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「ダチュラ」と「エンジェルストランペット」の違いと見分け方

夏の夜に、甘く官能的な香りとミステリアスな美しさで、人々を魅了する「ダチュラ」と「エンジェルストランペット」。

どこか浮世離れした幻想的な姿を持つ2つの花ですが、しばしば同じものとして扱われたり、混同されたりすることがあります。ところが、よく観察してみると、その佇まいや咲き方には決定的な違いがあります。

両者の魅力や咲き方の違い、見分け方のポイントから、混同されるようになった歴史的背景、そして魅惑的な花々と長く安全に付き合うための「正しい距離感」までを詳しく解説します。

目次

違いと見分け方|天を仰ぐ「ダチュラ」と地に垂れる「エンジェルストランペット」

エンジェルストランペット

エンジェルストランペットの下向きの花

ダチュラとエンジェルストランペットは、どちらもトランペットのようなフォルムの大輪の花を咲かせますが、決定的な違いは「花の咲く角度」と「植物の形態」にあります。

比較項目 ダチュラ(Datura エンジェルストランペット(Brugmansia
分類 ナス科チョウセンアサガオ属(草本) ナス科ブルグマンシア属(木本)
花の向き 上向き(天を仰ぐ) 下向き(垂れ下がる)
花の大きさ 10〜15cm程度 20〜30cm程度(大輪)
葉の縁 切れ込み(波状の歯)があることが多い 滑らか(全縁)なことが多い
実の姿 トゲトゲのある球状の果実 紡錘形(滑らかなヘチマ状)の果実
香りのピーク 夕方〜夜間(甘い香り) 夕方〜夜間(甘く濃厚、非常に強い)

決定的な違いは「花の咲く向き」

両者を一目で見分ける最も確実な特徴は、花が空に向かって咲いているか、それとも地面に向かって咲いているかです。

ダチュラは「上向き」

花は「上向き」に開きます。天を仰ぐように開花する様子は、力強さを感じさせます。

エンジェルストランペットは「下向き」

花は枝から垂れ下がるように「下向き」に咲きます。文字通り、天使が天から吹くトランペットのように、地上に向かって優美に垂れ下がる姿が特徴です。

植物としての形態の違い|草本(一年草)と木本(低木)

咲く向きだけでなく、植物全体としての生長の仕方や性質も大きく異なります。

ダチュラは「草本」

ダチュラは草本植物であり、冬になると枯れる一年草です。茎は青々としており、1〜1.5mほどの高さまで大きくなります。

エンジェルストランペットは「木本」

エンジェルストランペットは常緑または落葉の低木です。幹が木質化し、高さ2〜4mほどまで生長します。

実や香りの違い

ダチュラ 種 AdobeStock

ダチュラの実

花の向きや形態だけでなく、実の形や香りの強さにもそれぞれ異なる個性があります。

特に実の姿は対照的です。ダチュラは花が終わり結実すると、トゲに覆われた球形の実をつけます。一方、エンジェルストランペットはトゲのない、滑らかなナスやヘチマに似た形の実をつけます。

また、どちらも「夜に強くなる甘い芳香」が特徴ですが、エンジェルストランペットは特に豊潤で妖艶な香りを漂わせます。

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なぜ混同されるの? 背景や歴史

ダチュラ2 AdobeStock

ダチュラの花

「ダチュラ」と「エンジェルストランペット」。咲く向きも形態も違う2つの植物が、なぜ今も混同されるのでしょうか。理由は、植物分類学の歴史と、園芸世界における呼び名の移り変わりにあります。

かつては同じ「ダチュラ属」だった

混同される最大の理由は、「かつては同じダチュラ属として分類されていたから」です。

過去には、エンジェルストランペット(現ブルグマンシア属)は、ダチュラ属(チョウセンアサガオ属)の一部として扱われていました。どちらもナス科特有の成分や、ラッパ型の特徴的な花構造を共有しているためです。

ところが、植物分類学の研究が進むにつれ、下向きに咲く木本性のグループが独立し、「ブルグマンシア属(Brugmansia)」として再分類されたのです。

学術的には半世紀近く前に分離されたのですが、それまでに定着していた「ダチュラ」という総称が、園芸市場や流通名にそのまま残ってしまったことが、現代の混同につながっています。

文学や医療史に刻まれた「チョウセンアサガオ」

ダチュラ1 AdobeStock

ダチュラの花

日本語では、ダチュラを「チョウセンアサガオ」、エンジェルストランペットを「キダチチョウセンアサガオ」と呼びます。この「チョウセン」は海外から渡来した珍しいものを意味しており、朝顔に似た美しい花を咲かせることから名付けられました。

チョウセンアサガオの名を日本で有名にしたのは、麻酔薬の発明で知られる江戸時代の名医・華岡青洲(はなおかせいしゅう)です。青洲は、チョウセンアサガオに含まれる成分を活用し、1804年に世界で初めて全身麻酔を用いた乳がん摘出手術を成功させました。この話は有吉佐和子の小説「華岡青洲の妻」でも有名です。

ダチュラが「神秘的な薬草」として、人々の記憶に強く刻まれることになった背景には、このような歴史があります。

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安全に育てるための「正しい距離感」と楽しみ方

エンジェルストランペットの花

ダチュラやエンジェルストランペットを育てる際、インターネットや本で必ず触れられるのが「毒性」というキーワードです。ただし、毒性を怖がりすぎてこの美しい花たちを敬遠してしまうのは、もったいないこと。

私たちが日常的に楽しんでいる園芸植物の中には、同じように毒性を持つものが数多く存在します。例えば、春を告げるスイセンや可憐なスズラン、美しいジギタリス、夏を彩るキョウチクトウ、秋のヒガンバナ、さらには身近なクリスマスローズやポインセチアも同様です。大切なのは、「過度に恐れること」ではなく、「正しく理解し、適切な距離感で付き合うこと」です。注意すべきことを理解して、美しい花と香りを楽しみましょう。

1. 口に入れない(誤食に注意する)

最も重要なルールは「絶対に口に入れないこと」です。

ダチュラもエンジェルストランペットも、葉や根、種子、花びらなど、すべての部位に強い毒性を持つアルカロイドが含まれています。ハーブや野菜と間違えて調理したり、小さなお子様やペットが誤って口に含んだりしないよう管理しましょう。特に根や種子はナスやゴボウに似ていると言われることがあるため、菜園の近くには植えないように注意してください。

2. 手入れのあとは「手を洗う」

剪定や植え替え作業などで茎を落とした際、断面から汁液が出ることがあります。この汁液にも毒性があるので、手に付いたまま目をこすったり、口に触れたりしないようにしてください。作業を行う際はガーデニング用の手袋を着用し、終わったら手を洗うようにしましょう。

3. 「花を眺める」「香りを愛でる」

庭植え|シンボルツリーとして

エンジェルストランペットをお庭の背景やシンボルツリーとして植えてみませんか。花が少なくなる夏のお庭で、一際目立つ圧倒的な大輪の花々は、見る人の目を楽しませてくれます。また、夜に強くなる甘い香りを愛でながら、夜のお庭で夕涼みというのもおしゃれな楽しみ方です。

鉢植え|スタイリッシュなスタンダード仕立て

エンジェルストランペットは生長が早いため、鉢植えで「スタンダード仕立て(下の方の枝葉を取り、上部だけこんもりと茂らせる仕立て方)」にするのに向いています。足元がすっきりするため、小さな子どもやペットの手が届きにくくなるという安全面でのメリットが生まれる他、モダンで華やかな雰囲気になります。

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天を仰いで咲く、気高くコンパクトな「ダチュラ」。地に舞い降りるように咲き誇り、甘美な香りで夜を包む「エンジェルストランペット」。

それぞれの姿と咲き方、そして個性豊かな魅力を知ることで、街角や庭園で出会ったときの喜びはより深いものになります。正しく安全な距離感を保ちながら、この美しい花たちが作り出す幻想的な世界を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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