自然と人間との関わり合い|二宮孝嗣の「自然・植物よもやま話」⑪
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世界のフラワーショーで数々の受賞歴をもち、庭・植物のスペシャリストであるガーデンデザイナー・二宮孝嗣さんによるコラム連載「自然・植物よもやま話」をお届けします。第11回目は「人類の進歩と自然との関係」について、二宮さんと一緒に考えてみましょう。
目次
植物と人類の歴史

地球上でチンパンジーから人類が分かれて約700万年、現人類がアフリカの大地に現れたのが約400万年前とも200万年前とも言われています。これらの年代に結構な幅があるのは、人骨の化石が非常に少ないことが原因で、まだまだはっきりとはしていません。
一方、被子植物が現れたのが1億4000万年前だと言われていますので、植物に比べて人類はまだまだ新参者です。人類は、その適応範囲の拡大で脳の容量を増やし、感受性を高めるように進化してきました。対して、植物は昆虫や鳥類、その他の生物との共存を図って進化してきました。どちらもより効率良く子孫を残せるように、さまざまな手法を駆使し現在に至っています。
人類は「太陽エネルギー変換手法」を手に入れた

かつて葉緑素(生産者)が行う光合成は、地球上で唯一の生産手段でした。
6CO₂ + 6H₂O ⇔ C₆H₁₂O₆ + 6O₂
左側から右へは光合成、右から左が酸化エネルギー反応(生命活動)
植物が光合成で作った炭水化物を、植物が作った酸素を使って燃焼してエネルギーに変えることで、ほぼ全ての生命(消費者)がこの地球上に存在しています。
しかし近年、人類は太陽光パネルを使って光エネルギーを電気エネルギーに変換利用する術を作り出しました。地球上で約30億年前にシアノバクテリアによって光合成が始まり、唯一無二の生産手段であった光合成。それに頼らない「太陽エネルギー変換手法」を人類は手に入れてしまいました。
現在、メガソーラーパネルはそれを設置することで、設置場所によっては景観破壊と環境破壊を起こしています。太陽光エネルギーの変換手法としては、ペロブスカイトが注目を集め、これは今のところメガソーラーシステムに比べて遥かに環境、景観共に優しい手法なので、今後はこちらに向かっていくのでしょう。この分野は日進月歩以上に凄まじいスピードで進歩していますので、近い将来もっと効率の良い環境負荷の少ないエネルギー変換システムができてくると思われます。
電磁波が生きものへ及ぼす影響は

一方、移動通信システム(携帯電話)の手段は1980年の1Gから始まり、現在は5Gまでその情報伝達量が加速度的に増加しています。
それに伴い、その電磁波がさまざまな生命に影響を与えています。現在、昆虫類をはじめ多くの生命の大量絶滅が叫ばれていますが、人類による生育環境の破壊だけでなく、この通信手段が発生する電磁波が昆虫をはじめとする小動物にさまざまな影響を与えていると言われています。昆虫をはじめ、鳥たちも自分の移動手段の拠り所の地球の持つ地磁気により方向を定め、渡りをしたり帰巣をしていますが、人間の発する携帯電話の電磁波が彼らの方向性を狂わせ、巣に帰れなくなったり渡りの方向がわからなくなったりすることが報告されています。
小動物・虫・鳥類が激減している

皆さんの周りを見回してみてください。アリの姿を見つけられますか? また蚊やハエもほとんど見かけることがなくなってきました。完全に食物連鎖の底辺にいる小動物たちが激減したことにより、その捕食者である昆虫やクモ類、またその上の鳥類まで数が激減しています。植物食の昆虫や鳥類はまだ少しは見かけることができますが、昆虫食のものはほとんど見かけることができなくなってきました。
僕の農場は山あいの小さな谷間にあるのですが、あきらかに3G普及以降、赤トンボの数が減り、電線に張っているクモの数も減りはじめ、今ではかつては何百と群れをなして飛んでいた赤トンボもほんの少ししか見かけなくなってしまい、電線に張っていたクモの巣も昨年は全く見かけませんでした。
植物は種を保存することでまた再生することは可能ですが、昆虫や鳥は一度途絶えてしまうと二度と再生はできません。虫媒花の植物は訪花昆虫がいなくなれば種子ができなくなり、次の世代は生まれてきません。今、僕は何とかこの解決策を講じなくてはいけないのではと思います。
人間はどうすべきなのでしょう

しかし、携帯電話の無い生活はもう無理だと思われるので、もう少し生命にやさしい周波数の電磁波を探すとか、違った情報伝達の手段を考えるとかしなければ、近々人類とそれに関わって生きる動植物だけが生き残れる地球になってしまうかもしれません。
我々が作り出した現在の移動通信システムを根本的に見直さないと、次世代に自信を持って引き渡せる地球ではなくなってしまうのではないかと思います。ひょっとするとかなり近い将来、虫媒花植物は全て消え去り、風媒花植物だけが生き残る、2億5000年前の昆虫が現れる前の地球になってしまう可能性があります。もしそうなったら、人類はどんな姿になっているのでしょう?
あくまでも今回のことは僕の個人的な考えですので、間違っているかもしれませんが、僕が今感じていることを少しでも皆さんと共有できればと思い書きました。次回は人と地球(植物)は共存できるのか? を考えたいと思います。
▼二宮孝嗣さんのインタビュー記事はこちら

二宮孝嗣(にのみや・こうじ)
ガーデンデザイナー、樹木医。
静岡大学農学部園芸学科卒、千葉大学園芸学部大学院修了。
1975年からドイツ、イギリス、ベルギー、オランダ、イラク(バグダッド)と海外各地で活躍の後、1982年に長野県飯田市にてセイセイナーセリーを開業。宿根草、山野草、盆栽を栽培する傍ら、飯田市立緑ヶ丘中学校外構、平谷村平谷小学校ビオトープガーデン、世界各地で庭園をデザインする活動を続ける。
1995年には世界三大フラワーショーのひとつ、イギリスのチェルシーフラワーショーで日本人初となるゴールドメダルを受賞した。さらに、オーストラリアのメルボルンフラワーショー、ニュージーランドのエラズリーフラワーショーと、世界三大フラワーショーのゴールドメダルをすべて受賞、世界初となる三冠を達成した。ほかにも世界各地のフラワーショーに参加、独自の世界観での庭園デザインで世界の人々を魅了し、数々の受賞歴をもつ。
樹木医七期会会長、一級造園施工管理技士、過去に恵泉女学園、岐阜県立国際園芸アカデミー非常勤講師。各地での講演や植栽・ガーデニングのセミナーなども多数。著書『美しい花言葉・花図鑑-彩と物語を楽しむ』(ナツメ社)はロングセラーとなっている。










































