祈りの植物|7月~ハスに込めた思い

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7月の祈りの植物はハス。7月は、ハスの花の最盛期。日本各地の名園だけでなく、寺の池や水鉢でもハスが咲き誇っています。どうしてこの花がそれほどに尊ばれたのでしょうか。

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仏教の植物といえば・・・?

蓮畑

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仏教の植物といえば、みなさんには何が思い浮かぶでしょうか? お釈迦様がその木の下で入滅したという沙羅双樹(さらそうじゅ=シャラ)、お釈迦様の誕生を祝う花まつりに飲む甘茶の原料になるアマチャヅルでしょうか。

でも、シャラにしてもアマチャヅルにしても、その姿はパッと思い浮かびません。日本人が仏教の植物と聞いて真っ先に思い起こすのは、ハスの花ではないでしょうか? 仏画では、お釈迦様がハスの花の上に座る姿が描かれます。

ハスは、仏教では極楽浄土に咲く花と考えられ、尊ばれてきました。7月は、ハスの花の最盛期。日本各地の名園だけでなく、寺の池や水鉢でもハスが咲き誇っています。どうしてこの花がそれほどに尊ばれたのでしょうか。

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泥の中で育った美しい花

お盆 蓮

ハスの花が尊ばれた理由は、泥のなかにいても泥には染まらず、強く芽を出して美しい花を咲かせるからです。つまり、どんな困難な状況にあっても、上を向いて育っていくこと。お釈迦様の苦難と悟りを象徴する植物なのです。

確かに、人が足を取られるような泥から、こんなに清らかな花が咲くことは不思議です。葉も同じく、雨などの水滴をはじき、力強い美しさを見せてくれます。ツヤツヤ、サラサラとも表現できない独特の質感がハスにはあります。

花の時期こそ短いものの、ハスは泥のなかでしっかりと根を張ります。その力強さ、清らかさ、美しさが、お釈迦様が苦難のなかで悟りに達した道に通じるものとして、ハスの花は仏教を象徴する植物に位置付けられました。

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お釈迦様が座っているのは本当にハス

スイレン

ただ、そこでひとつ疑問が浮かんできます。仏画でお釈迦様が座っているのは、本当にハスなのでしょうか? 日本のハスは、長く伸びた茎に花が咲きます。古い仏画でお釈迦様が座っているハスは、茎が見えず平たく咲いています。

経典を読んでみましょう。『仏説阿弥陀経』には、「極楽浄土の池には車輪ほどの大きさの蓮華が咲き、青蓮華は青く、黄蓮華は黄色に、赤蓮華は赤く、白蓮華は白く輝く。極楽浄土はこうして功徳の荘厳をなしている」という内容があります。

『法華経』は、サンスクリット語で「サッダルマ・プンダリーカ・スートマ」といい、日本語に訳すと「正しい教えである白蓮華の経典」の意味。プンダリーカは白蓮華を指し、さまざまな色の蓮華のなかでも最も優れているとされます。

蓮華とはハスの花のことですが、日本人にとってのハスの花色は、白と淡い桃色、淡い紅色です。青色、黄色のハスといわれても…。これらの経典に登場するのは、日本人がイメージするハスではなく、スイレンのことなのでしょう。

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ハスとスイレンの違い

Aquatic Garden

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ハスはスイレン科ハス属の多年草、スイレンはスイレン科スイレン属の多年草です。同じスイレン科の多年草でも性質は大きく違い、ハス属は水面より高い位置に花を咲かせ、スイレン属は水面に浮かぶように花を咲かせます。

お釈迦様が生まれた北インドでは、ハスとスイレンのどちらも自生します。日本に自生していたのはハスで、スイレンはヒツジグサと呼ばれる品種があったものの、カラフルな品種は明治時代に観賞用として海外から入ってきました。

スイレンは、「モネの庭」に見られるように、ヨーロッパでも人気の植物です。欧州や日本での品種改良で多彩な花色、多様な花型が生まれ、今も全国各地の公園や観光ガーデンで多くの人の目を楽しませています。

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違いはあっても本質は同じ

睡蓮

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見た目にはまったく違うハスとスイレン。お釈迦様や仏教を伝えてきた人たちがそれを植物学的に見分けていたかは、そんなに重要なことではありません。仏教徒がハスとスイレンを尊んだのは、ひとつの共通項があったからです。

それは、前述の通り、泥のなかからきれいな花を咲かせること。たとえ今の生活は泥のなかにように苦しく厳しくても、願い続ければ、いつかは美しい花を咲かせられる。それが、「祈りの植物」としてのハスとスイレンの本質です。

もしかしたら、モネもその本質を見抜いていたのでしょうか。水面に咲く美しい花よりも、泥のなかにしっかりと張られた根の力強さを思って描いたのだとしたら、私たちがモネの絵を見るときの印象は違ってくるかもしれません。

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ハスも家庭で手軽に育てられます

手乗りハス

手乗りハス 写真提供/大木園芸

ハスやスイレンは、育てようとするとちょっとハードルが高いと思われがちです。品種改良されたスイレンなら、水蓮鉢で育てて夏を楽しめます。でも、ハスは池が造れるような庭がないと難しいのでは…?

そう思う方には「手乗りハス」がおすすめです。千葉県の生産者が育てる観賞用のハスで、ポット苗が4~7月頃に園芸店などで販売されます。水蓮鉢やバケツに水生植物用の土を入れて植え替え、広いスペースは要りません。

植え替え時などにレンコンを傷めないことが栽培のポイント。そうすれば、泥のなかからしっかり芽を出し、毎年きれいな花を咲かせてくれます。花の後に残る、タネの入った花托(かたく)の姿にも独特の風情があります。

地方でも農地が減り、ハス田を見かけることは少なくなりました。子どもたちがハス田に入って泥んこになることもほとんどありません。ガーデニングで、子どもたちにハスの強さと美しさを伝えてあげたいですね。

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