暦とガーデニング|ツバキ、キンセンカは立冬に咲く?

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みなさんは、「暦(こよみ)」をガーデニングに活用していますか? 暦には、「二十四節気」や「雑節」と呼ばれる季節の区切りがあり、農作業や生活の目安になってきました。11月の二十四節気には「立冬」と「小雪」があり、季節はいよいよ冬の入り口です。

目次

暦の基礎知識

暦は中国から朝鮮半島を通って伝わり、飛鳥時代の推古12(604)年に日本初の暦が作られたとされています。当時の暦は「太陰太陽暦」で、月の満ち欠けをもとにして1か月を決めていました。

この太陰太陽暦は明治の初めまで長く使われましたが、近代化を進めるため西洋に学んだ明治政府が太陽暦の導入を決定。太陽暦とは、地球が太陽の周りを一回りするのにかかる時間を1年とする暦です。

太陰太陽暦がいわゆる旧暦、太陽暦が新暦です。日本の暦が旧暦から新暦に変わったのは明治5(1872)年のことでした。

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新暦で起こった混乱

二十四節気

この旧暦から新暦への移行で、現代にも続く混乱(?)が生まれました。旧暦が使われていたのは明治5年12月3日まで。その翌日が、新暦の明治6年1月1日となったのです。ほぼ1か月のずれがここで生じました。

農作業の目安となる二十四節気は旧暦の日付のままですから、季節感にずれが起こりました。もともと、暦が生まれた中国と日本では気候も違い、季節感のずれはありました。それが、さらにずれたわけです。

例えば、秋を感じ始める「立秋」の節気は8月上旬ですが、旧暦の8月上旬は新暦でいえば9月上旬にあたります。確かに9月に入れば秋を感じますが、新暦を採用した日本の8月上旬はまだ夏真っ盛りなのです。

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冬の気配、感じますか?

紅葉

2024年の立冬は、11月7日からの15日間です。立冬は、冬の気配を感じ始める節気のこと。例年のこの時期は、太平洋側の暖地に住む方であれば、柿を食べながら「そろそろ紅葉だな」と秋を満喫している頃です。

立冬も立秋と同様に、日本人の季節感には1か月先の12月上旬のほうが合っていますが、暦を変えるわけにもいきません。ガーデニングを楽しむ方は、二十四節気を次の季節への準備期間と考えるとよいでしょう。

具体的にその時期何を楽しむかは、「七十二候」を参考にしましょう。七十二候は、二十四節気のそれぞれを3つの期間に分けたもの。これも中国発祥ですが、日本では独自の七十二候がつくられました。

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季節感は七十二候で

Adobe Stock 山茶花

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立冬の期間の、日本の七十二候は次の3つです。

初候 山茶始開(つばき はじめて ひらく) 11月7~11日
次候 地始凍(ち はじめて こおる) 11月12~16日
末候 金盞香(きんせんか さく) 11月17~21日

※日付は2024年の場合

七十二候は自然の風物や現象を取り上げた名前が付けられていて、この期間には花が2つも登場します。でも、ちょっとおかしいと思いませんか? 「つばき」と「きんせんか」が、この時期に咲くなんて・・・。

実はこの「山茶(つばき)」と「金盞(きんせんか)」は、現代の植物の分類でいえばツバキとキンセンカとは別の植物なのです。それではこの山茶と金盞、本当はどんな植物なのでしょうか?

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立冬の山茶はサザンカ

山茶花

山茶花

山茶(つばき)は、園芸の好きな方ならご存知でしょう。中国ではツバキ類全般を山茶と書きます。ツバキ属には葉や茎をお茶にするチャノキがあるため、「茶」の字があてられたと考えられています。

日本ではこの山茶の字を使って、ツバキ属のサザンカのことを「山茶花」と書きました。漢字の読みでいえば「さんさか」。それが「さざんか」となったのだとか。立冬の頃に咲くのは、このサザンカです。

サザンカの主な品種は10月~12月、晩秋から冬にかけて開花します。一方のツバキは、代表的な品種「侘助(わびすけ)」などで12月~翌年4月。「椿」という漢字の通り、早春の花なのです。

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金盞花と金盞

冬知らず

カレンデュラ・冬知らず

もうひとつの花、立冬の末候にある「きんせんか」の正体は何でしょう? こちらも漢字にヒントがあります。きんせんかは、「金盞花」ではなく「金盞」。この2つは、似ても似つかない別の植物です。

金盞花と書くのは、ガーデニング好きな方におなじみのキンセンカです。カレンデュラやポットマリーゴールドなどの別名でも知られていますね。オレンジ色の元気な花は、庭を明るく彩ってくれます。

ただし、キンセンカの花の最盛期は3月~5月頃。宿根タイプのカレンデュラ「冬知らず」といった12月頃から冬にかけて咲いてくれる品種もありますが、一般的なキンセンカはやはり春の花です。

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金盞香はすぐそばに

二ホンスイセン

日本水仙

金盞は、庭や公園の木陰や、道端でも私たちの身近でよく見かける花のことを指します。放っておいても毎年球根から芽を出し、しとやかに咲く花。そう、金盞香はスイセンが咲き始める姿のことなのです。

スイセンは昔、金盞銀台(きんさんぎんだい)とも表現されました。銀の台=白い花被に、金の盃=黄色の副花冠が乗る花の様子から付いた名で、その金盞が香る=咲くというのがこの七十二候の由来です。

金盞香はキンセンカと考えるべきという異論もあります。スイセンの咲き始めは品種や地域によって11月中旬~12月。盛期は立冬より後になりますが、冬の花と考えるとスイセンと考えるのが妥当でしょう。

冬の寒さが始まり、花が少なくなった野外で、ふと目に留まるのはやはりサザンカやスイセンです。北風に吹かれても強く咲き続ける花の姿は、寒さに背中を丸めがちな私たちの心をほっと温めてくれます。

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