連作障害とは?連作障害にならない強い野菜を育てる栽培方法
LOVEGREEN編集部
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毎年同じ作物を同じように育てているのに、異常気象でもないのに上手く育たなくなることがあります。そして、そのまま状況を放置しておくと病害虫に侵された作物を量産してしまうのですが、それってもしかして…連作障害が出ているのかもしれません。病害虫が多数発生する要因の一つ「連作障害」についてご紹介します。
目次
連作障害とは?
「連作障害」ということ自体、家庭菜園初心者の方にはなじみのない言葉かもしれませんね。連作障害になってしまう原因を考える前に、まずは「連作障害」についてご説明します。
連作障害(忌地)とは
同じ畑で、同じ種類の作物を続けて栽培するうちに、作物が健全に生育できなくなることを連作障害(忌地)といいます。この連作障害が野菜に及ぼす影響のほとんどが病害虫です。
みなさんにとって害虫の被害や作物がうまく育たなくなることは、家庭菜園の最大の困りごとですよね。
連作障害の3つの原因
連作障害は以下の主な3つの要因から発生してしまうと考えられます。
物理的連作障害
通気性・排水性の低下
土を改良せず同じ作物の栽培を繰り返すことにより、土の中の通気性や排水性などが低下することから病害虫を発生させる要因につながります。
化学的連作障害
肥料の偏り
肥料を土中に施しても、種類が同じ作物は同様の栄養分を必要とします。例えば、春夏栽培時にジャガイモを育てて肥料を与えたとします。秋冬栽培も続けて同じ場所でジャガイモを育て、また同じように肥料を与えたとすると、消費されない養分が蓄積され土壌中の養分バランスが不均等になってしまうということから病害虫が発生しやすくなってしまうという結果になります。
生物的連作障害
微生物の偏り
育てる作物が変わらないことにより、土中の微生物にも偏りができます。
連作障害を防ぐために気を付ける3つのこと
つまり、連作障害というのは土のバランスが崩れるということです。では、どうしたら土のバランスを保つことができるのか考えていきましょう。
栽培する野菜の選択
同じ種類の作物を毎年同じ場所で栽培しないことによって、肥料の消費や微生物の偏りを防ぐ。
抵抗性品種
もともと病害虫に強い抵抗性の品種を選ぶことによって連作障害を防ぐ。
接木苗
キュウリの接木苗
苗の土台となる台木に、青枯病や萎凋病(いちょうびょう)などに強い抵抗性台木の苗を積極的に選ぶようにする。
例えば、上のキュウリの苗に子葉が二つあることにお気づきになりましたか?これが接木苗といって、連作や病害虫に強い台木の上に、美味しい品種の穂木を接いで作るひと手間かけた苗です。少し値段は高めですが、通常の苗よりも丈夫に育つので初心者の方でも安心して育てることができます。
連作障害になってしまった時の改善方法
家庭菜園のスペース的に同じ作物を作り続けることってどうしてもありますよね。その結果、連作障害になってしまい病害虫が多数発生して作物の栽培が困難になってしまった時はどうすればいいのでしょうか?続いて連作障害になってしまった土壌の「消毒と改良」の方法をご紹介します。
土壌消毒~春夏栽培後
病害虫が発生した土壌は、病原菌や害虫を消滅させる必要があります。真夏は太陽熱の力を借りて土壌を消毒していきましょう。
1. 被害を受けた根の除去。
レーキや土ふるいで、病害虫の被害を受けた苗の根を全て取り除きましょう。
2. 太陽熱で消毒。
被害を受けた土を透明ビニール袋に入れ、水分を含ませ封をします。直射日光に2~3日ずつ両面に日を当てます。
小さいプランターなら、こんなふうに丸ごとビニール袋の中に入ります。
土壌消毒~秋冬栽培後
夏は太陽光の力を借りましたが、冬は寒さを利用して害虫・病原菌を除去していきます。
1~2月にかけて晴れた風のない暖かい日を選び、寒ざらしといって土をざっくりと荒おこししましょう。スコップで20~30cmほど掘り返し1ヶ月ほど寒さに当て土中の水分の凍結・解凍を繰り返すことで、害虫・病原菌を除去するだけでなく、土が団粒化し通気性の良い土に改良されます。
土壌改良
土壌を消毒したら、偏った土のバランスを整えます。土壌を改良してくれる良質な植物質堆肥と動物質堆肥を投入しましょう。
~植物質堆肥の投入~
植物質堆肥とは、植物を積み重ね微生物によって時間をかけて分解、発酵させたものです。肥料成分というよりも土壌改良効果が高いのが特徴で、今回の土壌改良剤として積極的に取り入れたい排水性、保水性、通気性など作物が良く育つ環境に改良してくれる資材です。
~主な植物質堆肥~
・バーク堆肥
多孔質なので軽く、通気性と保水性、排水性全てに優れています。使用することで土をふかふかにさせ、土の通気性や保水性、排水性が改善されます。保肥力がアップする効果もあり土壌改良によく使用される資材です。
・もみ殻堆肥
もみ殻とは玄米を守っている固い殻の部分で、通気性や排水性を良くし、あらゆる土質に向く堆肥です。特に粘土質の畑で使うと土壌改良が進みます。完熟したものは保水性があるため、水持ちを良くすることもできます。
・腐葉土
ケヤキやコナラ、ブナなどの広葉樹の落ち葉を、土を間に挟んで積み重ね、水を加えて長期間発酵させ土状になったものです。腐葉土というように「土」という字が付いていますが、作物を育てる土を改善するための堆肥の一つです。植物の繊維分が多く含まれ、ミネラルも豊富に含まれています。保水性・排水性に優れ、保肥力もあり、土をふかふかにする効果に優れています。
~動物質堆肥の投入~
動物質堆肥は、主に動物の排せつ物を微生物に分解、発酵させたものをさします。土壌改良というよりもどちらかというと肥料としての側面が強いかもしれません。堆肥の中に窒素、リン酸、カリウムなどの植物の生長に必要な栄養素が含まれているため、元肥として利用することができます。
~主な動物質堆肥~
・牛糞堆肥(ぎゅうふんたいひ)
完熟発酵した牛糞堆肥には、有効微生物により植物が吸収しやすいよう有機物を分解してくれるため、土の 団粒化を進め良質な土壌にしてくれます。豊富な繊維分があるため、土壌の通気性や排水性、保水性が改善される性質を持っています。
・馬糞堆肥(ばふんたいひ)
牛糞堆肥同様、豊富な繊維分があるため、土壌の通気性や排水性、保水性が改善される性質を持っています。
・豚糞堆肥(とんぷんたいひ)
豚糞を堆積発酵させたもので肥料分を多く含み、繊維分は他のものに比べやや少なめになります。
・発酵鶏糞(はっこうけいふん)
鶏糞を堆積発酵させたもので鶏糞堆肥とも言いますが、おもに発酵鶏糞と呼ばれることの方が多いかもしれません。堆肥というよりも化成肥料並みの速効性のある肥料です。窒素・リン酸・カリの三要素を多く含みます。
土壌改良方法が分かる!~土の状態チェックシート
では、ご自宅の土の状態を把握した土壌改良をしてみましょう!
保水性UPの土壌改良
▶砂質土壌の改良材
腐葉土などの植物質堆肥、ピートモス、バーミキュライトや真珠岩パーライトを投入します。
(メーカーや品質にもよりますが、その他の改良資材のおおよその金額は植物質堆肥の1.5~2倍くらいです。)
▶土壌改良資材の量
資材の品質や土の状況などによって使用する改良材の量もまちまちです。
一般的な目安として、以下のような容量の資材を投入し、撹拌するとよいでしょう。
庭の土またはプランターの土:土壌改良材
7~8 : 2~3
排水性UPの土壌改良
▶粘土質土壌の改良材
腐葉土などの植物質堆肥、黒曜石パーライトを投入します。
(メーカーや品質にもよりますが、その他の改良資材のおおよその金額は植物質堆肥の1.5~2倍くらいです。)
▶土壌改良資材の量
資材の品質や土の状況などによって使用する改良材の量もまちまちです。
一般的な目安として、以下のような容量の資材を投入し、撹拌するとよいでしょう。
庭の土またはプランターの土:土壌改良材
7~8 : 2~3
▶暗渠(あんきょ)排水
暗渠(あんきょ)排水を作り土壌の水はけの改善を行いましょう。または、地面に勾配をつけて排水管で外に流しましょう。
※暗渠(あんきょ)排水…地中に溝を掘って透水管を埋め込み砂利や砕石を敷いて、地下の浸透水を外へ流すようにする。
通気性UPの土壌改良
▶寒ざらし~耕す
1~2月にかけて晴れた風のない暖かい日を選び、寒ざらしといって土をざっくりと荒おこししましょう。
スコップで20~30cmほど掘り返し、1ヶ月ほど寒さに当て、土中の水分の凍結・解凍を繰り返すことで土が団粒化し、通気性の良い土に改良されます。同時に害虫・病原菌を除去することができます。
▶土質~団粒構造の改良材
腐葉土などの植物質堆肥、黒曜石パーライト、ピートモス、日向土、くん炭を投入します。
(メーカーや品質にもよりますが、その他の改良資材のおおよその金額は植物質堆肥の1.5~2倍くらいです。)
▶土壌改良資材の量
資材の品質や土の状況などによって使用する改良材の量もまちまちです。
一般的な目安として、以下のような容量の資材を投入し、撹拌するとよいでしょう。
庭の土またはプランターの土:土壌改良材
7~8 : 2~3
連作障害にならないための予防方法
土壌消毒や土壌改良もできればしたくないと考えている方に、連作障害をできる限り予防するためにどんなことをすればいいのか考えていきましょう。
間作
同じ作物を同じ場所に植え付けず、科の異なる作物を植え付けることで連作障害のリスクを減らすことができます。例えば、ナス科のミニトマトを育て終った後はヒガンバナ科(APG植物分類体系)の玉ねぎやネギ、ニンニクを植えるということです。
混植
育てる作物にとって相性の良い作物を一緒に育てることで、良い影響を与え合いながら育てることができます。この混植する際に有用な植物をコンパニオンプランツといいます。
コンパニオンプランツとは
簡単に説明すると、一緒に植えると互いに良い影響を与え合う植物同士のことを意味します。
・害虫忌避(バンカープランツ、忌避植物、おとり植物)
害虫被害を押さえる効果が期待できます。ネギ類やパセリ・セロリ、ハーブ類のような匂いの強い野菜で害虫を遠ざけます。
・結実促進
マリーゴールド、ナスタチウム、ボリジ、カモマイルなどを植えると、受粉を助けてくれるハチやアブなどを集めることができます。スイカやズッキーニなどの受粉が結実に欠かせない作物の良い助けになってくれます。
・病害予防(対抗植物)
ネギ類やマリーゴールドの根には、病害を防いだり、減らしたりする働きがあります。特にマリーゴールドは、ネコブ線虫等に対する殺虫効果をもつと言われ、作物に対する病害の抑制にも効果があると考えられているため、一緒に植えたり緑肥として土に漉き込むのに使用される植物です。
・相互作用(アレロパシー)
肥料がたくさん必要な野菜は、肥料をそれほど必要としない野菜の余分な肥料分を吸収してくれます。また、日照を多く必要とする野菜の根元に、日陰でも育つ野菜を植え付けることで、お互いを補うことができます。
いかがでしたか?
「連作障害を防ぐ」ということを人間に例えてみると「バランスのとれた食生活を心がけましょう」といったところでしょうか。人間も植物も自然の中で生かされているものにとっては調和が重要なんですね。みなさんの家庭菜園でも調和のとれた環境で、連作障害知らずの健康な野菜を育てましょう。
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