門松やお正月飾りってどうやって作っているの? 長野県上田市の製作現場をレポート!
小野寺葉月
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お正月のお飾りといえば、「しめ飾り」「鏡餅」そして「門松」。今回は門松についてのご紹介と、お正月飾りを実際に制作されている長野県上田市のシルバー人材センター真田支所さんで製作現場を見せていただきました。
目次
そもそもお正月飾りって何?
門松
門松とは、歳神様を家や商店にお迎えするための依り代(神様が憑依するもの、宿るもの)と言われています。古くから、歳神様は高い山の上のほうにいらっしゃるものとして、初日の出とともに私たちの暮らす場所へ降りていらっしゃる・・・と考えられていました。
門松を飾る場所は?
門松を飾る場所は玄関や門の両脇です。門松は2個(雄松・雌松)で1対ですので、セットで飾るようにしましょう。また、マンションなどの集合住宅など、住環境によってスペースもまちまちですよね。飾る場所にあったサイズを選ぶようにしましょう。松の枝と水引だけのものなど簡略化された門松もありますので、ぜひ探してみてください。
しめ飾り
歳神様は玄関に飾ってあるしめ飾りを目印に、家々におりてこられます。いわば目印となります。お正月期間中は門松にやどります。鏡餅は歳神様のお供えとして飾られます。
歳神様が来るとどんないいことがあるの?
歳神様はたくさんの幸せをもたらすといわれているため、歳神様に健康や商売繁盛、五穀豊穣を願います。門松を飾らないと歳神様がその場所にとどまれないと言われています。飾ることで初めて歳神様から幸せをもたらしていただくことができます。
お正月飾りの製作現場に行ってきました!
今回、お正月飾りの製作をされている長野県上田地域シルバー人材センターの真田支所で、実際の制作風景を見学させていただくことができました。
ブルーシートを張った屋外スペースでミニ門松の製作が行われていました。
松飾り(ミニ門松)の作り方
切りそろえた竹3本を藁で編んだこもを巻いた缶に据え、場所を決めたらまわりに砂ともみ殻を入れて棒などで突き、動かないようします。
写真はミニサイズの松飾り(門松)で、軽量化のため土台の中は砂の代わりに紙が入っています。大きい松飾りと同じように棒で突いて竹や松が動かないようにしています。
竹の周りに松、南天をそれぞれさします。バランスを見ながら固定し、扇子を開いて完成です。
公益社団法人上田地域シルバー人材センターでは、20年前から毎年、真田支所でお正月飾りを製作されています。毎年秋ごろから製作を開始します。今年も12月15日に受注を締め切ったそうですが、注文数は年々増加しているそうです。お正月飾り11種類全部で今年は約3000個の受注があったそうです。
製作所の中はお飾りと材料がたくさん
上段左からから牛蒡じめ、玄関用前掛けじめ。下段左からおわん飾り(特注)、神棚用前掛けじめ、俵付輪じめ、三重巻じめ、輪じめ。
今年の見本品が作業所の入り口に並べてあります。20年前にこの事業を始めた当初から毎年試行錯誤を重ね、少しずつ改良したり新しいお飾りを製作し続けていらっしゃいます。
こちらは女性向けに考えられたお飾りだそうです。真ん中に水引で作られた鶴の飾りがついていてとても華やかです。
お正月飾りには8月ころに青田刈りをした青い藁を使っています。通常の藁と比較すると丈が長く、また通常の藁よりも細いのが特徴です。専用の田圃が2反ほどあり、来年用にもみを収穫する分を残して、藁が青い状態で収穫を行います。通常日本で生産されている稲は70cm~1m程度の長さですが、この稲は120cmほどありました。昔はこれぐらいの丈の稲が一般的だったそうですが、現在は改良が進んで背丈が短い稲が一般的になったんだそうです。
部屋の中につるされているのは俵付輪締じめと三重巻き輪じめ。袴のようになっている部分は藁ではなくスゲを使用しているそうです。
神棚用の牛蒡じめ。紙垂(しで)をつける前の状態まで作り終わったものがたくさん保管されています。
こちらは杓子じめです。三本一組で袋詰めされているものもあります。
牛蒡じめや杓子じめに使われている小さい松が藁に挿しやすいように、枝を斜めにカットしています。
輪じめを製作中。藁は機械で延してから編み始めるときっちり編めるそうです。
紐通しの道具を使って作業をしていきます。きつく結ってあるところに紐通しをさすのは力がいりますが、安定した手つきです。
編んだ藁を紐で固定していきます。
後ろで輪が緩まないようにしっかりと結びます。
ベースが出来上がった輪じめ。このあとうらじろやミカンなどで飾りが施されます。藁の青と黄金色の稲穂の対比が美しいです。
屋外の保管場所には、ほぼ仕上がった状態であとは南天をさすだけの門松がずらり並んでいました。
お正月飾りの制作班長の山口武さんにお話を伺いました。
「製作数が増えてきているので、材料調達が大変。一年中材料をどこで手に入れるか、考えているようなものです。真田のあたりでは寒いため太い竹が育ちません。細目の竹がほとんどなので、太い竹の調達が大変です。」
「今年は天候のせいか、南天が不作で。実がついたものが少ないのがくやしい。ひとつひとつ作っているので、すべて同じようにきっちりとはいかないけれど、見栄えが良くなるように心を込めて製作しています。毎年数量が増えているので年々大変ですが、やはり好きじゃなとできないかな、この仕事は」と笑顔でお話しされていました。
お正月飾りや門松、いつ飾ればいい?
いつ飾るのが正解?
門松を飾る期間を「松の内」といいます。松の内が明ける期間はいつなんだろう、と思うことはありますが、松の内はじつは12月13日からなんです。もう、松の内なんですね。松の枝を山からおろしてくる日が12月13日と決まっていて、その日からお正月あけて1月7日の七草粥の日までを松の内としています。関西などでは松の内が長く、1月15日という地方もあります。
しかし、現代はクリスマスの風習が日本でも根付いているため、クリスマスが終わってからお正月の準備を、というお店やご家庭が多いですよね。
また、門松は大掃除の終わった後に飾ることが原則です。歳神様をお迎えする準備ができていますよ、神聖な場所ですよ。という意味があります。
ですので、門松を飾る日は12月28日が最適だと言われています。漢数字の「八」は末広がりのため縁起がいいと考えられているからです。
飾ってはいけない日
反対に、飾ってはいけない日があります。
29日 漢数字の「九」が「苦」を連想させることから、飾ってはいけないとされています。
31日 新年の前日に飾るのは「一夜飾り」として縁起が悪いとされています。前日にあわただしく飾るのではなく、一年の終わりと始まりをゆったりした気持ちで迎えられるように、ということなんですね。
昔はそれぞれの家で作っていたお正月飾り。稲作の文化があってこその発展なんだろうなあと想像しながら製作所でお話を伺いました。今年はお正月飾りを飾る意味を実感しながら、子どもたちにも伝えていきたいなと思っています。
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