世界四大スパイスって知ってる?スパイスの歴史がすごい!
小野寺葉月
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世界四大スパイスを知っていますか?コショウ・ナツメグ・クローブ・シナモンの4つのことを言います。
目次
スパイスって?ハーブとどう違うの?
スパイスとハーブの違いをご存知ですか?多分、なんとなく「あれはハーブ・・・あれはスパイス」とイメージは持てても、なかなか説明しようと思うと難しいですよね。
英語辞書を引いてみると、herbハーブは「薬用植物・薬草・香草」スパイスは「薬味・香辛料」。広辞苑にはハーブ「薬草、香味料とする草の総称。」スパイス「香味料。香辛料。薬味」とありました。これを読んでも全然すっきりしなかったので調べてみたところ、いくつかの要素を複合的に判断していることがわかりました。
植物の異なる部分から作られる
シナモンとオレガノを例に説明してみましょう。シナモンは、樹皮がはがれたものをシナモンとして使用しています。乾燥した樹皮はシナモンの木の下に落ちているんだそうですが、シナモンパウダーはそれを粉砕して粉末状にしたものです。スパイスは芳香のある種子、樹皮、花、そして植物の根から作られていることが多いです。
ハーブと香辛料にはそれぞれの用途がある
香辛料は香りや味を楽しむだけでなく、着色や保存料としても使用されることがあります。パエリアに使用するサフランは米に鮮やかな黄色い色をつけることができます。水と相性がいいので、サフランを水にひたしておくと色がきれいに出ます。同じ黄色でもターメリックは油と相性がいいので、炒め物に入れると鮮やかな黄色が出ます。
ハーブは香りや風味、味を楽しむことが主目的ですが、衣類への染料として使用されることがあります。その場合は他の草木染と同じように、植物の染料で染めた後、金属の培養液で媒染し、色素を定着させます。
四大スパイスの歴史
さて、四大スパイスについてです。四大スパイスとは、世界を変えてしまった4つのスパイスのこと。
コショウ・ナツメグ・クローブ・シナモンがそれにあたります。これらのスパイスは一度は目にしたり、食べたことがあったりするのではないでしょうか?ナツメグとクローブは直接使った記憶がなくても、ハンバーグの中に入っていたり、チャイやお菓子などに使われていることがあるので、自分で購入したことはなくても実はおうちのなかのスパイスラックにはあったり・・・ということがあるかもしれませんね。
世界を変えた・・・とはどう言うことなんでしょうか?香辛料が現在では考えられない価値を持ち、どうやって世界に広まっていったのか。一つずつのスパイスの特徴や歴史、エピソードとともにスパイスの旅に出かけましょう!
コショウ
コショウ科コショウ属のつる性植物。実を乾燥させてコショウに使用します。ブラックペッパー、ホワイトペッパー、グリーンペッパーの3種類がありますが、植物の種類が異なるわけではなく、収穫時期や加工方法が違うんだそうです。ピンクペッパーは形状が似ていますが、コショウの実ではなくコショウと全く関係のないコショウボクという木の実を乾燥させたものです。
レッドペッパーはなぜペッパーというの?
レッドペッパーとは英語で唐辛子のことを指します。レッドペッパーを発見し、広めたのはあのコロンブスです。コロンブスはスペインからインドへと1492年に航海へ出発します。インドにはコショウをはじめとする貴重で高価な香辛料がたくさんあり、ヨーロッパでは非常に高値で取引されていたため、新しく貿易先を開拓する、という目的がありました。が、スペインから西回りで航海をスタートさせたため、コロンブスが発見し到達した新大陸はインドではなくアメリカでした。ペッパーを求めていたコロンブス、アメリカで発見したトウガラシを「レッドペッパー」だ、として持ち帰りました。コショウの仲間ではないのにトウガラシの名前が「レッドペッパー」なのはこのためです。
コショウの歴史
インドが原産地のコショウについて一番古い記録は今から約2500年前(紀元前500年)のもので、古代ギリシャで医薬品や食品として使用されていたようです。ヨーロッパでは保存食として塩漬けにした食肉をつくり、冬の間食べていました。しかし塩漬けだけでは肉の臭みはとれません。冷蔵庫などはもちろんない時代、食肉の調理、加工、保存に欠かせなかったのが香辛料、とりわけコショウでした。コショウのなかのピペリンという物質は抗菌、防菌、防虫作用で知られており、料理だけではなく、航海において食料品の保存にも使われていました。
そのころヨーロッパには原産地のインドから何人もの商人の手を経てコショウが入ってきたため、ヨーロッパの市場に出るころにはなんと1粒単位で扱われ、銀貨一枚とコショウ一粒が同じ値段だと言われていたのです!ロンドンの波止場にある倉庫では、コショウが持ち出されないように、出入りする人のポケットはすべて縫い止められていたそうですよ。今では考えられないほど貴重だったんですね。
コショウが日本に入ってきたのはいつ?
ヨーロッパから中国へ持ち込まれたコショウ、日本へは中国から持ち込まれました。奈良の正倉院の御物のなかにコショウがあったことから8世紀には日本に伝来していたことがわかっています。
コショウは生でも食べられる
カンボジアなどコショウの産地では、野菜として生のコショウを房のまま食べる習慣があるそうですが、とてもおいしいそうです。日本でも市販品で生コショウの醤油漬けがあるようで、私はまだ食べたことがないのですがぜひ試してみたいと思っています。
ナツメグ
ニクズク科ニクズク属の常緑高木です。杏子やスモモに似た黄色い果実が実り、熟すと実が裂け赤い格子状の仮種子が見えるようになります。この赤い仮種子は別のスパイスで「メース」と言います。種子を乾燥させ、種子の中の仁を分離させ、種を割り仁だけ取り出してすりつぶしたものがナツメグです。原産地はインドのモルッカ諸島のなかにあるバンダ諸島です。
ナツメグの歴史
ナツメグをヨーロッパへ大量に持ち込んだのはマゼランでした。ポルトガルで生まれたマゼランは、香辛料の価値を高く評価していたスペイン王室をスポンサーにつけ、世界周遊の大航海に乗り出します。1519年のことです。そしてグアム島にたどり着き、その後フィリピンのセブ島でマゼランは戦死してしまうのですが、マゼランが率いていた一団(実に5隻256名!)は、その後通称”スパイス諸島”であるモルッカ諸島に到着しました。1522年にスペインに帰り着いたのはなんと1隻、生き残った船員は18名のみ。それが「ヴィクトリア号」です。ヴィクトリア号には沢山の香辛料が摘まれていました。ナツメグ、メース、ほかにクローブなども摘まれていましたが、この香辛料ははらった犠牲をはるかに超えるだけの莫大な利益があったということです。
メースは高級品
現在パウダーのメースは10gで200円前後のメース。ナツメグ、ターメリックが10g130円、クミンパウダーは10gで116円程度なので、すこし高級です。その昔ロンドンではメース500gに対して羊3頭の値が付いたと言われています。今も昔も価値の高いスパイスですね。
ナツメグの大量摂取は危険!
ナツメグを大量摂取することで、幻覚症状が現れることがあるそうです。大量に摂取しすぎると、最悪の場合死亡してしまうケースもあるということです。
アメリカでは18歳の女性がミルクセーキを作るときにナツメグをたくさん入れ(50g)、それを飲んでしまった後に吐き気、めまい、動悸、口の渇きなどの症状が出たということです。
また、ごく最近のケースでは、小さじ2杯(約10グラム)のナツメグを摂取した後、めまい、精神の混乱、手足が思うように動かせない、口の渇きが起こり、病院に運ばれました。
どちらも摂取してから数時間後に発症し、その後約10時間継続したということです。
ハンバーグやカレー、お菓子作りに日常的に利用されるナツメグですが、レシピ通りの分量を必ず守って使用するようにしましょう!ナツメグパウダーをひと瓶全部カレーに入れてカレーを作るなんてことはしてはいけません。
クローブ
クローブはナツメグ同様インドのモルッカ諸島が原産地です。フトモモ科のチョウジノキという植物からとることができます。クローブはスパイスの中では珍しく、花蕾(からい)というつぼみを乾燥させてスパイスにしています。年二回収穫できますが、クローブの木は10mほどにもなり、非常に高い位置に蕾をつけるためやぐらを組むなどして収穫を行っていたため、ほかのスパイスと比較しても高価でした。
クレオパトラも愛したクローブ
クローブの歴史もまた古く、紀元前からインドや中国で消毒、殺菌のために使用されていたそうです。クローブの香りについて、こんな話を知っていますか?エジプトのプトレマイオス王朝を最後に治めた女王クレオパトラ(紀元前69年-紀元前30年)。
彼女は絶世の美女と言われていますが、美容にかける情熱が高かったことでも知られています。オリジナルで香りを調合して、シーンによって使いわけるなど様々なことをしていました。
クローブから抽出したオイルと、バラや麝香などのオイルを調合してカエサルたちを虜にしたと言われていますが、さらにクレオパトラは自分自身の乗船した船の帆に貴重なクローブのオイルを塗っていたそうです。おかげで彼女の乗船した船が港に近づくと、その香りでわかったのだとか!
人々はクレオパトラの姿を見る前に、香りによって彼女の存在を感じることになります。船の帆にクローブのオイルを塗るとなると、膨大な量が必要でしょうし、まして香りの持続時間を考えると何度か塗り重ねたものと思われます。クローブは大変な貴重品だったわけですし、それだけのものが用意できるというパフォーマンスとしても有効だったでしょうね。
日本にも正倉院の御物として「丁子」の記録がありますが、それ以前の5,6世紀に紹介されていたようです。1762年に江戸幕府が奧医師の桂川甫筑(かつらがわ ほちく)に丁子油の生成を命じています。
ゴキブリはクローブのにおいが嫌い
ゴキブリはクローブの香りが苦手なんだそうです。ゴキブリが出てほしくない箇所に、クローブを瓶に入れてガーゼをかぶせて輪ゴムで止めておけば、ゴキブリが寄り付かないんだそうです。
シナモン
シナモンはクスノキ科ニッケイ属(Cinnamomum)の複数樹木の樹皮を乾燥させたスパイスです。実はシナモンには種類があるのです。ご存知でしたか?私は知りませんでした!
シナモンの種類
シナモン、として販売しているものの中には以下の種類があります。種類によって成分や香りが異なってきますので、用途に合わせて選ぶようにしましょう。「シナモン カシア」や「シナモン セイロン」などと記載がある場合があります。原産国など記載事項を確認してから購入するようにしましょう。
カシア・シナニッケイ(cinnamomum cassia)
カシアはチャイニーズシナモンとも呼ばれ、流通量は一番多いものとなります。クマリンという物質を含んでおり、大量摂取は肝臓に負担をかけることになりますので注意が必要です。
セイロンニッケイ(cinnamomum verum)
スリランカシナモン・セイロンシナモンなどとも呼ばれるこの種類は、カシアとは成分も異なってきます。カシアと比較すると値段も高価です。
どっちがいいの?カシアとセイロンニッケイ
どちらも同じシナモンという名前で流通していますが、二つは成分が異なり、また香りの質も異なります。香りの持続という点ではカシアよりセイロンのほうが繊細なため、香りを残したいものはカシアのほうが良いかもしれません。成分の面でいうと、シナモンにはクマリンという成分が含有されています。クマリンは大量に摂取することを続けると肝機能に負担がかかることがわかっています。また、セイロンニッケイと比較するとカシアに含まれるクマリンの量はセイロンニッケイの約200倍という結果が出ています。クマリンの一日の摂取量はシナモンだけで摂取したとすると、シナモンカシアでティースプーン1杯弱(15g)です。
一部報道でシナモンは抗酸化作用が認められたとされ、一時期シナモンを毎日摂取する習慣が話題になりましたが、毎日ティースプーンに一杯シナモンを摂取したい場合は、カシアではなくセイロンニッケイを選んだ方が良いでしょう。
シナモンの歴史
紀元前4000年の古代エジプトでは、人は死んだあとその魂が再び死者の体内に帰るものと信じられており、庶民は土葬が一般的でしたが貴族や王の遺体は、魂が戻ってきたときに腐敗しないようにミイラへ加工し、永遠に保存しようとしました。このミイラづくりには実に様々なパイスが使われていました。クミン、マジョラム、アニス。どれも香りが強く、防腐効果のあるものです。その後シナモン(カッシア)が主に使われるようになりました。クローブも使われていたようです。記録として確認されているのは紀元前2600年。その頃にエジプト以外の場所から持ち込まれたのです。
シナモンの原産国はインド・スリランカ・バングラディシュ・ミャンマーですが、長い間、香辛料貿易の商人達によって、輸出国は謎のままだったそうです。
日本にシナモンが入って生きたのは、こちらも中国経由。コショウなどと同じ8世紀ごろに伝来していたようで、やはり正倉院の御物に記載があります。
現在の生産地はインドネシアと中国が約7割強を占めています。
カレー粉は四大スパイスでできている?
さて、スパイスをたくさん使うと言えば、イメージする料理はカレーではないでしょうか。インドカレーなどに使われるカレー粉、あれはスパイスをまぜあわせたもの。もしかして四大スパイスでできてる?と一瞬思ったのですが、四大スパイスのなかにはカレー粉の印象的な黄色が入っていません。
カレー粉は何でできているのか
さて手元にあるカレー粉は株式会社ナイル商会の「インデラ・カレー」でした。このカレー粉大好きです。キーマカレーはこのカレー粉で作るのですが、成分表示にはこう書いてありました。
ターメリック・コリアンダー・チンピ・クミン・フェネグリーク・ナツメグ・シナモン・フェンネル・赤唐辛子・ジンジャー・クローブ・スターアニス・カルダモン・甘草・ブラックペッパー
黄色はターメリックから出ている色ですね。そして入ってます四大スパイス。でもそれ以外のスパイスもたくさん入っているようです。
カレーの四大スパイスって?
カレーにとって大事な四大スパイスってあるんでしょうか?カレーの種類は多岐にわたりますが、基本のスパイスみたいなものがあるのかしら?と思って調査してみた結果、ターメリック・クミン・コリアンダー・レッドチリだけでスパイスカレーの風味が出るとのこと!
この四つさえそろえればスパイスカレーが作れちゃいます。ちなみにクミンはシードとパウダーがありますが、パウダーは量が調節できるのではじめてつかうときはパウダーがよさそうです。ちなみに私はシードが好きです。
番外編オールスパイス
オールスパイス、という調味料を見たことがありますか?昔カフェでアルバイトをしていた時に、キッチンでシチューを作るときに使っていたのを見たことがありました。いわゆるミックススパイスのように、いろんなものが混ぜ合わせてあるスパイスなんだと思っていたのですが、実は「オールスパイス」という植物があったのです。
オールスパイス
フトモモ科オールスパイス属の植物で、常緑高木です。6~9mほどの高さになる木で、主に果実をスパイスに使います。果実が未熟なうちに収穫・乾燥させて、スパイスとして使用します。グラインドして粉末状にしたものが流通しています。
オールスパイスの歴史
オールスパイスはジャマイカが原産地で、古くから中米で利用されてきました。防菌効果があったため、マヤ文明では王の死体を防腐するために使用されていました。オールスパイスを”発見”してヨーロッパに持ち帰ったのはスペインの冒険隊でした。16世紀中ごろにヨーロッパに持ち込まれたとき、すでに三大スパイスと呼ばれていた「シナモン・ナツメグ・クローブ」に似た芳香があるということで、「オールスパイス」と呼ばれるようになりました。その後中国にわたってからは、たくさんの香りがするということで、百味胡椒や三香子と呼ばれます。
オールスパイスの使い方
オールスパイス、どう使うといいのでしょうか?肉料理と相性がいいです。肉の臭みをうまく消してくれるため、ハンバーグやミートローフ、ソーセージなどにぴったりです。またトマトとも相性が良く、トマトソースにも使われます。
スパイスの歴史はほとんど大航海時代、新大陸の発見や地球が海でつながっていることの発見と並行して進んできたことがわかりました。それもこれも、スパイスの魅力に人々が魅了されたからです。
普段の料理にいつも使っているスパイスから、使ってみたことがないスパイスまでいろいろなものがありますが、スパイスの背景にある世界の歴史を想像しながら毎日の食卓人取り入れてみるのもすごく面白いと思います。
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