砂糖をつくりだす植物たち|山下智道の世界の文化と植物紀行#11
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私は昔から甘党で、幼い頃から大人に交じって腰をかけ、熱くて苦いコーヒーをちびちび飲み、適当なお菓子をほおばるのが大好きだった。
時にはお抹茶と和菓子。時には、紅茶と洋菓子。あわただしい食事の後に、この時間だけがゆったり流れていて、大人になったような気分になり嬉しかったのかもしれない。
今なお自称コーヒー愛好家の私としては、コーヒーのお供のお菓子選びは、その日のテンションに影響する重要なルーティンでもある。
お菓子の甘味は繊細だ。コーヒーのバランスに合わせペアリングするバランスが重要になる。その大切な甘味は、植物からつくりだされている。
甘味をつくりだす植物たち
お菓子でもっとも重要となる甘味は、どういう植物から作られているのだろうか?
ざっと洗い出してみると、以下のような植物がある。
・サトウキビ(Saccharum officinarum)
・サトウカエデ(Acer saccharum)
・オウギヤシ(Borassus flabellifer)
・スイートソルガム(Sorghum bicolor Moench)
・アマヅラ(Parthenocissus tricuspidata)
・サトウダイコン(Beta vulgaris ssp. vulgaris)
中でもっとも一般的でメジャーなのが、サトウキビとサトウダイコンではないだろうか。

サトウキビ畑
サトウキビの栽培種の起源はニューギニア島とその近くの島々といわれている。世界各地の熱帯、亜熱帯地域で広く栽培される巨大なイネである。
沖縄に行ったことのある人なら分かると思うが、サトウキビ畑に起立する、人の背丈以上の大きなイネ科植物である。

サトウダイコン
サトウダイコンは地中海を原産地として、温帯から亜寒帯を中心として栽培されており、寒冷地作物と呼ばれる。さらに、ステップ気候(※)や砂漠気候でも人工的に水を引いて栽培している地域がある。
※雨が少なく、草原(ステップ)が広がる地域の気候
砂糖の起源はどこ?
さて、砂糖の始まりはどこからなのだろうか? 砂糖の歴史はスケールが大きすぎて検討もつかない。
英語の「sugar」の語源にそのヒントが隠されている。
「sugar」の語源であるフランス語の「sucre」は、古代インドのサンスクリット語の「sarkara=サルカラ」が語源とされている。
インドで薬用として重宝された砂糖

紀元前6世紀頃のサンスクリットの書物には、医薬用としてすでに砂糖が登場している。また、最古の仏教典には「砂糖」は薬として記されている。病気による衰弱や疲労の回復に薬用として重宝された事が、今の砂糖の発祥とされている。古代インドにおいて砂糖は、非常に高価で貴重なものであった。
砂糖が世界史に登場するのは紀元前4世紀、アレキサンダー大王のアジアからインドに至る遠征時の記録の中だ。
「噛むと甘い葦(よし)・噛むと甘い石がある。」等の記述がある。これらの記録から現代の黒糖のようなものがインドで作られていたのであろう。
砂糖の製造は、古代インド北部で始まったとされている。人類で初めて砂糖を作ったインド人は、サトウキビの汁を土鍋に入れ直火で煮詰め、放熱すると汁が固まり貯蔵性が良くなることを発見した。
ヨーロッパで発展した甜菜糖

さて、ここまでの流れだと、砂糖=サトウキビの印象が強いが、ヨーロッパで砂糖といえばサトウダイコンの甜菜糖のことを指す。
サトウダイコンはヒユ科アカザ亜科フダンソウ属の二年生の植物で、ロシア料理のボルシチなどに用いられるビーツと同じ種に属する、砂糖の原料用に品種改良された品種群である。
甜菜糖が発見されたのは、今から約250年前の1747年。ドイツの化学者マルグラーフが、サトウダイコンの根から砂糖を分離することを発見した。サトウダイコンのしぼり汁をブランデーで抽出すると、サトウキビから抽出する場合と同程度の砂糖の結晶がとれることを示した。これにより、サトウキビに頼りきっていた砂糖がサトウダイコンで補えるようになり、ヨーロッパ中に甜菜糖が広がった。
インフルエンサー的な役割として、これに一役買っていたのがナポレオン・ボナパルトで、ナポレオンによる「大陸封鎖」がきっかけとされている。
サトウキビとサトウダイコン|できる砂糖の違いは?
サトウキビとサトウダイコンからつくられる砂糖の違いについては、精製されている商品としては大きな差はない。
強いて違いを挙げるなら、南国生まれのサトウキビには体を冷やす作用があり、北国生まれのサトウダイコンには体を温める効果がある。冷え性の人には、甜菜糖が良いとされている。
サトウダイコンから砂糖を作る工程
サトウダイコンから砂糖を作る工程はおおよそ以下になる。
・サトウダイコンをきれいに洗う
・洗ったサトウダイコンを裁断機にかけ、千切り大根のようにする
・温水に浸して糖分を抽出した糖液を煮詰めて糖分の結晶を分離させ、砂糖を作る
サトウダイコン1kgから約160gの砂糖が取れるとされている。
砂糖は製造方法で2種類に分けられる
砂糖はサトウキビやサトウダイコンなどの原料にかかわらず、製造方法の違いによって「精製糖」と「含蜜糖」という2種類に分類される。
精製糖は、工場で遠心分離機などを使う近代的な製法を用いて、砂糖の結晶と蜜を分けて結晶だけを取り出した砂糖のことを指す。例えばグラニュー糖、上白糖、粗糖等。
含蜜糖は、原料から抽出した糖汁を煮詰めて作られ、ミネラル分も原料から除去されることなく豊富に含まれているのが特徴。高級な和三盆や甜菜糖、赤糖もこれにあたる。

シャーマンハーブジャーナリスト/野草研究家 山下智道
生薬・漢方愛好家の祖父の影響や登山家の父の影響により、幼少から植物に親しみ、卓越した植物の知識を身につける。現在では植物に関する広範囲で的確な知識と独創性あふれる実践力で高い評価と知名度を得ている。国内外で多数の観察会、ワークショップ、薬草ガーデンのプロデュース、ハーブやスパイスを使用したブランディング等、その活動は多岐にわたる。TV出演・著書・雑誌掲載等多数。







































