編集部のこぼれ種#2「蕾」
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小さい頃から散歩して何かを拾ってくるのが好きだった。
花、どんぐり、松ぼっくり、石、お菓子のおまけ、ビー玉、おはじき、面白い色の葉っぱ。
自分だけの宝物を見つけるのが楽しかったのだ。
それは大人になった今でも変わらない。
いつもの散歩道。
一段と目を惹く色があった。
梅の木だ。
その香りもまた素晴らしく、私は吸い込まれるように梅の木の元へ行く。
それは立派な梅の木で、落ちた花びらが、咲く梅の花と同じ色の絨毯を作っている。
それにしても良い香り。
ふと足元を見ると、蕾のついた枝が目についた。
そっと拾ってまじまじと見た。
梅、ではない。
折れた部分がまだ新しい。
ぎゅっと固く閉じたそれが、心を閉ざしてしまっているように見え、なんだかひどく気になった。
私があまりにも長くそこに居たことを気にしてか、
近くで庭木を剪定していた庭師の方がこちらへやって来た。
「それ持って帰りな。咲くといいね。」
思わぬ言葉に心が躍り、
丁寧にお礼を言ったあと、大切に持ち帰った。
このあいだ骨董市で買った、古くて小さなガラスの瓶に生けてみる。
ピッタリ。
まるでこの枝のために買ったみたいだ。
固く閉じていた蕾に、最近は色がついて少しだけほぐれて来たような……
毎朝見るたびにそんなことを思う。
だんだん心を開いていく様子はとても嬉しい。
どんな花を咲かせるんだろう。
最近の小さな楽しみの一つだ。(編集部S)