ミイラ作りとミルラ|山下智道の世界の文化と植物紀行#10
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シャーマニズムが根強く残る土地や人と、そこで用いられる植物との関係を探求するシャーマンハーブジャーナリスト/野草研究家の山下智道さんが、世界を旅する中で出会った文化や風習と植物の関係について紹介いただく本連載。人・土地・植物の知られざるつながりを覗いてみませんか?
ミイラ作りに欠かせない樹脂「ミルラ」
ミイラ作りには、樹脂が欠かせない。
そもそもミイラの語源はカンラン科の低木から採れる赤褐色の樹脂ミルラ(Commiphora myrrh)からきているのはご存知だろうか?

ミルラが採取できるカンラン科の低木
ミイラ作りにはさまざまな説があるが、このミルラ((没薬)を用いる説が私はお気に入りである。ミルラ作りの歴史はかなり古く、世界中に点在するが、古代エジプトでは4,000年以上前からミルラが使用されてきた歴史がある。
魂が再び帰る場所とされたミイラ
古代エジプトでは、現世の姿は仮の姿であり、肉体から魂が解放された瞬間から、ある意味本来の世界へ戻り、生きとし生けるものとして魂を輝かせるものだとされていた。ミイラの棺や神殿に刻まれたり、同葬される『死者の書』には、魂が旅をして、再び肉体に帰れるように、自身の肉体を保存しておく方法や注意点が記されている。

「死者の書」に描かれた「あの世の楽園へ至るプロセス」で最も有名なのが、冥界の王オシリスによる裁判である。日本でいう、閻魔大王の逸話に近い。
この裁判では、死者の生前の行いが神々の意に沿うものであったのかが量られ、天秤の片方の皿には自身の心臓をのせ、もうひとつの皿には「真実の羽」と呼ばれる妖精の羽が置かれる。天秤が釣りあえば嘘をついていない正しい人と認められ、永遠の楽園(イアル)へ行くことができる。天秤が釣りあわなければ嘘をついていることとなり、怪物(アメミト)に心臓を食べられ、あの世(冥界)での再生はかなわなくなるとされている。
ミルラの成分

フラノオイデスマ-1,3-ジエン(Furanodiene)
ミルラなどの精油に含まれるセスキテルペンの一種で、フラン環にエウデスマ(セスキテルペン骨格)が結合した構造を持つ。フラン環に結合した3つの二重結合(ジエン)が特徴。抗炎症作用、抗菌作用、鎮静作用などがあり、風邪・インフルエンザ予防、口腔ケア、皮膚のケアなどに役立つ。特にミルラの精油の主成分の一つで、バルサム調の深みのある香りに寄与し、炎症を抑える効果から喉や鼻の不快感を和らげる効果も期待される。
クルゼレン
揮発性の芳香性テルペノイド。優れた抗菌作用や抗酸化作用を持ち、感染症対策に役立つとされる。またスキンケアでは、 肌を整え、滑らかにする効果が期待され、肌ケア製品にも使用される。

シャーマンハーブジャーナリスト/野草研究家 山下智道
生薬・漢方愛好家の祖父の影響や登山家の父の影響により、幼少から植物に親しみ、卓越した植物の知識を身につける。現在では植物に関する広範囲で的確な知識と独創性あふれる実践力で高い評価と知名度を得ている。国内外で多数の観察会、ワークショップ、薬草ガーデンのプロデュース、ハーブやスパイスを使用したブランディング等、その活動は多岐にわたる。TV出演・著書・雑誌掲載等多数。






































