「特定外来生物」に指定されている植物、知っていますか?
小野寺葉月
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先日「日本のクズが海外で猛威をふるっている」記事で日本から海外へ進出した植物の現状をご紹介しました。今回は、その逆、海外原産の植物が日本で繁殖しているというお話です。「特定外来生物」「要注意外来生物」「侵略的な外来種」「外来種」など、外来生物に関することばはニュースやネットなどでもたびたびトピックとして上がりますが一度整理したいと思います。私もこの記事を書くに当たり、再度調べてみました。
外来種とは
「外来種」とは、生物がもともと生息していた場所から別の場所へ人によって持ち込まれたり、広がったりしたもののことを言います。意図的なもの、意図的じゃないものどちらも含みます。
植物が種を飛ばしたり、動物によって運ばれる種などは、外来種とは言いません。
外来種って何がだめなの?
毒を持った外来種や、とげや牙のある外来種に刺されたり噛まれたりするなど、直接的に害がある場合や、農作物への被害、漁業への影響などが考えられます。また、生態系に大きな影響を及ぼすということも言われています。
新しい種が新しい環境で生きてゆくためには、もともとある環境の中で動物であれば餌をとったり、根を広げたりし競合します。植物であれば葉を茂らせて他の植物よりも日光を存分に受けることが必要になってきます。また、交配する際に外来種が固有種と交配することで「遺伝的攪乱(いでんてきかくらん)」を起こすこともあります。交配してできた種は雑種として、元の固有種ではなくなってしまいます。
侵略的な外来種
外来種の中でも、影響力の大きいものを言います。たとえば、沖縄にハブ退治目的で持ち込まれたマングースなどがそうですね。ハブ退治には成果が出ず、アマミノクロウサギなど固有の生物を食べてしまうようなことが起こっています。
侵略的というと、なんとなく「毒があったり、凶暴だったりする」生物というイメージを持たれたりする方もいらっしゃるかもしれません。ですが、かれらはたまたま環境的に侵略してしまう状況になっただけで、その生物たちが恐ろしいもの、悪者、というわけではありません。ちなみに、先日の記事「日本のクズ」はアメリカでは「侵略的外来種」とされています。
国内由来外来種
海を越えて日本で繁殖する生物だけが「外来種」というわけではありません。日本国内で移動する場合も、外来種にあたります。日本は北海道から沖縄まで南北に長く、気温の差も大きいのでもともと生息している植物や生物は異なったものです。たとえば極端な例ですが北海道には生息していなかった植物が、九州などから持ち込まれて、そこで繁殖する場合は「国内由来外来種」と言われます。
特定外来生物
明治以降に日本に入って生きている外来生物のうち、特定外来生物に指定された生物は、平成28年10月現在、全部で132種類で、そのうち植物は16種類。特定外来生物に指定された生物は「輸入・飼育、栽培、運搬・野外に放つこと」が禁止とされています。今回ご紹介するのはこの特定外来生物に指定されている植物のうち、10種類です。
オオキンケイギク Coreopsis lanceolata
原産地 北アメリカ(ミシガン~フロリダ、ニューメキシコ)
キク科の多年草で開花期は5~7月。1880年代観賞用、緑化用に導入されたところから急速に拡大し、河川や道路で群生している場合があります。一時期は花が終わったあとも汚くならないため、繁殖力を利用してグラウンドカバーとしてもてはやされたり、道路などを工事した後の法面緑化(のりめんりょっか)などに用いられたこともあります。花が終わってすぐ仮払いをすれば結実しないため、増えすぎませんが、河川などで一面お花畑になっていることも少なくありません。
ミズヒマワリ Gymnocoronis spilanthoides
原産地 中央・南アメリカ
現在はオーストラリア、ニュージーランド、台湾に分布。 ギムノコロニスとも言われます。 水辺に生える多年草で、開花時期は早いものだと6月頃から11月頃まで。
繁殖力が大変強く、茎がちぎれてもそこから根を出してあっという間にもっさりした株になってしまいます。戦後、熱帯魚の輸入とともに日本へ入ってきましたが、それが1990年に愛知県の河川にて野生のミズヒマワリが確認されています。
オーストラリアでも問題になっており、河川で在来の水草を駆逐し、酸素濃度を低下させ魚が住みにくくしてしまうことなども懸念され、対策の必要があるとされています。
オオハンゴウソウ(ルドベキア)Rudbeckia laciniata
原産地 北アメリカ
園芸用に明治時代に輸入され、野生化が確認されたのは1955年。別名がたくさんあり、ルドベキア、ハナガサギク、ヤエザキハンゴンソウなどと呼ばれます。寒冷に強く、湿地帯を好みます。同じ環境で生息するモウセンゴケやツルコケモモなどの貴重な植物を駆逐してしまうことがあります。
ナルトサワギク Senecio madagascariensis
原産地 マダガスカル
1976年に徳島県鳴門市で確認されています。日当たりの良い場所を好み、海外では牧草地などで繁殖しています。もともとは埋立地の緑化用としてアメリカから輸入したシロツメクサやシナダレスズメガヤなどの種子に交じってナルトサワギクの種子が入り込んでいたようです。オーストラリアでも深刻な繁殖をしているほか、ハワイでも侵略が確認され、対策しているとのこと。
オオカワヂシャ Veronica anagallis-aquatica
原産地 ヨーロッパ~アジア北部
オオカワジサとも呼ばれる。ゴマノハグサ科の一年~多年生草本で開花時期は4月~9月。地下茎で繁殖するほか、種は風や雨などで散布されます。近縁種のカワヂシャが、オオカワヂシャと交配してしまうことで、雑種のホナカワヂシャが繁殖し、カワヂシャが遺伝的攪乱が起こっている。
ナガエツルノゲイトウ Alternanthera philoxeroides
原産地 南アメリカ
別名はたくさんあり、ミゾツルノゲイトウ、エナガツルノゲイトウ、アルテルナンテラ、アルテラナンテラ・フィロゼロイデスなど。水辺の湿地帯にはえる多年草で、ミズヒマワリ同様、茎からどんどん発根して繁殖します。特に日当たりが良く、土に栄養があると急激に繁殖します。千葉県の印旛沼などでも問題になっており、駆除活動が現在も継続されています。
ブラジルチドメグサ Hydrocotyle ranunculoides
原産地 南アメリカ
川岸にはえる多年草で、茎は1mほどにも成長します。これもまた、茎がちぎれてもそこから繁殖します。泥に根を張り、茎を伸ばして水面を浮遊するため、水面を覆ってしまうことがあります。そうなると水中に光が届かなくなり、環境が変わってしまうなどの問題が発生します。栄養があまりない場所でもどんどん繁殖するため、在来種を脅かしてしまいます。
アレチウリ Sicyos angulatus
原産地 北アメリカ クズ化の一年生の草です。つる性植物の中でも非常に生長が早く、手のひら大の葉がこんもりわさわさと繁殖します。実には大変鋭い棘があり、食べられません。開花時期は8月~10月です。1952年に静岡県清水港にて確認されました。輸入品の大豆に購入していたそうで、お豆腐屋さんを中心に拡大していったと言われているのだとか!
オオフサモ Myriophyllum aquaticum
原産地 南アメリカ アマゾン川
多年生の抽水植物で、雌雄異株の植物。茎の直径は4~6mmで、茎の長さは10~30cmほどになります。もとは観賞用にドイツより雌の株だけ輸入されてきたものですが、これが栄養繁殖で雌の株だけでもどんどん増殖してるため、日本には雌株しか存在していないんだとか。ヌマフサモ、スマフサモ、パロットフェザーなどの別名があります。確かにオウムの羽のような幾何学的なきれいな葉がついています。水質の悪化、水流の阻害や在来種への影響が懸念されています。
ルドウィギア・グランディフロラ(オオバナミズキンバイ) Ludwigia grandiflora
原産地 南アメリカ、北アメリカ南部
琵琶湖で近年問題になっている水生植物で、こちらも水質の悪化、水流の阻害や在来種への影響が懸念されています。繁殖力が大変強く、一旦大規模に除去されたものの、あっという間に元通りになってしまったそう。栄養繁殖で1日で3cmほど伸びることもあるんだとか。。。水中と水上に茎が密生し、その中で蚊が発生してしまうことでその被害なども問題になります。
スパルティナ Spartina spp.
イネ科の植物で、スパルティナ属は時に干潟や塩沼などの塩分濃度が高い場所にはえます。2mを超す高さまで成長し、自然な島を水辺に形成してしまいます。そうなると、水流が阻害されるほか、堆積物がたまってしまい、干潟の環境が変化することで、生息している生物に出る影響が懸念されています。またゴミがたまってしまうなどの問題があげられます。
ボタンウキクサ Pistia stratiotes
熱帯性の水生植物で、ホテイアオイのような浮草です。細かい繊毛でおおわれた葉は水をはじき、浮くようになっています。形状からウォーターレタスとも呼ばれますが、食用にはできません。繁殖力が高いため、水面を埋め尽くしてしまうことで水中の環境が変化してしまうほか、固有植物を駆逐されてしまうことが懸念されています。大阪の淀川でも大発生が問題になっています。
以上の種類が、特定外来生物に指定されている植物たちです。皆さんいくつご存知でしたか??ここでご紹介した植物以外にも、良く見かける外来種の記事を今後更新していきます。
この特定外来生物は、採取や運搬、栽培が禁止されているものの、植物については私たち一般人でも駆除は可能です(哺乳類や鳥類などの生物はルールが異なります)。
万が一駆除をされる場合は、完全に廃棄することを徹底しましょう!
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