都市緑化フェアよこはま 自然との調和「一滴の水から」(一社)神奈川県造園業協会さんにお話を聞いてきました!

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小野寺葉月

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6/4で閉会を迎えた都市緑化フェアよこはま。象の鼻パークでは「もてなしの庭」というテーマで様々なお庭が展示されていました。今回はその中から一般社団法人神奈川造園業協が出展されていたお庭について、株式会社植定の渡部様にお話を伺いました。

作品タイトル 自然との調和「一滴の水から」

 

 

コンセプト

「植物や岩石を通って雨が浄化され、ひとしずくの清らかな水となって始まっていく自然の循環。遥か昔からの営みに感謝と畏敬を込め日本庭園の伝統技術を融合させ、庭を通して自然の美しさと大切さを表現」


渡部さんは10年程前から「庭守」という勉強塾を仲間と立ち上げ、講師の一人として活動されています。日本庭園の石組みに使う材料も会費で購入して実技練習を重点的にするなどの勉強会を実施しています。最近では休日などを使って約1年半ほどかけて神奈川県立相模原公園の日本庭園を修復工事し、現在もその庭の維持管理を無償で続けているそうです。

▼存在感のある石組み

 

―今回出展することになった経緯を教えてください。

一般社団法人神奈川造園業協の小山会長に庭園部会と教育研修委員会との合同で参加してはどうかとご提案頂き、任せていただいた経緯で図面設計を自分が担当しました。庭守の活動で練習してきた石組、飛び石、延段などを組み込み、石積の成果を発展させた形で発表できる良い機会になりました。また植栽は象の鼻テラスの共通テーマである「もてなしの庭」を意識し、来場される方が庭を見ることで清らかな気持ちになれることを意識してデザインしています。落葉樹を使い四季を感じられるようにしたり、花はあまり多く使わず、ちらほら咲いている程度の景色にしました。

▼植栽の様々な緑色が生える石組み

 

―石積みの作業など当日の施工はいかがでしたか?

会場で組む前に同じスペースをつくって4回程リハーサルをしました。会場の重量制限などもあったので5日間で完成するか心配だったのですが、庭守のメンバーと神奈川造園業協の教育研修委員会で募集した2名が参加してくれ、チームワークよく作業を進められました。

 

―今回のテーマについて教えてください

今回造るにあたって、自然について、庭について、、、自分が普段考えていることを表現したかったんです。自然のうつくしさ、植物のうつくしさを表現したかったことはもちろん、人間も地球に生きる仲間であり、自然と共に生きてきた。しかし、人間は地球をないがしろにして自分たちの良いように暮らしすぎているんじゃないか。いつかしっぺがえしというか、跳ねっ返りが来るんじゃないか。「一滴の水から」というテーマは、降った雨が地中を通り濾過された一滴の」水になって地表に現れ、やがて川となって海に注ぎ海の生態系が維持され、また水蒸気となって、それが雲になり雨を降らせる。この循環は人間が造ったものではなく、自然にもともと備わっている力だよね。それって改めて考えてみるとすごいことだなと。人間が生きている環境は多様な植物がそろってはじめて生態系を成す。この庭ではそれをまず表現したかった。また、この庭を構成するものにはゴミが一つもありません。解体してすべて再利用できるものでできています。

▼人工物の道しるべは植物に囲まれて風化していく過程のようにみえる

 

「文殊院道」の道しるべと、祠の中の手水鉢だけ、人工物ですがそれも欠けがあったり、修復されたものを敢えて使いました。人間には到底かなわない自然の景色を表現しています。そういった「つくりものではない自然」を日本庭園の技術を使って庭園としての空間で完成させています。

▼敷石の隙間も苔が美しい

 

飛鳥奈良時代には曲水庭園、平安時代には寝殿造り庭園、室町時代には枯山水庭園と変化してきた日本庭園の在り方は時代が進むに連れてどんどん薄くなってきていて、江戸時代は大名庭園に代表される池泉回遊式の庭園となり、明治大正昭和平成は変化がなく続いている。庭は建築はもちろん、宗教や哲学と密接な関係を持つものです。日本人の庭に対する精神性が薄まって来ることで、同時に文化的にも薄まってきているような気がしている。そんな現状に疑問もあって、今回は自分が心に思っている庭に対する精神性を形にしたかったということもあります。

 

―中心の石組が印象的ですよね

▼祠の中には手水鉢があしらってある

 

中心に祠のようにもみえる石組。この祠の中に入ると、ものすごく心細くなる。そこまで大きな石ではなく、3つの石を組んだだけの祠だけど、石の厚みもあるため中に入ってみると外の音が余り聞こえなくなります。だから静かで、暗くて、、、ともすると石が落ちてきてつぶされるんじゃないかという恐ろしい想像なんかがどんどん出てくる。大きな石を目の前にすると、実際人間は恐怖とか、畏怖とか、畏敬とか・・・「なにかよくわからないけどこわいもの」そんな感覚を持つと思う。大きな木でもそうだけど「人間は自然にかなわない」というか。人間が如何に小さく脆いということを再認識するというか。そういうことを形にしてみたかった。山登りが好きで、山に登りながら自然と対峙するとそんなことをよく感じます。

お話を聞いて

自然にたいする畏怖や畏敬、日本庭園に対する想いを形にされた庭園、「自然との調和”一滴の水から”」。見ていると自らの気持ちを省みるような静かな気持ちになってくる素晴らしい庭園でした。渡部さん、ありがとうございいました!

 

 

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小野寺葉月

中高短で美術を学び、卒業後観葉植物も扱う雑貨店で店長、バイヤーを担当。産後LOVEGREEN編集部で季節や庭木、虫の記事担当しつつ、説明や挿絵などで再び絵を描き始める。Botapiiでもエディブルガーデン他のイラストを担当。縁あって現在はフィリピンのセブ在住。ダイビングリゾートで広報も担当している為、海の中やマクロダイビングの世界に夢中。魚より珊瑚やホヤ、海藻など植物寄りの世界が好き。勘と勢いで生きている。

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