「尽くしすぎた女」の末路 〜ラナンキュラス・ラックスの名前から見るギリシャ神話〜|ぴーちゃんの植物雑記帳#1

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マンションで植物のある暮らしをおくる様子を、独自の感性で切り取る投稿がInstagramで話題のpichan_desuさん。記念すべき連載第1回は、近年人気急上昇中のラナンキュラス・ラックスについてです。てっきり育て方の話かと思いきや、届いた原稿には壮大なギリシャ神話の人間模様(神模様?)がつづられていました。ギリシャ神話の神々に想いを馳せて一喜一憂しながら楽しむラナンキュラス・ラックス。「こんなお花の楽しみ方もありますよ~」というお話です。

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マンションで観葉植物やベランダガーデニングを楽しむ様子がInstagramで人気。植物の育て方・飾り方から、インスタとは思えない長文の植物コラムまで、ネタが渋滞気味の「自称植物系アカウント」。最近はバラ沼にはまり中。第1期LOVEGREENアンバサダー。

目次

近年人気急上昇中!秋植え球根のラナンキュラス・ラックス

はじめまして、「ぴーちゃん」と申します。マンションで植物を育てながら、あれでもないこれでもないと思い浮かぶことをInstagramで投稿していたところ、連載をすることになりました。なにゆえ不定期ですのでゆるりとお楽しみいただければと思います。

さて、今回はラナンキュラス・ラックスについてです。

3年ほど前から育てていますが、毎年ツヤツヤと輝く花を花束のように沢山咲かせてくれます。カラーバリエーションも豊富で、それぞれにギリシャ神話にちなんだ名前がついてるのも魅力的です。

人気の花色「アリアドネ」。名前の由来となった女性が辿る運命とは?

シリーズ1番人気の「アリアドネ」は、淡いピンク色がとっても可愛いです。

この名前の由来となったのは、愛する男に尽くし、家族や国を捨て、数奇な運命を辿った、ギリシャ神話に登場する女性「アリアドネ」。

 

画像出典元:パブリックドメインR:フリー画像美術館

19世紀イギリスの画家・ウォーターハウスが描いたアリアドネの絵です。彼女はまだ半分眠りの中にいるのでしょうか。

とっても美しい絵ですが、私はこの絵を見るたびに胸がギュッと痛みます。
美しいけれども、残酷な絵でもあるからです。

なぜ残酷だと思うのか? 今からお話ししますね。

勇敢な青年に一目惚れしたアリアドネ

ギリシャ神話に登場する牛の頭を持つ巨人、ミノタウロス

アリアドネはクレタ国の王女。この国には頭は牛、体は人間という怪物ミノタウロスが閉じ込められている迷宮があり、クレタ王はミノタウロスの「餌」を用意するために、定期的に生贄たちを集め、この迷宮に送りこんでいました。

ある日、生贄として送られてくる若者たちのなかに「テセウス」という青年がいました。実はこの男、ミノタウロスを倒すため自ら生贄に志願した、とある国の王子。アリアドネはこの勇敢な男に一目惚れしちゃいます。

「彼があの迷宮に入ってしまったら、二度と出られない。そして確実にミノタウロスの餌食になるわ。なんとかして助けなきゃ!」

アリアドネはテセウスに、迷宮の入り口に糸玉の先端を結びつけて、それをほどきながら進み、糸を辿って帰るように密かに助言をします。

その後テセウスは見事ミノタウロスを打ち破り、無事迷宮を脱出!

アリアドネは惚れたテセウスについていくため、国を捨てて共に船に乗り込みます。

国を捨てテセウスについていくアリアドネ。だが!

若き男女を乗せた船はある島に辿り着きましたが、その島にはお酒が大好きな陽気な男「ディオニュソス」(通称バッカス)という酒の神様がいました。

この酒の神がアリアドネのことを気に入って、

「いい女だな。その女、俺によこしな。俺は神だぞ」

と、密かにテセウスを脅したのか、そもそもテセウスがアリアドネのことをあまり好きじゃなかったのかなんなのかはわかりませんが、なんとテセウス、アリアドネが寝ている間に彼女を島に置いて出航してしまった……!

冒頭のウォーターハウスの絵は、まさにその場面を描いているのです。背景には出航したばかりのテセウスの船が!

絵に描かれている彼女は、おそらく目を覚ました後に、愛する男に置いて行かれたことに気がつくのでしょう。幸せそうにまどろむ彼女がこの後直面するであろう絶望を想像すると、胸が痛みます……。

その後アリアドネはどうなったのか?

画像出典元:ルネサンスの巨匠・ティツィアーノが描いたアリアドネとディオニュソス(別名バッカス)

置き去りにされ落ち込んでいたところ、突然いろんな人が現れてヒェッ!となっているのが上の絵の左側にいるアリアドネ。絵の真ん中でひょーいと飛んでいるのがディオニュソス(バッカス)です。

この酒の神は、「落ち込まないで!結婚しようよ!」とアリアドネに求婚。2人は夫婦になったそうです。

アリアドネー!テセウスなんか忘れて幸せになってて欲しいー!

バッカスはちょっと酒臭いかもしれないけど、一応神様だから!玉の輿ー!

ちなみにテセウス、最後にはアリアドネの妹と結婚するみたいですよ。そんなこと許せます??

ラナンキュラス・ラックスには「テセウス」もある

ラナンキュラス・ラックスシリーズにはテセウスという種類もあるみたいです。アリアドネとテセウスを一緒に育ててみる……なんて、どうでしょう?

濃すぎるギリシャ神話の登場人物たち

ギリシャ神話にはこのアリアドネのように、愛する男のために国を捨てた女性が他にもいます。それがメディアという女性。

画像出典元:「イアソンとメディア」/ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス 1998年J.WWaterhouseより

険しい顔で毒を調合しているのが、メディアという女性。その様子を見ているのが彼女が愛してしまった男・イアソン。

メディアはとある国の王女。国にやってきた青年に恋をし、その男のために家族や国を捨てて逃亡する……と、ここまではアリアドネの物語とほぼ同じ。

ただ、メディアの場合はひと味違った。

〜メディアのここがすごい!〜

①惚れた男・イアソンと共に船で逃亡する際に、ひそかに連れてきていた幼い実の弟を殺害し、その遺体を刻んで海に投げ捨て追手を撹乱する

②逃亡後にイアソンとの間に子が生まれるが、イアソン、浮気。「私は身を引きます。でもせめて子どもたちだけは大切に育ててください」と、しゅんとした女を演じるも、イアソンと新妻の結婚式の日に魔法で新妻を惨殺。(ついでに新妻の父も巻き込まれて死亡)

③結局自身とイアソンの子らも殺害し、追ってきたイアソンに子らの遺体を見せつけながら国外へ逃亡

④逃亡先の国の王と結婚する

もう…お腹いっぱいです……。

ちなみにメディアの再婚相手の王の息子が、アリアドネを置き去りにしたテセウス。ギリシャ神話、みんなキャラが濃すぎますね。

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ギリシャ神話に想いを馳せてラナンキュラス・ラックスを愛でてみませんか?

と、今回はラナンキュラス・ラックスの名前の由来となったギリシャ神話の悲喜こもごもをご紹介しました。

花の名前の由来も、辿っていくと意外と奥深くて興味が尽きません。ギリシャ神話に想いを馳せながら、ラナンキュラス・ラックスの美しい花姿に癒されてみませんか。

※ギリシャ神話にはいろんなバージョンがあります。今回は私が小さい頃から馴染んできたバージョンでご紹介しました。

 

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