家庭菜園「私だけの育苗」のすすめ | エディブルガーデン12月
古幡真恵
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Illustration:小野寺葉月
畑やプランターに直に種をまかず、セルトレイやポリポットに、ピートモスやバーミキュライトなどの清潔な土を入れ、種をまいて苗を育てることを育苗(いくびょう)といいます。
いつもホームセンターや園芸店で購入していた苗を、来期の春夏シーズンの家庭菜園は種から育てる苗づくりに挑戦してみませんか?
▼育苗のことならこちらの記事をご覧ください。
目次
- 種から育てる「私だけの育苗」で用意するもの
- 基本のセルトレイでの種まき
- 鉢上げからポリポット育苗
- 家庭菜園の定番!春夏野菜の育苗
- 育苗に失敗!? そんなの全然大丈夫!
- 種を取り寄せてでも育苗して育てたい魅力的な野菜たち
種から育てる「私だけの育苗」で用意するもの
Illustration:小野寺葉月
春夏の家庭菜園の栽培シーズンが始まるころ、ホームセンターや園芸店にはたくさんの種類の苗が並びます。多くの魅惑的な野菜の苗を目の前にして、「あれも育てたい」「これも育てたい」と、苗をたくさん選んでしまい、結局植えきれないことがよくあります。
少し前までは、「ミニトマト」とか「ナス」など野菜の種類で選んでいたものが、今や「純アマ」「千果」「サンマルツァーノ」など、特にミニトマトは品種で選ぶ時代になりました。単純に「野菜を育てる」から「お気に入りの品種を育てる」へと、家庭菜園の楽しみ方がシフトしています。
また、毎年品種が増えているので、昨年育てたお気に入りの品種が、今年は売っていないということもあります。今までは苗がなければ育てることをあきらめていたのですが、種をまいて育苗する「私だけの苗づくり」にチャレンジしてみましょう。
用意するもの
温度調節ができる育苗機になると高価なものもありますが、今回育苗のために用意するものは、数百円程度なので気軽に揃えてスタートすることができます。
もっと気軽に始めたいという方は、家庭にあるものを利用してみてください。
▼新聞紙を使った育苗ポットの作り方はこちらをご覧ください。
セルトレイ
氷を作る製氷皿のような形をしたトレイで、底に穴があいています。
私は、128穴あいた600×300×44mmの大きさのセルトレイを、カッターで好みの大きさに切って使っています。
トレイ
セルトレイから水が漏れるのを防ぐことができるなら、キッチンやデスク周りで使用するトレイでもかまいません。
今回は寒い冬から春の育苗なので、トレイ代わりに発泡スチロールのケースを用意しました。
ちなみに、販売されているセルトレイ専用のトレイは、底面が波型形状になっているのでプラグトレーの穴を塞ぐことがなく底面給水もできます。
ポリポット
ホームセンターや園芸店で苗を購入するとき使用されているものと同じ、ポリ製の鉢を用意します。
大きさは3~4号。1号あたり鉢の直径が3cmなので、3号は9cm、4号は12cmの大きさです。
種まき用土
種まき用の清潔な土を用意しましょう。
使い古した土を育苗に使用すると、病原菌の元となるカビ(糸状菌)の影響で、幼い苗が苗立枯病などの病気にかかってしまうことがあるからです。
地温計
土に挿して温度を計ります。常時計測していると、いつの間にか温度の感覚が身につくのでおすすめです。
土にちょこんと挿した様子は、苗がお熱を計っているようで可愛いですよ。
ピンセット
種の大きさにもよりますが、ピンセットでの種まきがおすすめです。小さいトレイの真ん中に種がまきやすくなります。
新聞紙
新聞紙は発芽まで土の乾燥を防ぐために使いますが、発芽に光を必要とする品種には必要ありません。
発芽したら新聞紙をとって、日中太陽の光に当てましょう。うっかり新聞紙を取り除くのが遅れると、もやしみたいにヒョロヒョロと徒長してしまうので要注意!
ぬるま湯
発芽には温度が必要なので、冬から春の寒い時期にわざわざキンキンに冷えた水はかけないほうがよいと思います。
種
育てたい種を用意したら、種のまく時期、発芽温度、被せる土の量など、種袋の裏に記載された内容をしっかり確認してください。
▼種袋のことならこちらをご覧ください。
基本のセルトレイでの種まき
種や材料を揃えて、育てたい品種の種まきの適期になったら、セルトレイに種をまいていきましょう。
セルトレイでの種まきの手順
畑やプランターに直に種をまく通常の種まきと違い、セルトレイでの育苗は、発芽から本葉が展開するまで、温度や日光など作物の特性に合わせた管理がしやすい方法です。
1. セルトレイに種まき用土を入れる
上で揃えた道具以外にも、園芸用の土入れなどを用意するとセルトレイに土が入れやすいです。園芸用にこだわらなくても大きめのスプーンを使ったり、とにかく作業がしやすいようにいろんなアイテムを使ってみましょう。
2. 土にたっぷり給水
細かな水流でなければせっかく入れた土がこぼれたり、土の中に空気が入って空洞になることがあります。なるだけ優しくかけてあげるか、下から水分を吸収させましょう。
気温が低い時期の種まきにはぬるま湯を使用しますが、夏に種をまいて育苗するときは水でかまいません。
3. 種をまくための穴をあける
発芽までに光を必要としない品種は、だいたい深さ1cm程度の穴をあけます。
レタスなど光を必要とする種類の野菜は、土の上に種をまいた後軽く覆土する程度にしましょう。
4. ピンセットなどで種をまく
セルトレイの真ん中にピンセットなどを使って1粒ずつ種をまきます(種の大きさにもよる)。
発芽率が低いものは、種の粒数を増やしましょう。
5. 土を被せる
土を被せ、もう一度ぬるま湯をかけ、余分な水分を切ります。 このとき静かに与えないと、せっかくまいた種が外にこぼれてしまいます。高性能のジョウロをお持ちでない方は下から水を吸わせるか、大きめのスポイトやスプーンなどで優しく水を与えましょう。
このまま地温計を挿して発芽適温に合わせた温度管理を心がけます。
6. 発芽適温を保ち、発芽まで水を切らさない
発芽まで新聞紙をかけて乾燥をできるだけ防ぎます。 発芽に光を必要とする種類には、新聞紙をかけることができないので、発芽まで種を乾燥させないよう十分注意が必要です。
7. 発芽したら新聞紙をとり、日中しっかり陽に当てる
特に冬から春の育苗は日光が不足しがちなので、日中必ず当ててあげましょう。
反対に夏から秋の育苗では、強過ぎる日差しに注意します。
育苗は野菜の赤ちゃんを育てるようなものです。何事も「〜過ぎる」環境は避けましょう。
<温度が低いときの裏技!>
どうしても温度が上がらないという場合は、温かいお風呂のフタの上にのせたり、ホットカーペットの上にのせるなどして温度を上げてみましょう(ホットカーペットに置く場合は、発泡スチロールのケースに入れると急な温度の上昇を防ぐことができます)。
生育適温よりも温度が高過ぎると根傷みを起こすので、必ず地温計を挿して土の温度をしっかり把握しましょう。
このときの注意点は、土を乾燥させないこと!
ちょっと目を離したすきに、カラカラに土が乾燥してせっかく発芽した芽を枯らしてしまうのはもったいないですからね。
8. 元気のいい芽を残して1本立ちにする
本葉が1枚でたころ、元気のいい芽を残して1本立ちにします。
※画像のパクチーは幼苗が倒れやすいので、ある程度大きくなるまで2本立ちで育ててもよいでしょう。
9. 本葉が2〜3枚くらいになるまで育てる
ここまで育てたらセルトレイの育苗は終了です。次はポリポットへの鉢上げです。
鉢上げからポリポット育苗
初めてセルトレイでの種まきにチャレンジしたのなら、失敗することもあります。もちろん私もその一人でした。
でも、一つでもセルトレイの育苗が成功したなら、初めの一歩として、最高のすべり出しです!
鉢上げの手順
セルトレイで育てた苗をポリポットに移して、畑やプランターという場所で生長できる大きさまで育ててあげましょう。
▼幼苗のことならこちらをご覧ください。
1. ポリポットに土を入れて吸水する
ポリポットに育苗用の土、または野菜用の培養土を9割ほど入れ、水を与えて土に吸水させます。
2. ポリポットに鉢上げ
セルトレイで本葉2〜3枚くらいまで育苗したものを、根を傷めないようにピンセットかスプーンなどを使ってポリポットに鉢上げします。
3. もう一度水を与えてしっかり吸水する
この大きさならジョウロで水やりをしても、ポリポットからこぼれ落ちることはありませんが、まだ小さい苗なので引き続き優しく水を与えましょう。
4. 日中は日当たりのよい場所に、夜間も10〜15℃を下回らないように管理
日中は日当たりのよい窓辺で、夜間も10〜15℃を下回らないように室内で管理します。
生育適温は、育てる種類によって異なるので必ず確認しましょう(例:パクチーなら生育適温は18 ~ 25℃)。
夏の育苗は、引き続き強過ぎる日差しや高温に注意しましょう。
5. 定期的に液肥を与える
肥料の入っていない土を使用している場合は、定期的に液肥を与えます。
6. 本葉6~8枚くらいまで育てたら育苗は完成!
育てる種類によって、畑やプランターに植え付けるのに適した本葉の枚数が異なります。
ちなみにパクチーは直根性の植物なので、あまり大きくなるまで育苗するよりも、早めにプランターに植え付けたほうがよいでしょう。
\続いては人気春夏野菜の育苗方法だよ!/
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