祈りの植物|11月~つる植物に込めた願い

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11月の祈りの植物はつる植物。日本人におなじみのデザインに「唐草文様」がありますが、この「唐草」って、どんな植物なのでしょうか?

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唐草文様

Adobe Stock唐草模様風呂敷

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日本人におなじみのデザインに「唐草文様」があります。昭和30~40年代初頭にかけて、唐草文様の風呂敷はほとんどの家にあったはず。そこまでいうと、少し言い過ぎかもしれませんが、それほど昭和の日本ではポピュラーなものでした。

若い人は唐草文様の風呂敷は使ったことも、見たこともないかもしれません。でも、幼い頃に地域のお祭りで獅子舞をやったことがある人なら、獅子の胴体の部分になる布で、濃緑に白い文様の唐草を見たことがあるのではないでしょうか。

文様には縁起のいい植物や動物などのモチーフが使われますが、唐草文様もそのひとつ。正月や祭礼で活躍する獅子舞に唐草が使われているのも、やはり縁起がいいからです。ところで、この「唐草」って、どんな植物なのでしょう?

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唐草という植物はない?

Adobe Stock ぶどう畑

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実は、唐草という植物はありません。唐草文様は、5000年以上前の古代エジプトやメソポタミア文明の頃からあり、世界中に広がりました。その土地その土地で独自のデザインになって、建築や宗教画などに取り入れられていったのです。

それがシルクロードを通って日本にも伝わりました。中国から伝わったから唐草という名前がついたのでしょう。ただし、それは中国原産の何々という植物を指すわけではありません。唐草文様に使われる植物にはさまざまな種類があります。

例えば、ツタなどのつる植物、ブドウやイチジクなどの果樹、ほかにアカンサスやハス、ナツメヤシ、アカシアなどもモチーフになっています。それぞれ、つるや枝・茎が絡み合う様子が、無限に広がる文様に取り入れられているのです。

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西洋に多いのはブドウの文様

ブドウ柄のプラ鉢

ブドウ文様はテラコッタなど鉢のデザインでもおなじみ

唐草文様と呼んでいいのかは微妙ですが、西洋に多い類似の文様はブドウです。古代エジプトやギリシアの神話では、豊饒(ほうじょう)の神がブドウの栽培を広げたとされ、そうした神を祀る神殿にはブドウのレリーフが飾られました。

また、キリスト教では、ブドウは救世主イエスを象徴する聖なる木と考えられ、その実からできるワインは、イエスの血と考えられています。こちらもやはり、ブドウを豊饒のシンボルとして、神に感謝を捧げる文様になっています。

ヨーロッパ製のテラコッタにブドウが描かれていることがありますが、これはキリスト教の伝統に基づくデザインです。ブドウ柄のテラコッタで、ブドウを育てるときには、豊かな実りを神に祈りましょう。もちろん、栽培に手をかけることもお忘れなく。

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日本の唐草文様のモチーフは

Adobe Stock ツタ

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それでは、日本の唐草文様の植物は? 風呂敷の模様はデフォルメされていて、もはや何なのかよく分かりません。ただ、モチーフになったのはツタ、スイカズラなどのつる植物だと考えられます。つる植物に日本人は古来、ある祈りを込めていました。

つる植物は、つるをぐんぐんと伸ばして広がっていきます。このつるのように家族、一族が繁栄してほしいという祈りです。ツタは、縦横無尽に広がり、高くまで届き、一族繁栄の象徴としてはぴったりの植物だったのです。

 

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江戸時代、蔦紋(つたもん)は将軍を生んだ松平家の家紋となり、8代将軍徳川吉宗はまさに、この蔦紋を使いました。ちなみに蔦紋は、10大家紋のひとつになっています。江戸期の日本人にとって、ツタは重要な植物のひとつだったのです。

ちなみに、余談ですが、ツタに別の祈りを込めた人たちがいました。江戸時代の遊郭で働いていた女性たちです。彼女たちは、得意客をつるで巻いて決して離さないよう、着物などにツタの文様をひそかにあしらったといわれています。

10大家紋

柏紋(カシワ)、片喰紋(カタバミ)、桐紋(キリ)、鷹の羽紋、
橘紋(タチバナ)、蔦紋(ツタ)、藤紋(フジ)、
茗荷紋(ミョウガ)、木瓜紋(ボケ)、沢瀉紋(オモダカ)

鷹の羽紋以外はすべて植物がモチーフです。

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ツタを植える? 植えない?

壁面に枝を伸ばすナツヅタ1

さて、ツタと一言でいっても、大きく2つの種類があります。蔦紋に使われているのは、日本にも自生するブドウ科ツタ属のツタ(学名Parthenocissus tricuspidata)。秋に紅葉した後、葉を落とすことからナツヅタと呼ばれる種類です。

 

アイビー

もうひとつは、おなじみのヘデラ(学名Hedera、別名アイビー)です。こちらは、ウコギ科キヅタ属の植物で、常緑で冬にも葉を落とさないため、フユヅタと呼ばれています。ガーデニングや寄せ植えのほか、公共緑化でも活躍しています。

 

つる性

どちらも魅力的ですが、ナツヅタには欠点がひとつだけ。ツタは建物の壁を吸盤で登っていきます。落葉しているときには、その吸盤の跡だけが壁に残ります。その風情にも味はあるのですが・・・。みなさんは、家族の繁栄を祈って、このナツヅタを植えますか?

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