花だろうと、売ってる花だろうと、彼女が作ると品があるんですよね。
松岡:彼女がいいなと思ったものがお花にも生きてるし、例えば撮影があればあの花瓶持っていこうとか、ダイヤリーで自分でスタイリングするから楽しかったんじゃないすかねえ。僕がいうのも変なんだけど、野の花だろうと、売ってる花だろうと、彼女が作ると品があるんですよね。
あの、嫌らしくないんですよ。それがこの人のすごいなあっていう。後は色合わせ。勉強をきっとしてて、仕事が終わって、僕はさっさと帰りたい方なんだけど、帰らないんだよね。お花をいつもね、組み合わせるわけ。このお花で素敵なグラデーションは何かとか。それをいっつも勉強してた気がする。
松岡:多肉系のはやりも予見してましたよ。彼女。周期はもちろんあるんだけど、巡ってくる度に良くなっているよね。7年前にもう、LA とサンフランシスコに行った時に「多肉がこれから売れるわよ」って言ってたので。
―もう本当に、「好き」だったんですね。
松岡:そうだと思います。人に喜んでもらうのもね。だからほんっとにお客さんいっぱい持ってましたから。古くからのお客さんもいっぱい。ね。あれ、なんかまとまりがない。えーと20周年だから、いろんなことがあって、んで 、喜んでもらえるってことがモチベーションだから。
ル・べスべと松岡さんのこれから。
わっかんない。来年やめてるかもしんないし。
―こういうことやってみたいとか、そういうことはありますか?
松岡:あーあるけど言わない(笑)ずーっとあるんだけどねえ、なかなかね。なんだろう。まあその辺僕の力量の問題かもしれないんだけど。意外と僕はかたーく固く行くタイプなので「早くしてよ」って怒られるんだけど(笑)考えてることはあるんだけど、考えてるうちに誰かにやられちゃうから今は言わない(笑)
お店を始めてから、畑を借りたんですよ。18年まえかな?今は埼玉にあるんだけど、僕の考えでは、理想は・・・お花屋さんは市場で競争して花を買ってくるから、自分たちの畑で取れた花を自分たちの店で売りたい。18年前に、人員二人付けて300坪畑を借り。
ところがなかなか店が忙しくて、生産性を保つまでは行けず。生産者は大変だから、上手く出来たらお店で売って、余ったら市場でも売ろうっていう作戦だったですね。今もたまに切れるものがあれば切り花で出したりはしてるけどね。おそらく今そうやってらっしゃる方もいると思うんだけど。そんでその近所の人が前を通った時に四季折々きれいにしておきたかったんだよね。
▼入口のわきにある右近桜は畑で栽培したものなんだそう。
―「あそこの畑どうやら青山のお花屋さんがやっているみたいよ!どうりで素敵ね・・・!」みたいな
松岡:そうそうそう(笑)そのうち「草刈りをする日でーす」とかいってワークショプみたいにして。
―それ凄く楽しそうですね!
松岡:草刈り大変なんですもん!担当の子が薬使いたくないて言うからさ、僕は行くと半分、10分の1もやらないな、そこまでやって「やーめた」ってってビール飲んで寝てる(笑)最近近所に温泉が出来たのかな。だからそこに入って帰ってくる。
―最高じゃないですか!
松岡:最高じゃないよ〜!!! で、いろんなことをやりたい!あれもこれもとよくばって仕事し、いろんなお客さんにお願いされ、しかし大きくしたくないと(高橋さんに)言われ!出店も我慢し!
―そうですよね、出店のお誘いはたくさんあったでしょうね。
松岡:うん。でも、だいたい条件を付けてこれが出来れば出ますって言うと、じゃあいいですって言われちゃう(笑)一応、こっちがやりたい条件で、万が一出られるかもと思って色々言ってみるんだけど、やっぱり無理ですね、ってやめちゃう。まあ欲はかかず、ここでね。
松岡:最近の女の子はだいたい勤めると3年くらいで「結婚しなくちゃいけないし」とかね。なるんだけど。 やろうと思えば出来るんだけど、両方とも。もしかしたら。やり方は兎も角としてね。夕方までしか働けないならどういう風にするかとかね。それを受け入れる花屋でないといけないと思うんだけどね。そういう風に思って、一生の仕事として女の子も働き続けられるようにしたいなと思うんだけどね。
―事業が実際に動き続けているとその中で変えていくことは難しいことですよね。
松岡:難しい難しい。だって子育てと家事やったらとてもじゃないけど花屋なんか出来ねーよなあ。でも裏返すとさ。そんなに儲けてないんだよ、花屋なんてさ。 他の大企業と比べると。中小企業はそんなに儲けてないんだろうけど。。。。また 愚痴が始まったから止めよう!軌道修正しましょう! 山あり谷ありありましたけど、仕事もね。俺は楽な方に行こう行こうとするんだけど、店が(お客さんが)行かせてくれなかった、ありがたーーーい花屋さんです。
―パチパチパチ(笑
お花屋さんを見ていて思うこと。
上手になる子は「ほんとに好きな子」だと思う。花の特徴分かってたり、花のきれいさを見つけるのが上手な子
松岡:今お花屋さんほんとに皆さん工夫されてると思う。ただやっぱりね、利益を優先して作りすぎると、造りものに近くなったり、どこの花か分かんなくなったりするから。ちょっとこう曖昧な・・・利益も含めて曖昧な部分がないとつまんないんじゃないかな?と思う。(電卓を叩く真似をしながら)ハイこれ、原価いくら、 これ足してあといくら、はいこれ。って出来た花は、きれいだけどぜーったいつまんない。花屋は曖昧さを残した方が、面白いものが出来る。絶対。・・・ってそんな風にやってる花屋はないかもしんないけど・・・(笑)あ、いるな!いるな! きっと。花屋さんはみんな花好きだから。でも、なかにはほんとに花が好き!なわけじゃなく入ってる子もいるのよ。花屋に。
―そうなんですか?
松岡:いるいる絶対。「大好き、アタシ♡」とかいって全然好きじゃない奴いっぱいいる。本当に好きな奴ってそんなにはいないよ。でも、嫌いって言うわけじゃないんだよ。本当に(花が)好きな子って言うのは、絶対違う。
―何が違うんですか?
松岡:花を見る目とか、僕に、買ってきたものを「あれ、きれい」って言ってくる子 は絶対好き。商材として、きれいに使う子はいるけど、花がほんとに好きな子は違う。で、やっぱり上手になる子は「ほんとに好きな子」だと思う。花の特徴分かってたり、花のきれいさを見つけるのが上手な子ってことだから。
―そういうことですよね。今、この花のこの新芽のここがきれいなんですよね。。。。!!!ってことですよね。
松岡:そう!そうそうそう、よく分かってる(笑) それを見つけられる子は、仕入れでも光り輝くものを「あ、あれきれい」って 買うのと、「よし、50円で安いな、買おう」っていう違い、絶対ある気がするから。
―なるほど。それは教えたり、教わったりすることが難しいものでもありますね。
松岡:うん。ただ、きれいなものをみたり、いいものを見ると、だんだん感化されて くるから、いいものを見ていくべきだと思う。加減が難しいけどね。
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