葛(クズ)とは?漢方薬から和菓子まで大活躍の美しい秋の七草
山田智美
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葛(クズ)をご存知ですか?実はすごく身近な場所で見かけるつる植物です。漢方薬や和菓子の原料でもあり、私たちの生活の中でも身近な存在。香りの良い美しい花を咲かせます。知っているようで知らない葛(クズ)について、花の特徴、花の咲く季節、漢方薬や和菓子、秋の七草、害草と言われる理由などを紹介します。
目次
葛(クズ)とは?基本情報
- 学名:Pueraria lobata
- 科名・属名:マメ科クズ属
- 分類:多年草
葛(クズ)の特徴
葛は、マメ科クズ属のつる性多年草。日本の山野及び街中の公園や空き地など、身近な場所で見かける花で、秋の七草にも数えられています。薬用や食用に利用される傍ら、繁殖力が強く駆除が困難な雑草としても扱われています。
葛の花は、藤(フジ)を逆さにしたようなフォルムをしています。花にはぶどうジュースのような甘い香りがあるのも特徴です。葛のつるは太く丈夫で、3枚の小葉からなる大きな葉を茂らせます。葉や茎に産毛のような細かい毛があります。土中に山芋のような太い根を伸ばすのも特徴です。また葉の裏の色は白っぽく、風に吹かれて葉裏が見えることから裏見草(うらみぐさ)と呼ばれ、「恨み」とかけて枕詞に使用されました。
葛(クズ)の名前の由来
葛の名前の由来は、その昔奈良県の国栖(くす、くず)が葛の産地であったことから名付けられたと言われています。
葛(クズ)とかずらの違いは?
かずらとは、つる植物の総称です。漢字ではかずら(葛)と書きます。葛は丈夫で身近なつる植物だったため葛の字を当てられ、「葛(クズ)」となったのだろうと言われいます。
同じ「葛」の字でも「かずら」と読めばつる植物の総称であり、「くず」と読めば葛という植物のことを指します。ちょっとややこしいようですが、前後の文脈から読み取るようにしてみてください。
葛(クズ)の花の特徴
葛(クズ)の花は、赤紫色の藤(フジ)を逆さにしたようなフォルムをしています。一つ一つの花はマメ科特有の蝶形花で、大きさは1~2cm程度です。葛の花は付け根の方から咲いていき、先端の花が咲く頃には下の花は散っています。色鮮やかで香りの良い花を咲かせる葛ですが、葉が大きく茂るので、花が咲いているのに見えないということも多くあります。空き地や河原など、身近な場所に茂っているのに葛の花を見たことがないという人も多いようです。
葛(クズ)の花の香り
葛の花には、ぶどうジュースのような甘い香りがあります。草むらや空き地、河原などで、どこからともなくぶどうジュースのような香りがしたら、近くに葛の花が咲いているかもしれません。葛の花は大きな葉に隠れてしまっていることが多いのですが、見つけたら顔を近づけて確認してみてください。びっくりするくらい甘い香りを楽しめます。
薬草として役立つ葛(クズ)
葛の根は太く長いので駆除が困難と厄介がられることもありますが、実は良質なでんぷん質が豊富。薬用としてとっても優秀な植物です。葛の根を用いた漢方薬を紹介します。
葛根湯(かっこんとう)
葛の根を掘り上げて外皮を取り、細かくして乾燥させたものを原料としているのが葛根湯です。葛の根である葛根の他にもいくつかの生薬が入っています。
風邪を引いたときなどに飲用すると体を温め、熱を下げる効果があると言われている漢方薬です。
葛湯(くずゆ)
葛湯も同じく、葛の根を細かく挽いて乾燥させたものです。これをお湯に溶いて飲用します。風邪を引いたときに飲用すると、発汗や解熱などの効き目があると言われています。
和菓子や食べ物で役立つ葛(クズ)
葛の根に含まれるでんぷんは薬用のみならず、和菓子にも利用されています。知らずに食べていたかもしれない、葛からできている有名な和菓子を紹介します。
葛粉(くずこ)
葛粉は葛の根から抽出したでんぷんの粉末です。何度も水にさらして良質なでんぷん質だけを集めたものです。葛粉は片栗粉のように料理にとろみを付けるのに役立ちます。さらに葛粉を原料に作られている和菓子もたくさんあります。
葛餅(くずもち)
葛餅は半透明でつるりしたと食感の良い和菓子です。夏の暑い時期に冷やして食べるとよりおいしさを楽しめます。
葛餅は葛粉と水と砂糖を温めながら溶かし、冷やして固めただけのシンプルな和菓子。黒蜜やきな粉をかけていただきます。良質なでんぷんと砂糖だけで作られているので、カロリーも控えめなのが魅力です。
葛粉を使用すれば自宅でも簡単に作ることができます。お手製のお菓子は余計なものが入っていないので、安心して食べられます。
葛切り(くずきり)
葛切りも葛餅と同じく半透明で食感と喉ごしの良い食べ物です。葛粉を水と一緒に温めながら溶かし、冷やして固めてから細く切って食べます。葛切りは黒蜜やきな粉をかけて和菓子にする他、お鍋の具材としても楽しめます。
葛切りも葛粉を使用して自宅で簡単に作ることができます。葛餅も葛切りも、日本に昔から伝わる身近な食べ物です。
葛(クズ)の花咲く季節は?秋じゃないのに秋の七草?
葛(クズ)の花咲く季節
葛の花が咲くのは7月~9月。秋の七草の一つですが、夏のまだ暑い盛りから晩夏にかけて咲き続けます。夏に葛の茂みをよく見ると、大きな葉に隠れるように赤紫色の花が咲いているのが見つかります。
葛(クズ)は秋の七草
葛は秋の七草の一つに数えられています。秋の七草とは、山上憶良が万葉集で詠んだ二つの歌が由来とされています。秋の七草は、「女郎花(オミナエシ)、尾花(ススキ)、桔梗(キキョウ)、撫子(ナデシコ)、藤袴(フジバカマ)、葛花(クズ)、萩(ハギ)」の7種類です。
葛が咲くのは7月~9月の夏から晩夏にかけてですが、旧暦ではこの時期が立秋から立冬までの秋と呼ばれる季節でした。葛の花が咲く季節は体感的には夏だけど、万葉集の頃は秋だったんだなあ、と考えてみると納得がいきます。
▼秋の七草について詳しく紹介しています。
葛(クズ)は海外では害草?
日本では食用や薬用にされている葛ですが、アメリカでは害草として扱われているようです。
葛は葉も栄養価が高く牧草としても役立つ、さらにマメ科の植物は根に根粒菌を持っているので土地が肥沃になるという理由から、その昔アメリカで積極的に葛を育てたそうです。結果、葛が大量に繁茂し駆除に手間がかかったので、今では害草となってしまいました。
葛の根は山芋のような大きな塊根を形成し、しかも土中深くまで根を張るので、一度大きくなってしまうと駆除に難儀するという難点があります。
迷惑だけど、有用植物でもある葛(クズ)
日本でも街中の公園や空き地、河原、ちょっと手入れをさぼってしまった庭などに葛が繁茂しているのを見かけます。つるは5m以上にまで生長し、根が深いため駆除が困難な植物ではありますが、食用にも薬用にもなり、夏から晩夏には美しく香りの良い花も楽しめる魅力的な植物です。
秋の七草にも数えられる葛。強健で駆除が困難という欠点もありながら、和菓子にも漢方薬にもなるお役立ち植物です。何より、藤を思わせるような赤紫色の葛の花は美しく、香りも良いのが魅力です。花をちょっと切って、1輪生けて置くだけで絵になります。葛の魅力を見直してみませんか。
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