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庭を持つ文化について考える・続編|二宮孝嗣の「庭・植物よもやま話」②

Photo by 二宮孝嗣 イギリス・ハンプトンコート

世界のフラワーショーで数々の受賞歴をもつガーデンデザイナー、二宮孝嗣さんのコラム連載。「庭」にフォーカスした「庭・植物よもやま話」の第2回目は、第1回目のテーマ「庭を持つ文化」の続編です。二宮さんと一緒に世界のお庭を訪れる気分で探っていきましょう。

目次

現在進行形の庭文化はどこに?

皆さんは、「庭」を見にいこうとする時、どこの国を思い浮かべますか?

もちろん日本、イギリス、その他は……

イタリア、フランス、スペイン、ニュージーランド、オーストラリア、カナダでしょうか?

二宮さんの写真 ベルサイユ

Photo by 二宮孝嗣 ベルサイユ宮殿

ヨーロッパでは、フランス式庭園と呼ばれるベルサイユ宮殿がとても有名です。

 

二宮さんの写真 ベルサイユ宮殿

Photo by 二宮孝嗣 ベルサイユ宮殿

丘の上の宮殿から遥か彼方まで見下ろす大きな左右対称の幾何学模様の庭ですが、これはあくまでこの宮殿の庭であり、その当時の人間の自然観の表現で、日本人が考えている生活の一部としての庭空間とは程遠いものがあります。この庭を真似て作られたのがウィーンにあるハプスブルク家のシェーンブルン宮殿ですが、これもあくまで権力の象徴であり、人々の生活に根ざした庭の概念からは遠いものになっています。

 

二宮さんの写真 北イタリア

Photo by 二宮孝嗣 北イタリア

庭として素晴らしいのは、北イタリアの湖水地方に点在する、ルネッサンス華やかなりし頃の避暑地であったヴィラ達です。

 

二宮さんの写真 北イタリア

Photo by 二宮孝嗣 北イタリア

テラス状に作られたイタリア式庭園の数々は、湖の青や遠くアルプスを望む、今でもとてもよく手入れされたヴィラ達で、訪れる人を迎えてくれます。

 

Canva画像 スペイン アルハンブラ宮殿

スペイン・アルハンブラ宮殿

スペインでは現存するヨーロッパ最古の庭園と言われているアルハンブラ宮殿があります。これはイスラム王朝が南ヨーロッパを支配していた時の宮殿であり、その後北からのキリスト教勢力に追われ最後まで維持していたのですが、ついにジブラルタル海峡を渡って北アフリカに撤退します。異教徒の宮殿ですが、あまりにも美しかったので破壊されずに今日に至ったと言われています。しかし、いずれの庭も過去のものです。

イギリス以外で現在の庭や街や個人の庭が素敵なのは、ニュージーランドのクライストチャーチやオーストラリアのメルボルンですが、ここはあくまでもイギリスからの移民の人達が作った街なのです。

やはり、現在進行形の庭文化を持つ国といったらイギリスでしょう。厳密に言えば、ここにはスコットランドやアイルランド、ウェールズは入っていません。

それではなぜ、イギリスと日本だけが庭の文化を持つようになったのでしょうか。

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イギリスと日本に共通すること

Canva画像

イギリスや日本と、他の国とを比べると、以下のような点が違うのかなと思います。

周りが海で囲まれている

地続きの国境線がないため、突然隣国から国境を越えて侵略される危険性がないことから国が安定している。

近現代に他国からの支配を受けていない

イギリスはかつて、南半分はローマ帝国の支配を受けたことがありますが、その頃は「イギリス」という国はまだ存在していなかったのです。中世以降、イギリスという国ができましたが、ナポレオンもヒトラーもドーバー海峡を渡れなかったので、侵略されたことがありませんでした。

個人の庭を楽しむ文化が定着している

日本もイギリスも「個人の庭を楽しむ文化」が定着していますが、これは世界的に見れば珍しいことです。

二宮さんの写真 イギリスハンプトンコートフランス式

Photo by 二宮孝嗣 イギリス・ハンプトンコート フランス式

かつて、大英帝国として世界を支配し巨万の富を得たイギリスでは、国が落ち着き、領主の館(マナーハウス)が土壌の豊かなイギリス南部に多く建てられ、その周りにフランスへの憧れから生まれた幾何学的なフォーマルガーデンや、世界中にプラントハンターを送り出した成果が表れた数多くの庭が残され、現在に至ります。

 

Canva画像

また、その傍らで、そこで働く小作人達が野菜や花を楽しんだコテッジガーデン(小作人の庭)ができました。

 

二宮さんの写真 桂離宮

Photo by 二宮孝嗣 桂離宮

一方、日本は、宗教観から極楽浄土を表す庭が造られてきました。それを日本の文化として発展させて現在に至っています。

日本もイギリスと同じく、島国であることから他民族による大規模な侵略や統治を受けることなく、ゆっくりと安定した独自の文化を発展させてきました。

現在も、この2カ国だけがおそらく、世界中の人達から憧れを持って認識されている庭を持つ国だと思います。そう考えると、いかにこの2カ国が例外的なのかお分かりいただけるのではないでしょうか?

次回はまずヨーロッパの庭の歴史を僕なりに紐解いてみたいと思っています。

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▼二宮孝嗣さんのインタビュー記事はこちら

photo by 二宮孝嗣 阿智村の園原

二宮孝嗣(にのみや・こうじ)

ガーデンデザイナー、樹木医。

静岡大学農学部園芸学科卒、千葉大学園芸学部大学院修了。

1975年からドイツ、イギリス、ベルギー、オランダ、イラク(バグダッド)と海外各地で活躍の後、1982年に長野県飯田市にてセイセイナーセリーを開業。宿根草、山野草、盆栽を栽培する傍ら、飯田市立緑ヶ丘中学校外構、平谷村平谷小学校ビオトープガーデン、世界各地で庭園をデザインする活動を続ける。

1995年には世界三大フラワーショーのひとつ、イギリスのチェルシーフラワーショーで日本人初となるゴールドメダルを受賞した。さらに、オーストラリアのメルボルンフラワーショー、ニュージーランドのエラズリーフラワーショーと、世界三大フラワーショーのゴールドメダルをすべて受賞、世界初となる三冠を達成した。ほかにも世界各地のフラワーショーに参加、独自の世界観での庭園デザインで世界の人々を魅了し、数々の受賞歴をもつ。

樹木医七期会会長、一級造園施工管理技士、過去に恵泉女学園、岐阜県立国際園芸アカデミー非常勤講師。各地での講演や植栽・ガーデニングのセミナーなども多数。著書『美しい花言葉・花図鑑-彩りと物語を楽しむ』(ナツメ社)はロングセラーとなっている。

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