日本の秋を彩る菊(キク)|魅力や特徴、育て方、種類から暮らしのあしらいまで
更新
公開

日本の秋を彩る代表的な花であり、古くから私たちの生活や文化に深く根付いてきた「菊」。仏花や和のイメージが強いかもしれませんが、近年では「マム」という愛称で親しまれる洋菊の品種改良が進み、色鮮やかでポップな姿が海外でも人気を集めています。和モダンなインテリアにマッチする洗練された花姿から、ナチュラルガーデンを彩る素朴な野菊まで、菊の世界は私たちが想像する以上に奥深い魅力に溢れています。
そんな菊の持つ歴史や縁起物としての背景、初心者でも安心して始められる育て方、多様な品種、そして日常やハレの日を彩る花あしらいや花言葉まで、菊の魅力を解説します。
目次
- 菊の特徴と魅力|古くから愛され、縁起物とされてきた理由
- チャレンジしてみよう!菊の育て方
- 多彩な菊の種類|人気の洋菊から味わい深い「野菊」まで
- 菊を暮らしに取り入れよう|花あしらいと花言葉で心豊かな毎日を
菊の特徴と魅力|古くから愛され、縁起物とされてきた理由

菊は、中国原産のキク科キク属の多年草です。日本へは奈良時代から平安時代にかけて、薬草として渡来しました。その後、江戸時代に花の美しさが大流行し、日本独自の「和菊」として目覚ましい進化を遂げました。日本の皇室の紋章にも採用されており、日本を象徴する花の一つとされています。
縁起物とされてきた理由
菊の最大の特徴は、その気高い美しさと、生命力の強さです。秋の始まりから晩秋まで咲き続ける開花期間の長さから「不老長寿」や「無病息災」の象徴とされてきました。
日本へ渡来してからも、9月9日の「重陽(ちょうよう)の節句」には、花びらを浮かべた菊酒を飲んだり、菊に綿をかぶせて露を拭う「菊の被綿(きせわた)」を行ったりして、不老長寿や無病息災を願ってきました。
また、「邪気を払う強い香り」「長持ちする生命力」から、邪気払い、長寿や繁栄の象徴として祝事やお正月、お供えなどに幅広く用いられている花です。
チャレンジしてみよう!菊の育て方

菊は丈夫で環境適応力が高く、育てやすい植物です。大輪菊や中輪菊は適宜支柱を立てるなど仕立てをする必要がありますが、小輪菊やポットマムなどは、小ぶりで管理が楽なことから、初心者の方におすすめです。適切な環境と手入れを覚えて、毎年きれいな花を咲かせましょう。
用土
過湿に弱く、水はけの良い土壌を好みます。市販の菊用の培養土を使用するとよいでしょう。
日当たり・置き場所
日当たりと風通しの良い場所を好みます。日照が不足すると、茎が徒長し、花付きが悪くなります。真夏の強い直射日光は葉焼けの原因となるため、午後は遮光ネットなどを使用して西日を遮るようにするとよいでしょう。
水やり
地植えは、根付いた後は降雨に任せて問題ありません。
鉢植えは、土の表面が乾いたら鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと与えます。
肥料
植え付け時に元肥を、春の生育期(4月~6月)と、秋の花芽が形成される時期(8月~9月)に緩効性肥料を施します。真夏の猛暑期は根が傷みやすいため施肥を控えましょう。
病害虫
春から初夏にかけてアブラムシが発生します。見つけ次第薬剤を散布するなど、対処しましょう。また、夏に乾燥が続くとハダニが発生します。水やりの際に、葉裏まで水をかけるようにして予防しましょう。
摘心(花をたくさん咲かせるテクニック)
初夏に伸びてきた茎の先端をカットすることで、脇芽が複数伸びて枝が増え、秋にはこんもりとしたドーム状にたくさんの花を咲かせます。
菊の詳しい育て方のコツやメンテナンス方法について知りたい方は、以下の植物図鑑も合わせてご覧ください。
多彩な菊の種類|人気の洋菊から味わい深い「野菊」まで
「菊」と一口に言っても、その種類は実に多様です。世界中で愛されるスタイリッシュな品種から、日本の野山にひっそりと咲く可憐な野菊まで、代表的な種類をご紹介します。
モダンで育てやすい洋菊「ポットマム」

ガーデニングやフラワーアレンジメントで人気なのが洋菊(マム)です。中でも「ポットマム」は、鉢植え(ポット)で楽しむために海外で品種改良された矮性の菊です。こんもりとまとまった美しい草姿になり、摘心などの手間をかけなくてもたくさんの花を咲かせるため、初めての方でも育てやすいのが特徴です。
花色も赤、ピンク、オレンジ、黄色、白、さらには複色などバリエーション豊かで、花の形も一重咲き、八重咲き、ポンポン咲きなど多岐にわたります。秋のベランダや玄関先を、ポップな雰囲気で彩ってくれます。
自然の風景を紡ぐ素朴な魅力「野菊」

園芸品種のような派手さはありませんが、日本の風土に溶け込み、野趣あふれる素朴な美しさを持つのが「野菊」と呼ばれる仲間たちです。キク属ではない種類も含まれますが、古くから愛されてきた種類を集めました。ナチュラルガーデンや山野草の寄せ植えに欠かせない存在であり、季節の移ろいを静かに教えてくれます。
シオン(紫苑)
秋の澄んだ空に向かって、まっすぐに茎を伸ばし、淡い紫色の花をたくさん咲かせます。秋風に揺れる姿が幻想的な花です。
ノコンギク(野紺菊)
日本の野山に自生する代表的な野菊。薄紫から青紫色の可憐な花を咲かせ、どこか懐かしい田園風景を思い起こさせます。非常に丈夫で、半日陰でも育ちます。
ミヤコワスレ(都忘れ)
古くから日本人に愛されてきた、しっとりとした気品漂う多年草。春〜初夏にかけて深みのある紫やピンク、白の上品な花を咲かせます。日陰にも強い優れものです。
イソギク(磯菊)
海岸の岩場に自生する強健な野菊。花びらを持たず、黄色い筒状花だけが密集して咲くユニークな姿と、葉の縁を縁取るような白い斑が特徴で、カラーリーフとしても楽しめます。
ユウゼンギク(友禅菊)
北米原産ですが、日本の友禅染のように華やかな花色にちなんで名付けられました。花数が非常に多く、満開時には一面を色鮮やかに埋め尽くします。
菊を暮らしに取り入れよう|花あしらいと花言葉で心豊かな毎日を

栽培を楽しむだけでなく、お部屋に飾ったり、ギフトとして贈ったりするのも菊の醍醐味です。現代の暮らしに溶け込むモダンなコーディネートと、気持ちを伝える花言葉をご紹介します。
花あしらい
菊の切り花の魅力は、日持ちの良さです。茎の切り口をハサミで切るのではなく、手で折るようにして水揚げすると、水の吸い上げが格段に良くなり数週間楽しめます。仏花のイメージを覆すような、丸くて愛らしい「ピンポンマム」や、一本の茎からいくつもの花を咲かせる「スプレーマム」は、モダンなインテリアにも見事に調和します。
特におすすめなのが、お正月の花あしらいです。不老長寿の象徴である菊は、お正月のしつらえに最適。松や南天、千両などの伝統的な縁起物と、ビビッドな色合いのマムをガラスのベースやスタイリッシュな陶器に合わせれば、伝統とモダンの両方を感じさせる華やかな空間が完成します。お正月だけでなく、日常使いでも、くすんだアンティークカラーのマムを一輪挿しに飾るだけで、洗練された秋の演出が可能です。
プロのおしゃれな花あしらいアイデアや新年の飾り方については、以下の記事で詳しく解説しています。
花言葉

花を贈るときや、部屋に飾るときに知っておきたいのが「花言葉」です。菊全体には気高く凛としたメッセージが込められています。
菊全体の花言葉は「高貴」「高尚」です。
また、一本の茎から枝分かれして複数のかわいい花を咲かせる「スプレーマム」も、清らかで誠実なメッセージを持っています。
スプレーマムの花言葉は「清らかな愛」「高潔」です。
菊は、古くから受け継がれてきた日本の心でありながら、現代のライフスタイルに合わせて多彩に変化し続ける魅力的な植物。庭を鮮やかに彩る植物として、野山に佇む風情ある姿として、そして室内を飾る一輪として、楽しみ方は多岐にわたります。
庭やベランダで育てて開花を待つ時間も、花器に生けて季節の移ろいを感じるひとときも、私たちの心に癒やしと華やかさを与えてくれます。ぜひ、お気に入りの種類やあしらい方を見つけて、菊のある生活を楽しんでみてください。






































