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祈りの植物|6月~アイヌが大切にした植物たち

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ハルニレ:アイヌが植物では最高位のカムイとして敬った高木

北海道の先住民族であるアイヌ。6月の祈りの植物は、アイヌが大切にした植物たちをご紹介します。

目次

自然の恵みをくれるカムイ

イチイ

写真AC
イチイ:弓などの材料に使われたほか、赤い仮種皮は食用にも

北海道の先住民族であるアイヌは、あらゆるものに魂が宿ると考え、人間に自然の恵みをもたらしてくれるもの、人間が生きていくのに欠かせないもの、人間の力が及ばないものをカムイ(神格を持つ霊的存在)として敬ってきました。

動物は食料になる肉、衣服になる毛皮を与えてくれるカムイです。アイヌはその恵みに感謝し、カムイの魂を丁重に送ります。熊のカムイを送る「イオマンテ(イヨマンテ)」は、アイヌの大切な儀礼のひとつとして知られています。

植物についても、食料や薬になったり、道具になったりと、自然の恵みを与えてくれるカムイとして扱われてきました。そんなアイヌの神話で、地上に最初に降りてきた植物は、ハルニレとイチイ、そしてオオヨモギとされています。

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最初に地上に降りた3つの植物

ヨモギ

getty images
ヨモギ:災厄除けの植物として今も全国各地で使われています

ハルニレはニレ科の高木で、主に北日本に分布します。アイヌはこの木を、火の神を生んだ女神と考え、最高位のカムイとして敬いました。樹高2030mにもなる巨木の姿は圧巻です。北海道を旅した時はぜひ探してみてください。

イチイは、イチイ科の常緑針葉樹。高さ1015mになりますが、生長が非常に遅いため生け垣やトピアリーなどに利用され、庭好きな方にはよく知られています。アイヌはこの木で、狩猟に使う弓や漁具をつくったそうです。

もうひとつは、キク科ヨモギ属のオオヨモギ(別名ヤマヨモギ)。草丈が150200㎝あり、関東以西の暖地の道端や土手で見られるヨモギに比べて、背が高いのが特徴です。アイヌはオオヨモギを霊力のある草と考え、だんごや粥に混ぜて食べ、傷薬として使ったほか、家の入口に吊るして魔除けをしたといいます。

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香りの強い植物は魔除けの植物

行者ニンニク

写真AC
行者ニンニク:秋~春先に球根、苗が園芸店などに出回ります

オオヨモギとヨモギは草丈こそ違いますが、同じように独特な香りを持っています。香りの強い植物で魔除けをする風習は、アイヌだけでなく世界中に例があります。吸血鬼ドラキュラを近づけないためニンニクを使うのは有名な話ですね。

アイヌはほかにも、ニンニクに似た香りを持つ「行者ニンニク(ギョウジャニンニク)」を魔除けに利用していました。本州でも高山帯に分布し、修験道の行者が山で修行するとき栄養補給に食べたことからその名が付いたといいます。

行者ニンニクの茎と葉はシャキシャキとおいしいだけでなく、疲労回復や免疫力アップの効果があるアリシンという成分を多く含みます。スーパーにはほとんど流通しない山菜なので、家庭菜園で育ててみてはいかがでしょうか?

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クロユリは想いを伝える花?

クロユリ

写真AC
クロユリ:草丈50㎝。虫を呼ぶため、花は強い香りを持ちます

アイヌと植物の関係を調べていくと、魔除け以外にも、いくつかの恋の伝説にたどりつきます。代表的なのが、クロユリの話です。5月から6月にかけて咲く、北海道を代表する花のひとつで、山野草の愛好家に珍重されています。

アイヌの女性はこの花を使って恋を占ったといいます。愛する人の家のそばにそっとクロユリを置き、相手が気付いて花を手に取れば、思いが届く。そして、二人は必ず結ばれる。そこから生まれたクロユリの花言葉は「恋」です。

ところが、この花には「呪い」という花言葉もあります。戦国武将の佐々成政は側室が懐妊した際、自分の子ではないと思い込んで殺害。彼女は最期に「立山にクロユリの花が咲いたら、佐々家は滅びる」と呪ったといいいます。

恋と呪い。相反する花言葉を持つクロユリには、清楚という印象を持つ人と、不吉という印象を持つ人がいるかもしれません。それでも、アイヌの女性が言葉の代わりにこの花を置いたという、恋の伝説のほうを信じたいですよね。

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クローバーにも恋の伝説が

シロツメクサ

クローバー(シロツメクサ):花言葉「約束」の意味は…

アイヌにはこんな伝説もあります。永遠の愛の約束を交わした女性イロハに会うため、青年アッパは夜の湖に舟でこぎ出しました。イロハとアッパは部族が違うため、1年に一度しか会うことがかないません。いよいよ今日がその日です。
しかし、強風にあおられ、舟は転覆。アッパは、イロハが待つ湖岸へ泳ぎますが、冷たい水の中でついに力尽き…。イロハは、流れ着いたアッパの体と自分の体を紐で結び、湖に身を投じました。翌日、湖岸にはクローバーの花が咲き乱れていたとか。

クローバーの花言葉は「約束」。明治時代に牧草としてヨーロッパから導入されたクローバーは、伝統儀式に使われたわけではありませんが、イロハとアッパの伝説を知ると、永遠の愛を誓う、祈りの花に生まれ変わります。

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