イチジク(無花果)とは?育て方・栽培方法|植物図鑑
- 植物名
- イチジク(無花果)
- 学名
Ficus carica
- 英名
- Fig tree
- 和名
- 無花果
- 科名
- クワ科
- 属名
- イチジク属
- 原産地
- アラビア半島南部、地中海沿岸地方
イチジク(無花果)の特徴
イチジク(無花果)は樹高2~5mになる落葉低木の果樹で、独特の熟した甘みと食感が魅力の果物です。収穫時期や味、形などが異なる200品種以上の種類があります。
イチジク(無花果)は受粉の作業が必要なく栽培が簡単で、順調にいけば植え付け後2年目からと早い時期から収穫できるため、家庭で育てる果樹として適しています。
イチジク(無花果)の実は、一度にすべての実が熟すわけではありません。毎日少しずつ熟すため、長期間収穫できるのが特徴です。生食の他、ジャムなどの加工用やドライフルーツとしても美味しくいただけます。
イチジク(無花果)の詳細情報
園芸分類 | 果樹 |
---|---|
草丈・樹高 | 2~5m |
耐寒性 | 普通 |
耐暑性 | 強い |
開花時期 | 6月~10月 |
イチジク(無花果)の種類
蓬莱柿(ほうらいし)
1600年代半ばに中国から伝わってきた品種です。日本での栽培も長い事から別名「日本いちじく」とも呼ばれています。耐寒性があり、果実も実りやすく収穫量も多く、育てやすい品種です。雨で果実が裂果しやすいため果実が実り始めたら、雨除けをするとよいでしょう。
桝井ドーフィン
1909年に広島県の桝井光次郎氏がアメリカから持ち帰った品種です。日本の環境で育ちやすく、栽培のしやすさと果実の持ちのよさから、日本に広まりました。果実の収穫時期は8月~10月。
イチジク(無花果)の花言葉
イチジク(無花果)の旬はいつ?
イチジク(無花果)の旬は夏と秋の2回
一般的には、イチジク(無花果)の旬と言えば秋と思われていますが、実際にはイチジク(無花果)の旬は、夏から秋です。
イチジク(無花果)は品種によって実の収穫時期が違います。初夏から夏にかけて実がなる品種(夏果)と、秋に実がなる品種(秋果)、そして初夏と秋の両方に実がなる品種(夏秋兼用種)があります。
イチジク(無花果)の花
イチジク(無花果)を漢字で書くと「無花果」。花が無い果実と書きますが、本当に花が咲かないのでしょうか?イチジク(無花果)の花は、「実の中に花が隠れて咲く」という変わった性質があります。
イチジク(無花果)の実は、「花のう」と言う袋状になっていて、その袋の内側にたくさんの花が並んでいます。花と言っても花びらなどはないので、一見、花には見えません。
野生種のイチジク(無花果)の形は、受粉の仕組みと深く関係しています。花が見えない形状をしているため、イチジク(無花果)コバチという小さなハチが、イチジク(無花果)の穴から中へ入り込んで実の中で産卵します。このイチジクコバチの卵がふ化し、成虫になったイチジクコバチは、花粉を付けて別のイチジク(無花果)の木へ行き、受粉させる役目をしています。イチジク(無花果)は住みかと養分を与える代わりに、イチジクコバチは受粉をしてくれるという相互関係があるのです。ただし、これらは野生種のイチジク(無花果)の場合で、日本で流通しているイチジク(無花果)は、受粉しなくても果実が大きくなる「単為結果」であるため、ハチの助けは必要ありません。
イチジク(無花果)の育て方カレンダー
時期 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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植え付け・植え替え | ||||||||||||
剪定 | ||||||||||||
肥料 | ||||||||||||
収穫 |
イチジク(無花果)の栽培環境
日当たり・置き場所
イチジク(無花果)は、日当たりと風通しの良い場所を好みます。強い風の通り道になるような場所への植え付けは不向きです。
温度
気温が15℃以上になると生長期となり、活発に新芽が芽吹き始めます。果実は22℃~27℃で成熟し、38℃以上になると生長が鈍り、皮が固くなるなどの障害が出ます。
用土
イチジク(無花果)は、水はけと保水性が良い肥沃な土壌を好みます。ややアルカリ性の土を好むので、酸性土壌を好むブルーベリーを近くで栽培するのは不向きです。
鉢で栽培する場合は、赤玉土、鹿沼土、腐葉土をそれぞれ3割に砂1割混ぜた土、もしくは花と野菜用の培養土7割に赤玉3割を混ぜた土を使用します。市販の果樹用の培養土等を使用してもよいでしょう。
イチジク(無花果)の育て方のポイント
日常の管理
イチジク(無花果)は、葉が大きいため、風が強すぎる環境に弱く、葉が破れたり折れたりしてしまいます。風の強い日は風対策が必要です。真夏の直射日光が強い場合は寒冷紗などで日よけをしましょう。
イチジク(無花果)は、果実の生育期に雨に濡れると果実が破裂してしまうため、果実が熟れ始めたら雨をよける工夫が必要です。
水やり
イチジク(無花果)は土壌が乾燥気味の方がよく育ちますが、水切れには弱いので、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。真夏は藁などでマルチングをして乾燥を防ぐのもよいでしょう。
鉢栽培は水切れしやすいため、水切れに注意しましょう。
肥料
イチジク(無花果)の肥料は11月~1月の休眠期に寒肥えとして有機質な油かすなどの元肥を与えます。6月~9月の生長期にも堆肥などの有機質な肥料を根元近くにではなく、少し離れた枝葉を伸ばしている先の地面に埋めて与えます。
イチジク(無花果)の詳しい育て方
選び方
イチジク(無花果)は、自家結実性があるので1本で実がなります。基本的には暖地向きの果樹ですが、最近は北海道南部までなら栽培可能の耐寒性の強い品種も登場しています。お住いの地域の冬の気温に合わせた品種を選ぶことが大切です。
イチジク(無花果)の品種は、200以上の品種が存在します。お住いの地域に合わせた品種を選別した上で、下記のポイントから好みの品種を選ぶとよいでしょう。
1.収穫の時期
品種によって、次の3つの収穫時期に分けられます。夏果は、梅雨と収穫時期が重なり実が傷みやすいため、露地栽培で育てるなら②か③の秋果か夏秋兼用種の品種の中から選ぶとよいでしょう。
①夏果(6月~7月収穫)
②秋果(8月以降の収穫)
③夏秋兼用種
2.味や香り
甘みが強いものからあっさりとした味まで、品種によって特徴があります。また、皮ごと食べられる品種もあります。香りも品種によって違うので、こだわりのある方は確認して選びましょう。
3.実の色や形
イチジク(無花果)の実の色は品種によって様々です。黒、茶系、黄緑…中には、縦に斑が入っているユニークな見た目をしたものもあります。また、形も小ぶりのものから大きなサイズまで品種によって違うので、こだわりのある方は、実の写真などを確認してから購入しましょう。
植え付け
イチジク(無花果)の植え付けは、11月から3月の休眠期が適しています。寒い地域の場合は春に植え付けを行った方が凍害を防げます。
地植えする場合は、植え付ける根より2倍程の大きさの直径、深さの穴を掘り、掘り上げた土に腐葉土と赤玉土、肥料を適量混合したものを穴の深さの半分程度埋め戻します。苗木の根を崩して根を広げてから残りの土を戻すように植えます。苗木を植えたら、支柱を立ててからたっぷりと水やりをします。
剪定・切り戻し
まだ実をつけていない1年目のイチジク(無花果)は主軸を2本残し、短く30cm程に剪定します。果実が実り始めた2年目からの株は、秋の実りが終わり収穫が終ってから、冬に剪定を行います。イチジク(無花果)は品種によっては冬の始まりまで実る品種もあるため、果実が完全につかなくなってから剪定します。真冬に剪定する事によって株に負担をかけず春の生長に向けて準備をすることができます。
植え替え・鉢替え
鉢植えの場合は、2年に一度くらいのタイミングで植え替えが必要です。現在の鉢よりも一回り大きな鉢に新しい土を使って植え替えましょう。鉢から取り出した株は根をハサミで1/3程カットします。新しい鉢に1/3程の土を入れ、その上に根をほぐして植えます。
花
イチジク(無花果)の花は、「花のう」と言われる袋状の実の中に外に見えない形状で咲きます。花の間の花のうは緑色をしています。花から果実に変わると花のうは赤みを帯びはじめます。
収穫
イチジク(無花果)の収穫の目安は果実の先端が割れてきたときが収穫時期です。
収穫時期の熟したイチジク(無花果)は雨に濡れるとはじけやすいので、寒冷紗とビニール袋などを重ねて、雨除けの工夫をするとよいでしょう。
イチジク(無花果)を早く熟させる「オイリング」
イチジク(無花果)を1週間から10日ほど早く成熟させる方法を「オイリング」といいます。
これは古くギリシア、ローマ時代から行われてきました。イチジク(無花果)の果実の先端がうっすらと赤くなってきたころに、細いストローやスポイトを使ってくぼみに植物油を1~2滴たらします。植物油は、オリーブオイルやなたね油、ごま油などが適しています。果皮にはたらさないように注意します。
そのメカニズムははっきりとはわかっていませんが、オイルを垂らすことで果実からエチレンという物質が出て、成熟を早めるといわれています。
夏越し
イチジク(無花果)は夏の暑さには強い植物です。ただし、気温が28℃以上になると果実の皮が固くなります。直射日光が当たりすぎる場合は日よけをしましょう。
増やし方(株分け、挿し木、葉挿しなど)
イチジク(無花果)は挿し木で増やすことができます。細すぎず元気な枝を使うとよいでしょう。枝を斜めに切るか、えんぴつのように削ると水の吸いあげがよくなります。切り口が乾かないように削ったらしばらく水に浸けましょう。挿し木用の土に挿し、土が乾かないように日陰でビニール袋などをかぶせて管理します。