「NEOSHIHO」宮脇志穂 / いま人気の器、植木鉢をつくる陶芸家
LOVEGREEN編集部
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プロフィール
■名前: 宮脇志穂
■年齢:36歳
■職業:陶芸家
■出身地:岐阜
■活動拠点:岐阜
自己紹介をお願いします。
高校は美術科、大学は東京造形大学にて彫刻を学びました。卒業後に地元の陶芸工房で7年働き独立。現在は岐阜市でアトリエを構えています。うつわや植木鉢、花器、アクセサリーなどをつくっています。
器をつくるようになったキッカケは何ですか?
大学2年生の時に地元に陶芸工房がオープンしました。そこで働いていた人が高校時代の恩師で、夏休みのアルバイトに呼ばれたんです。元々、粘土には触れていましたが、普段使用する器を作ったのはそれがきっかけですね。そこで初めて自分の器でご飯を食べて、いつものほうれん草のおひたしがとっても、美味しく感じたのを覚えています。
大学の卒業製作で作品が大爆発(彫刻作品として野焼きという方法で製作したのですが)して、自分が思い描いていた作品とは全く異なる、むしろ真逆の作品ができてしまったんです。それで作品を作ることがよくわからなくなってしまって、自分なりの挫折を経験したんですよ。今、思うと大袈裟ですけど。笑 そのまま卒業したのですが行くあてがなくて、陶芸工房に無理やり雇ってもらいました。笑
当初、「土を触っていられればなぁ」というような軽い気持ちでしたよ。陶芸を生業にしようなんて全く思っていませんでした。
ただ、粘土が面白くてやっていたら人生の半分以上は粘土をこねてました。笑 今でも、もし粘土より面白いものがあったら辞めてもいいと思ってます。でも、きっとこれ以上のものはないかもとも思っています。 きっかけがあったとしたら、要所要所でいろんな方から叱咤激励をいただいて、悔しかったり、嬉しかったりしてたくさん泣いたことかもしれません。わたし負けず嫌いで泣き虫なんです。笑 あと、粘土って本当に難しくって、思った通りの形が簡単に出来ないんですよ。それも長く続けてきたというより、長くかかってしまった理由かもしれません。笑
器をつくるときに心がけていることはありますか?
作るものによって、自分のスイッチが変わっている気がします。食器類は使いやすさをなるべく重視しますし、花器や植木鉢はわたしの中では遊べる、どちらかというと彫刻を作っているような感覚でいます。
仕事場の様子や過去の作品などのご紹介をお願いします。
独立して構えたアトリエは、もともと会計事務所だったビルです。よく通っていたカフェに今のアトリエのビルのオーナーさんも常連で「空きビルがあるのだけど、出来れば若手の作家さんとかに貸したい」と店主に相談したらしいのです。その頃、ちょうどわたしも独立してアトリエを持ちたいと店主に相談していたので、本当に運命の出会いでした。
初めてビルに入ったとき、ここには棚があってここに工具とかを掛けて、ここは休憩スペースと、ボロボロだったビルなんですけど、自然とアトリエの風景が見えたんですよね。
過去の作品は、彫刻作品から陶芸を始めた当初のかわいらしい器までいろいろあります。昔から知っている友人たちは、随分と変化してきたのを感じていると思いますね。今が一番、自分らしい仕事をしていると思います。昔は、猫かぶってたなぁって。笑
今、推している作品は何ですか?
『朔』というシリーズが3年前に出来て、その作品がそれまでになかった反響があり、自分でも手応えを感じています。それ以前は、何を作ってもなんだか自分らしくない、もやもやした感覚でやっていました。今思うと、それでも続けて来れたのは支えてくれた周りの皆さんのおかげなので本当に感謝しています。
ひとつの器をつくるのに、どのくらいの時間がかかりますか。
器を作るのには土をこねるところから、菊練り、成形、削り、乾燥、素焼き、本焼き、仕上げなど様々な行程があるので一概には時間を伝えるのは難しいですね。最近は1ヶ月に本焼きを3回から4回は行います。窯が小さいこともその理由です。
植木鉢や花器をつくるようになった理由は何ですか?
アトリエを独立した時に、お花や観葉植物をたくさんいただいて、それで育てるのに植木鉢がいるなぁと思って。その時にふと、自分で作れるじゃん!陶芸やってるんだし!とひらめいて、その流れで作るようになりました。あと、今のアトリエは日当たりの悪い花壇しかなかったので、それまで育ててきたお花が植えられず、そういった環境の変化も後押しとなりました。
植物や花との出会い、好きになったきっかけを教えてください
小学生の頃、学校にお花を持って行く習慣があったんです。でも意志を持ってというよりは祖母が見繕ってくれたものを持って行っていただけなんですけどね、当時は。それでも、先生が通信でお花を持ってきた子を紹介するコーナーを作っていて、名前が載ると嬉しかったですね。
そんなこともあってなのか、最初に就職した陶芸工房は週末にカフェ営業をしていたのですが、その店舗でお花を飾るのが好きだったんです。小学生の頃と違って、それは確実に自分の意志でしたね。でも、子供の頃に祖母に包んでもらったその行為が大人になって、再び自分がするとは思いませんでしたよ。何年かは花を飾って楽しんでいたんですがある時、工房の周りに植えたらいいんじゃないかと思い、初めてホームセンターで種を買って蒔いてみたんです。これで工房の周りもお花畑だって!そしたら、見事に咲かなくて。笑 家族にその話をしたら、植えた場所が悪いと言われてしまいました。
当時、道端にいくらでも咲いている季節の花を、花の咲いた時期しか見てない自分がいました。今思うと当たり前なんですけど、初めてそこで土には栄養が必要で、近所のおばあちゃんたちは知らないところでそうやって、花が咲くまで世話をしていたんだなって気づいたんです。それに気づいてからはいつもの景色が変わりましたね。花の咲く時期じゃない草花の様子も観察するようになりました。
そこからすっかり植物の楽しさにはまってしまい、育てたり、飾ったりと楽しむようになりました。
自宅で育てている植物や花について教えてください
主にアトリエで育てているのは、アトリエの大家さんにオープンでいただいたウンベラータや祖父から譲ってもらったサボテン、アロエ系やエアプランツ、ミラビレやセンナ、パキポディウムといった塊根植物、そしてビカクシダとなんだかんだ多くの種類を育ててます。最近はありがたいことにお客様からいただくこともあるので、加速度的に増えてきましたね。笑
思い出に残る植物や花があれば教えてください
今年93歳になる祖父からもらったサボテンですね。ギムノカリキウムというサボテンの一種なんですけど、もらった最初の春に花が咲いたときは本当に嬉しくて、祖父にも見せに行きましたよ。8人いる孫の中で植物に興味のある孫はわたしくらいなので、とっても喜んでくれて。父方も母方も祖父母もみんな、庭作りや畑仕事、華道など植物にまつわる趣味を持っていて、わたしのDNAはそういう意味ではバッチリなんです!笑
これから取り組んでいきたいことや夢などあれば教えてください。
うれしいことに今は植木鉢のオーダーを多くいただいています。彫刻的な仕事は好きなのでこの作業もすごく楽しいのですが、まだまだやってみたいことはたくさんあります!
例えば花器と植物、花器とファッション、空間を演出するようなお仕事もしたいなぁと考えています。わたしが持っている『土の感覚』を生かした仕事をいろんな人と共有出来たらうれしいですね。
最後に何かあれば一言お願いします。
器作りを通して、確実に視野が広がっていることを実感できるのが今はとっても楽しいんです。植物はもちろん、日々のごはんなど、器は生活に欠かせないものだからこそ、この仕事を通じて豊かな暮らしを提案できている気がします。
自分の作った器でご飯を食べる、花を飾る、植物を育てる、身につける。そして誰かの暮らしの一部に自分の作ったものがあるということが、本当に不思議でありがたいことだなとつくづく思います。これからもドキドキワクワクするのを作っていきたいですね。
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