吉祥寺の花屋『gente(ジェンテ)』こだわりの花のセレクトショップ

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渡邊ありさ

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公開日 :

吉祥寺に佇むフラワーショップ&スクール『gente(ジェンテ)』。この街で生まれ育ったという、主宰の並木容子さんを訪ね、お話を伺いました。

お店の成り立ち

雑誌で見たフラワーアレンジメントに衝撃を受けて

会社員時代にフラワーアレンジメントを習い始めた並木さん。そのきっかけは、美容院で何気なく手に取った雑誌に掲載されていたフラワーアレンジメントでした。その美しさに大きな衝撃を受けた並木さんは、フラワーアレンジメントを作ったフローリストの情報をメモし、美容院の帰りに、花を習いたいとすぐに電話をします。

そうしたきっかけで習い始めた花。しかし並木さんは、花を習い始めた当時の自身を「一番劣等生でした。」と振り返ります。数年後、仕事を辞めたことを機に、花の先生の元でアシスタントとして働き始め、そこで5年間修業を積みます。

やがて独立を考え始めた並木さんは日本を飛び出し、イギリスをはじめ、ヨーロッパのいくつかの国で花を学びます。

 

吉祥寺に『gente』をオープン

帰国後、並木さんは、自身が生まれ育った吉祥寺にて活動を開始。改めて吉祥寺の魅力、そしてこの街に店を構えた理由についてを伺いました。

「吉祥寺はとても不思議な街です。中央線特有の土っぽさというか、土があって木がある環境。それがきちんとベースにあって。この街に古くから暮らす方々の文化レベルはとても高いと感じています。皆さん、新しくて良いものを探していらっしゃいます。中にはパリに別荘をもっているなど、世界中で色々なものを見ている方も少なくありません。色々と教えてもらうことも多いです。なので、そうした人たちが見たこともないものを提案できるレベルの花屋でいたいですね。この吉祥寺の街で、花屋ができて幸せだなといつも思っています。」

 

『gente』の花

ひとつひとつが、こだわりの花

仕入れの際、具体的にどの花を仕入れるというイメージを固めて市場に向かうことはないと言います。市場に行き、ぱっと目が合う花があるのだと言います。淡い色味の花、香り高い花、個性的な形をした花。いずれも、繊細さの中に力強さを感じる、特別なこだわりの花です。そんな『gente』は、まさに花のセレクトショップ

「花って、枯れてしまいます。でも私は、後腐れなく消えていくところが切り花の良い所だと思っています。根を張って地球と繋がっているときがもちろん一番良いのでしょうけど、それをあえて切って、飾ることで、だんだん花が開いて、花びらがはらはらと落ちて枯れていく過程を見守ることができる。最後の散り際を目の当たりにできて、じゃあね、またねと思える。それを見届けられるのは花を買って帰った人だけなんですよね。すごいことですよね。花が咲いて枯れていく過程は人生を同じだと思います。また、何と言っても花を買って帰る日って、すごく嬉しくないですか?すごく素敵な自分になれたような感覚。あの高揚感を是非多くの方に味わってもらいたいです。」

と、生花の魅力について教えてくれました。

 

ナチュラルでシックでモダンな花を

『gente』を立ち上げた際に、テーマを‟ナチュラルでシックでモダン”と決めた並木さん。花そのものの良さを活かし(ナチュラル)、大人っぽい可愛らしさを要素として取り入れ(シック)、いつも最先端でありたいという想い(モダン)が込められています。

「いつも最先端でありたいと思っていますが、今のモノではなく半歩くらい先のものを提案したいと考えています。でもそのためには自分が5歩くらい先を行かなければいけないんだなと思っていて。なるべく色々な情報が頭に入るように耳を広げていたいですね。そうして最先端を知ったところで、それをただ真似するのではなく、今この現状なら自分にどう置き換えられるかを考えています。」

 

このように『gente』の世界観を築き確立してきた並木さん。ブーケやアレンジメントをつくる際、目的やシチュエーション、どなたに贈るのか、また時には、持っていくときは車か電車かなど(!)、お客様に様々なことを質問します。

また、お芝居やミュージカル等の楽屋花を用意する際にも、その俳優さんがどのような役を演じられるかなどを出来るだけ調べると言います。これを演じてこういう心境で楽屋に帰ってくるかもしれない。ならばこんな花!などとシーンを妄想をし、イメージを膨らませてから、その方のための花を紡いでいくのです。

 

全国の生産地を巡って

仕入れる花の産地や生産者さんについても重視される並木さんは、15年以上全国の生産地を巡っています。日本の生産現場を見たい、そして誰がどんな場所で花を作っているのかを知りたいという想いから、市場の方に連れて行ってもらうのだそうです。

生産地を巡ることは、お客様のイメージに沿う花をつくるためのベースにもなっていると言い、その理由を語ってくださいました。

「ハウスに入った瞬間、わーって花たちが手を振っているように見えるときがあるんですよ。天使が飛んでいるように見えるときが。絶対にいないんですけど、小鳥のさえずりが聞えるような気がして。実際、小鳥がハウスにいたら大変なことなんですけど(笑)。そういう花ってやっぱりすごいんですよね。地力というか、パワーがある。ここにきても語りかけるような感じがあるんです。また、その時の生産者さんの奥さんの大笑いした声や、パートさんたちが笑いながら皆で花を切っていた様子、山に日が沈んでいく情景などが、すごく印象に残ってるんですね。

そして、ブーケやアレンジメントを作るときに、あの笑顔の人の花を入れてあげようとか、夕日が沈んでいくときのこの色がシックですごく素敵だったとか、生産地で出会った人や情景が思い浮かびます。

 

伝えたい想い

日本にもっと花を愛でる文化を

日本人がつくる花はとてもレベルが高く、世界で一番すごいと並木さんは言います。その一方で、日本の人口の中に、花を愛でる人がまだまだ少ないことが残念だと感じているそうです。

「イギリスのコロンビアロード・フラワーマーケットを始めて訪れたとき、ずらーっとたくさんの花が並んで、人もいっぱいいて、本当にそこには天使が飛んでいましたね。天国だと思いました。皆さんすごく楽しそうに花を買っていて。みんな花が好きで、花が好きな人がこんなに集まっている!なんて素敵!と、もう涙が止まりませんでした。」

と、イギリスのマーケットでの心震えるエピソードとともに、日本の花文化に対する想いを教えてくれました。

 

オーガニックの植物に注目

かつてイギリスで、オーガニックの植物に対するあまりにも日本と異なる意識の違いを目の当たりにしたという並木さん。『gente』店内にも、ふんわりと束ねられたオーガニックハーブが飾られていました。

「イギリスで訪れたとある花屋の一角に、コッツウォルズのオーガニック畑で作られた花だけを売っているコーナーがあり、そこにオーガニックブーケが並んでいました。いずれも小さなブーケでとても高価だったため、こんなの買う人いるのかな?と、思ったのですが、どんどん買っていく人がいたんです。イギリスにはこんな文化があるのだと驚きました。誰が触っても害にならない自然のものを、しっかりと買って飾るという意識が素晴らしいなと。」

食に対してはオーガニックの意識が強くなってきている日本。花や植物に対しても、オーガニックのものを意識してみてほしいと並木さんは願っています。

 

『gente』のモノ

フランスの作家S.G.コレットの著書に魅了されたという並木さん。そんな並木さんご自身もいくつかの花に関する本を出版されています。もちろんこれらは『gente』で購入が可能です。

 

店内には『gente』の花がぴったりな可愛らしい花器などの雑貨も取り扱っています。

 

さいごに

お客様だけでなく、花の生産地にも目を向け続ける並木さん。さいごに、これからの『gente』について伺いました。

「花に関することは、色んなことを知りたいんです。全ての事に対して関わりたいと思うんですよね。そして今、色々な方に草花をつくってもらっているんです。好きな苗ものを切り花にしてもらったりしています。そうした普通の花屋さんには置いていないようなもの、そして旬のものがいつもあるような、そういう意味でもスペシャルなお店でありたいですね。懐かしいものも新しいものも含めて、自分でなければできないと思うことをやっていきたいと思います。」

並木さんとゆっくりおしゃべりをしながら選んだ花を抱えて歩く帰り道。ひとつひとつの花が愛おしくて、つい、ぎゅっと抱きしめたくなってしまいます。愛をこめてつくられた花を、愛をこめて売る人。その温もりが詰まった『gente』へ、是非訪れてみてください。

 

『gente』のショップ情報はこちら!

gente

  • 最寄駅 : 吉祥寺駅
  • アクセス : 吉祥寺駅北口から徒歩5分
  • 住所 : 東京都武蔵野市吉祥寺本町2-24-8 SUNO blanca 1F-W

生まれてはじめて花屋に入る時のドキドキ感を憶えています。
目的もなく、ただ「きれい」というだけで花屋に入っていくことのためらいを憶えています。1本の花の値段を聞く時の申し訳ないような気持ちを憶えています。だから、私が花屋になる時は、誰でも気軽に入れるような店にしたいと思っていました。たった1本の花をおうちに連れて帰りたいというお気持ちを、そっとフォロー出来るような、そんな店でありたいと思っていました。何も買わなくてその空間に身を置いてまた元気になれる、そんな店でありたいと思っていました。
そして、花屋になって20年以上を経た今、ジェンテはジェンテだからこそのご提案をする花屋でありたいと思っています。特別でとっておきの花をご提供出来る花屋でありたいと思っています。もちろんどなたにもお越しいただける場所であるということは変わらずに、ジェンテに立ち寄り感じた幸福感が少しでも長く続くような、スペシャルな花屋でありたいと思っています。
ジェンテは花のセレクトショップです。ジェンテの世界観をあらゆる手段でお伝えして行きたいと思います。

 

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渡邊ありさ

大学では美術史、アートマネジメントを専攻。卒業後は広告業界に従事しつつ、花好きな母親の影響を受けフラワーアレンジメントを学ぶ。趣味の旅行で国内外の花屋を巡り、花との関わりについて様々なインスピレーションを受け、現在は、花・植物との暮らしの豊かさと、そこに携わる人の想いを広く伝えるべく日々奮闘。LOVEGREENでは、お花屋さんを取材した記事を主に作成しています。

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