都市緑化フェアよこはま「日本のこころー庵(いおり)のある庭ー」株式会社植藤さんにお話を聞いてきました!

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小野寺葉月

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6/4で閉会になった都市緑化フェアよこはまでは「もてなしの庭」をテーマとして象の鼻パークに各企業ブースの展示がありました。今回、(一社)日本造園建設業協会神奈川県支部で出展されたお庭について、実際にデザイン、設計施工を担当された株式会社植藤さんにお話を伺うことができました。

植藤さんは神奈川県相模原市にある今年で創業87年の老舗植木屋さんです。相談役の石川龍二さんと、代表取締役の石川正典さんにお話を伺ってきました。

 

タイトル 日本のこころ―庵(いおり)のある庭―

コンセプト

「心は丸く、行いは常に丁寧に正しく四角く」の精神で、江戸時代から使用した酒樽を庵に利用するとともに、植込みは松竹梅を調和するよう配し、日本の文化であるおもてなしの空間を表現しました。

 

—今回のお庭についてですが、「酔庵」とありますが庵には酒樽を使われているんですね。

石川龍二さん(以下龍二) 今から、、、30年、40年位前かな?近所の酒屋さんの身内が福島で酒屋さんをやっていて、誰も使わなくなったものをもらってきて今みたいな感じで茶室にしたの。でも時間が経ってぼろぼろになってたのを、今回リフレッシュした。

石川正典さん(以下正典) 酒樽もホーローになっているのでこういうものを新規で手に入れること自体難しい。

—そこで最初に茶室を造られたときは、どういう経緯で作られたんですか?

龍二 私の先代がちょうどこの道に入って50年の記念に作ったものでした。先代もアタシも飲んべえなんですよ。だいたいこの酒樽くらい飲んだんじゃないかな?一生のうちにはね(笑い)。先代が「酔庵」て名前を「自分の道が開けたらこれをつけるんだ」ってずっと言ってまして。これね、金魚の。。。魚の形なんですよ。港だしちょうどいいよね。

▼金魚の形の石には「酔庵」と。夜は明かりが灯る

 

龍二 うちの先代は小学校を3年で辞めて、字も書けず苦労した人で。。。横浜に3年程奉公して。でも帰りたくて帰りたくてしょうがなくて。「あるって(歩いて)帰るならいいよ。」って言われて。

—横浜から何キロくらいあるんですか?

龍二 んー20、30km近いかな。電車も電気もなく。大山があるじゃないですか。あのへんを目指してまっつぐ歩いてったらそこに着くってんで。川もなにもどんどんまっつぐまっつぐ。わかんなくなったら木に登って。あっちの方向だっつって。猿みたいなもんでね。ほんで相模原に帰ってきた。そのあと百姓の奉公に行きまして。20歳になって、もう奉公は良いから一人で生きろと言われて。少しの味噌と塩と米を持たされて。そんで、「生き馬の目をぬく」っつう東京にね。一旗揚げるんだっつって。

 

龍二 でも字も書けない、背も小ちゃくてね。誰も相手にしてくんない。ぼーっと皇居のお堀のところに腰掛けてた。そのとき、皇居の草刈りをしてるのを見て、「あ、これだったら俺百姓奉公やってたから負けない」と。そんで親方に「やらしてください!」と言ったら「やるならやってみな」と。それでやってみたら職人さんの3倍くらい刈れたので、飯を食わせてやるから来ていいよと。それから植木屋さんになったのが始まりなんですよ。戦前で引き上げてくだすったお客さんが沢山いましたんでね。ちょうど昭和元年頃からかな。東京世田谷の用賀でやってたんですね。それが強制疎開で相模原に戻ってきた。それくらい苦労された先代なんですよ。

正典 長くなりましたが、そういう思いがあって。自分の人生や導いてくれた人たち、それを何かカタチにしたくて、この酒樽の茶室を造ったんですね。そういう思いも込めました。いろいろな出会いがありましたから。「心は丸く、行いは正しく四角く」そういう思いでね。自分の人生を表現したいというのかしらねえ。

—自分が落ちついて人 生を振り返る場所でもあり、訪ねてきてくださった方を「もてなす」場でもあり。。。憩えるところを造りたいという脈々と続いてきた想いが今回の作品のベースにあるんですねえ。

正典 うん。で、植栽についても背伸びしたっていうか、買ってきて植えたようなのは今回なにもなくて。窓辺に植え込んでいるものも、山野草で、、、その辺りにあるものを植え込んだり。あるものを、無理しないで出来る範囲の形で表現をさせてただいた。

▼カタクリの花を古木に苔とあしらった窓辺の植え込み

 

—お庭に使われているモチーフが現代の日常生活になじみがないので、一瞬「奇をてらってるのかな?」と思うのですが、お庭の前で植栽などを見ていると、花々は馴染みのあるものが殆どで。今のベースのお話を伺うに連れて、愛着がわいてきました。

龍二 この手前のはね、狸なの。

—え?あ、ほんとだ!狸ですね。あっだから徳利持ってるんですか!

▼朽木をみたてた狸さん。徳利がかわいい

 

龍二 そうそう(嬉しそう)。この徳利にもね、相模の大凧って128畳ある大凧があるんだけど、その大凧の名前が書いてあるの。この狸さんは、30年以上前に神奈川の大和水源で現場仕事があった時に、朽ち木があって。なんかこれ動物に見えるねえってことで持ち帰って来てうちの玄関においてあったの。

▼手水も亀甲竹(キッコウチク)を使ってある

 

龍二 あとこれもね、うちの荷車の車輪。つくばいは臼。つくばいの手前に置いてんのは挽き臼。そば粉とか引くやつ。これ全部家で使っていたもの。だからとくに新しく古道具を揃えたとかそんなんじゃないんだよね。苔だってさ、(敷地の)その辺からもってきたやつだから。変に浮かないで馴染んでよかった。

▼馴染んでいる苔たち
 
  

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小野寺葉月

中高短で美術を学び、卒業後観葉植物も扱う雑貨店で店長、バイヤーを担当。産後LOVEGREEN編集部で季節や庭木、虫の記事担当しつつ、説明や挿絵などで再び絵を描き始める。Botapiiでもエディブルガーデン他のイラストを担当。縁あって現在はフィリピンのセブ在住。ダイビングリゾートで広報も担当している為、海の中やマクロダイビングの世界に夢中。魚より珊瑚やホヤ、海藻など植物寄りの世界が好き。勘と勢いで生きている。

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