祈りの植物|9月~沖縄の風習に学ぶ
LOVEGREEN編集部
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基地問題などが残るままで単純に喜ぶことはできない沖縄ですが、この美しい島が日本に存在することには感謝しかありません。大らかな人たちと豊かな自然、独特の文化、それぞれが魅力的です。
私たち園芸ファンにとっては、沖縄から届く植物も今や欠かせないものになっています。本州に住んでいても手に入る身近な園芸植物の中から、沖縄のウチナンチュが祈りを込めてきた3つの植物の話を紹介しましょう。
目次
ゲットウのさまざまな効果
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沖縄のまちを歩いていると、家の庭に咲いているゲットウをよく見かけます。ゲットウは、東アジア原産のショウガ科ハナミョウガ属の多年草で、台湾では「月桃」と書かれることから、日本語読みでゲットウの名が付きました。
沖縄では、虫に刺されたときにゲットウの根を切って火であぶって治療に使うほか、果実や種子を健胃薬に用いるそう。また、甘い香りを持つ葉はハーブティーに利用され、乾燥させてサシェにすると虫除けの効果が期待できます。
この葉で包んだ餅「ムーチー」は沖縄の伝統食で、毎年旧暦12月8日に食べて健康長寿を祈願し、厄除けをします。ゲットウの葉には防腐効果もあり、独特の香りがムーチーに移って美味しくなるため、伝統食にも重宝されてきたようです。
幸運をもたらすガジュマル
ユニークな形の観葉植物として人気のガジュマルも、沖縄を旅しているとよく見かける木です。クワ科イチジク属の高木で、横に枝を大きく広げるのが特徴のひとつです。沖縄ではこの木に精霊「キジムナー」が住むとされてきました。
キジムナーには、赤い髪の子どものような姿をしているなど諸説がありますが、人と一緒に漁をしたり、年の瀬を人間と一緒に過ごすといった伝承も。キジムナーと仲良くなればその家は栄え、もし嫌われれば没落するともいわれています。
そんな精霊が住むガジュマルは、幸運をもたらす木として敬われています。鉢の中に小さく仕立てられた観葉植物のガジュマルには、小さなキジムナーがいて、あなたの家の幸せを守ってくれるかもしれません。大切に育ててあげましょう。
サトウキビにそんな使い方が!
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沖縄の伝統行事のひとつに、旧盆があります。初日にご先祖さまをお墓から自宅の仏壇に迎え、ゆっくりとしてもらってから、3日目の夜に戻っていただくもので、お盆の祭事としては他地域と変わりません。ただ、そのお供えが独特です。
ひとつめは「グーサンウージ」。沖縄の方言で、グーサンは「杖」、ウージは「サトウキビ」のことです。つまり、「サトウキビの杖」。サトウキビの茎を2本用意して、ご先祖さまが帰る時に転ばないように、杖としてお供えします。
サトウキビが黒糖の原料になることは知っていても、こんな使い方があることには驚きです。それほど、沖縄の人たちにとってサトウキビは身近な植物なのです。「ご先祖さまが転ばないように」という優しさにも感激しますよね。
切れ端は悪霊除けに
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グーサンウージは、茎の7節分を切ってつくります。そこで出た切れ端は「ミンヌク」といい、盆提灯の下などに置きます。これは、お供えもの目当てにご先祖さまに付いてきた悪霊や餓鬼に与えるものです。
「ミンヌクを置いておくから、仏壇のお供え物には手を出さないようにしなさい」ということ。こんな悪霊への心配り(?)も、やはり沖縄独特の風習といえます。ちなみに、旧盆に供えるジューシーにも工夫があります。
ジューシー(豚肉などが入った沖縄の炊き込みごはん)は、沖縄を訪ねた人なら一度は食べたことがあるでしょう。旧盆で供えるジューシーには、ショウガやヨモギなどを加え、その強い香りで悪霊を除ける風習があるそうです。
ガーデンライフをもっと楽しく
植物は力強く美しく、私たちに癒しを与えてくれます。それを観賞するだけでもよいのですが、ひとつひとつの植物に込められた人の思いや祈りを知ると、ガーデンライフはもっと楽しくなっていきます。
上の写真は、愛知県のある家庭で、ポット苗から育てられたサトウキビ。ほぼノーメンテナンスで毎年新芽を出し、5年目の秋を迎えています。風が吹くと葉がふれあう音が聞こえ、涼しさを与えてくれているそうです。
「黒糖をつくるほどの畑はできないけれど、来年のお盆に供える杖をつくってみようかな」と庭主さん。さてさて、どうなるでしょう。杖を持った手をなめたら、やっぱり甘いのかな? みなさんも試してみませんか?
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