「横山園芸」横山 直樹 / 食べられるお花”エディブルフラワー”を生産
大曽根百代
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普段聞けない生産者さんの現地の声をお届け!ボタニカルピープルの生産者さんを紹介する企画「生産者に聞く」。
今回は、食べられるお花”エディブルフラワー”の栽培をされている『横山園芸』さんの所へ取材させていただきました。
プロフィール
■名前:横山 直樹
■年齢:39歳
■場所:東京都
■生産歴:15代目
■主な生産品:エディブルフラワー、ダイヤモンドリリー、クリスマスローズ、その他原種シクラメンなど。
横山園芸さんは、ダイヤモンドリリー・クリスマスローズなどの生産で有名な生産者さんです。食べられないお花を栽培してきた横山さんが何故、食べられるお花のエディブルフラワーを生産することになったのか、とても気になります。
実際に、東京で栽培されているお花達は、どのように栽培されているのでしょうか。食べられるお花って?農薬は?味は?私も実際に食すのは初めての体験。実際どうなのか皆さんも気になりませんか?
エディブルフラワーを栽培するきっかけは何ですか?
今まで花を食べようだなんて考えなかったし、むしろ食べるなんてかわいそうだと思っていた側です。
そんな時、4年前に声がかかりまして…地元の野菜栽培仲間が東京野菜チームというのを作っているのですが、その人たちから「東京オリンピックに向けて世界の人をもてなす為、海外ではポピュラーなエディブルフラワーを料理に出したい。レストランなどから栽培してほしいと声が上がっているのでやってくれないか」と頼まれたのが、きっかけなんです。
僕自身、一年草と呼ばれる植物(パンジーやプリムラなど)は育てた経験がなかったので、まずはそこからスタートでしたね。栽培方法など、色々と試行錯誤した中で出荷できるようになったのはやっと去年からなんです。
食べられる花とは?
①まず植物体に毒がないか。
②化学農薬やホルモン剤を基本的に使用せず、野菜と同じように育てられているか。
という点で異なってきます。そしてお花にも、きちんと栄養があり、その栄養価は一般的な野菜と引けを取らないほど。美容や健康の効果に期待できる栄養が含まれています。
栽培の様子
使用している農薬について
ニーム油や牛乳、焼酎、唐辛子など口に入れても安心なものを使い、殺虫・防虫に努めます。そしてコンパニオンプランツとしてマリーゴールドを植えていました。エディブルフラワーにもなり、防虫効果もある一石二鳥の植物だそうです。
防虫ネットも利用し、ハウス内は程よく光が当たるように工夫がなされていました。
農薬を全く使用せずに綺麗な野菜やお花を作るのは、ものすごく大変な事。しかし、そこは横山さんの腕であり、試行錯誤し苦労された結果です。オーガニック栽培されているお花はすべて綺麗な状態でした。
土などによっても味は変わってくるのでしょうか?
変わりますね。土づくりから光の管理、水やりと全部に影響します。そこは野菜作りに精通しており、作り手によって美味しい野菜があるなら美味しい花も作れるはず、と、植物の本質から突いていくことで味にこだわれる様になりました。
あと、お花の品種や色によっても味は異なります。例えば、ダリアのこの品種は美味しいとか、苦いなど同じ品種でも色や種類によって違いがあるんですよ。カレンデュラ、マリーゴールドなど色素が多い方が栄養があり、味も濃い傾向にあります。
土に関しては動物性堆肥に頼りすぎると肥満体になり、虫にやられやすくなってしまうので有機肥料でじっくり育てます。
植物自体が持っているポテンシャルと作り方、この2つで味の違いが現れますね。
お花はどのように選別してるのですか?
エディブルフラワーとして生産するお花の選別についてお聞きしました。
◆まずは見た目!
料理に添えて邪魔をしない色、ニュアンスカラーのお花をなるべく選ぶようにしています。パンジーなど育種家さんと協力して今までにないオリジナルのエディブルフラワーを選別し、栽培してます。その次に味、そして日持ちするかですね。
◆その次に味!
実際に食べてみておいしいか美味しくないかをチェック。クセがある花でも、栽培の仕方によっては味を変えられるということは食べればわかります。
あとは、その植物が何の仲間なのかを調べたりもします。例えばダリアだったらキク科、食用菊やたんぽぽもキク科なのだから毒はないはず、と。ダリアはお腹壊すなどの迷信が色々あるけど、実際調べたら毒は検出されなかったんです。
◆そして採算性と日持ち!
綺麗だけど一輪しか咲かないとなると採算合わなくなるので諦めます。例としてあげるとパンジー。1株で300~400輪収穫できるんです。しかも花を摘むことによって株が大きくなりさらに沢山収穫できます。
なぜ株が大きくなるんですか?
花を咲かせて種をつけるということは植物にとって、ものすごいエネルギーを使うことになります。花が咲き切る前に摘んで、次の花を咲かせることにその体力を回すことができるんですね。花を取ってかわいそうと思うかもしれませんが、むしろ花にとってはいいことなのかもしれませんね。
エディブルフラワー7種類を紹介
実際に、生産されているエディブルフラワーを食べてみました。
▼エディブルフラワーその1「ペンタス」
蜜があるのでほんのりと甘さを感じました。
▼エディブルフラワーその2「ランタナ」
スパイシーな風味とランタナ独特の花の香りが口に広がります。
▼エディブルフラワーその3「ダリア」
一番、美味しかったです。みょうがのような薬味に利用できそうな風味があります。
▼エディブルフラワーその4「マリーゴールド」
苦みや癖もなく食べやすいお花でした。栄養価も高いそうです。
▼エディブルフラワーその5「ベゴニア」
これは驚きました。結構な酸味があり、プラムの皮のような味です。触感がよく瑞々しいのでこの季節にちょうどいいお花ですね
▼エディブルフラワーその6「バーベナ」
なんと松原園芸さんの育種されたバーベナ。蜜があり、甘みがあるお花です。
▼エディブルフラワーその7「ナスタチウム」
割とポピュラーなのではないでしょうか、わさびのような辛味のあるお花です。
どのお花も苦みやエグミは一切なく食べやすいお花ばかり。ちなみに写真はないのですが、ランの仲間のオンシジウムも頂きました。少し粘り気があってバナナのような風味の美味しいお花でした。
\料理にエディブルフラワーを添えてみました/
彩りがプラスされSNS映え間違いなし!
単に食事をするだけでなく「本当にたべられるの!?」と会話を生むことができる、ついつい写真を撮りたくなる、それもエディブルフラワーの魅力です。
このように梱包の仕方も独自で考えたそうです。
綺麗に見せ植物も傷まない方法でお届けされます。
どこでエディブルフラワーを購入できますか?
こちらから購入可能です。また大手スーパーでも、並んでいます。
エディブルフラワーに対する思い
エディブルフラワーを、ただの流行りと思われるだけで文化として根付くかわからないけれど、単なるファッション的な感じで終わらせたくないですね。
幼少期につつじの蜜を吸ったり、誰に教えられるでもなく身をもって植物に触れる体験をしてたはずなのに、今は「道端に生えてるのを食べてはダメだ」と植物から遠ざけられていると思うんですよね。それを現代版としてできるのは、エディブルフラワーじゃないかなと思います。
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食べるということは、五感で脳にストレートに入ってきます。だけどお花ってなんとなくでしか脳に入らなくて、どうしても嗜好品になりがち、エディブルフラワーを通じて、花でも食感や味を楽しめるのができるんだと感じられました。花の違う面の魅力を伝えて、嗜好品ではなく必需品としてなってほしいなと思います。
エディブルフラワーをまだ未挑戦の人にひとことお願いします!
まず花の価値観、固定概念を変えてほしいですね。花は、食べ物ではないというイメージが強いと思いますので、花によって味が異なったり、個性がちゃんとあるのを楽しんでください。料理に彩りのお花を添えることで、皆が笑顔になれる材料になるというのを感じてもらいたいです。
お花は「食べられる」ということに挑戦してください!!
——横山さんありがとうございました。
横山さんのエディブルフラワーは、無理に暖房をかけたり、クーラーをかけたりせず、その季節で出せるお花を出荷されています。野菜に旬があるように、お花にも『旬』があります。その時期のお花を味わってもらいたいと季節感も大事に栽培している姿、また、花を収穫するという表現はとても新鮮で印象的でした。その言葉が自然に聞こえる日が来るよう、鑑賞だけでない新たな花の魅力に気づいていってほしいですね。
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