牧野富太郎先生ゆかりの植物園「高知県立牧野植物園」へ行こう!
小野寺葉月
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日本の植物分類学の父として有名な牧野富太郎先生の出身地である高知県の県立植物園は、その牧野先生の名前がついています。
目次
牧野富太郎とは
「日本の植物分類学の父」牧野富太郎先生は高知県高岡郡の生まれです。小さなころから植物が大好きで、学校も自主退学し独学で土佐の植物採集や研究を重ねていきます。18歳のころに欧米の植物学に影響を受け、高知県内で植物採集に明け暮れます。22歳の時上京し、東京大学理学部植物学教室へ出入りをしながら、日本の植物をまとめた本を作ることを夢見ます。1887年に最初に出版した「植物学雑誌」に記載された「ヤマトグサ」は、日本国内で日本人が行った最初の新種発表となりました。そこから94歳で亡くなるまで、実に1500種類もの新種や新品種の植物の命名をしました。
「なぜ花は匂うか」牧野富太郎 植物園探索におすすめの本です。
「なぜ花は匂うか」牧野富太郎 平凡社から出版されているSTANDARD BOOKS Ⅰ期のなかの一冊で、科学と文学両方の知性を持ち合わせた科学者・作家の随筆を一人一冊にまとめたシリーズ本です。牧野富太郎先生の随筆がまとめられています。「植物と心中する男」などタイトルから面白さがわかります。
牧野富太郎先生の植物画
ポストカードに映っている笑顔の紳士が牧野富太郎先生
牧野富太郎先生は植物画が本当に素晴らしく、現在ミュージアムショップでも牧野富太郎先生の植物画を使ったグッズが販売されています。私は植物園に行って牧野富太郎先生に関する展示を見たときに一番衝撃を受けたこと、それは先生が植物画を筆で描いていたのだ、と知ったこと。時代からして当たり前なのですが、あの繊細さをこの筆で表現していたのか・・・と改めて震えました。牧野富太郎先生の植物画は非常に美しいのです。植物のつくりが分かるように描かれていますし、正確です。この正確さこそが植物の妖艶さも表していて、牧野富太郎先生が植物に心酔していたことがよくわかります。前述した牧野富太郎先生の本「なぜ花は匂うか」でも「私は植物の愛人」と言っていたほどです。
牧野富太郎先生はお金の感覚があまりなかった
牧野富太郎先生の奥さん、壽衛(スエ)さんの名前をつけたスエコザサ。
牧野富太郎先生の生家は裕福な商家でした。しかし東京大学に出入りするようになってから、調査費用など植物研究に費用を投じて生家の財産を使いつくしてしまいます。26歳の時に壽衛(すえ)と結婚。生涯十三人の子をもうけますが、その生活はとても大変だったようです。なにせ金銭感覚のない牧野先生、植物の研究のために購入する書物には一切の妥協がないため、出産など子供にかかる費用、標本収集のための費用などで家計はどんどん困窮し、借金を取り立てられて家の引っ越しを行うことも一度ではありませんでした。この合間にも本の出版などを行い、さらに借金がかさむ・・・ということを繰り返していました。いよいよ標本などすべて売り払うしか後がないとしていた時、出資者が現れます。牧野富太郎先生はよほど植物に愛されたのか、貴重な標本や蔵書を売らねばならぬ。というときにかぎって、必ず誰か救世主が現れて窮地を救ってくれたのだそうです。
高知県立牧野植物園に行ってきました!
牧野富太郎先生の名前を冠した植物園は、高知県高知市の五台山のなかにあります。山の一部が植物園になっており、広大な敷地に植物園や牧野富太郎記念館、温室、ミュージアムショップ、レストランなどがあります。記念館の設計は内藤廣氏によるもので、植物と調和するような建築になっています。2016年の5月に訪れたときの写真とともにご紹介します。牧野植物園に行きたくて高知旅行を決めたので、一日たっぷり見ようと思っていきました。
正門から本館までの間は土佐の植生がテーマになっています。
入口すぐにレストランがあり、早めの昼食をとりました。とても美味しいです!ガラスに貼る衝突防止マークは牧野先生のサイン(うずまきの中心に平仮名の「の」)がモチーフになっていました。
レストラン近くの池。さて問題です。この写真の中にカエルは何匹いるでしょう・・・ 。
本館から庭園を巡ります
キバナノツキヌキホトトギス
キバナノツキヌキホトトギスは規則的な葉の付き方が非常に美しいです。牧野富太郎先生の本「花はなぜ匂うか」の表紙に植物画が想定されていますが、それが牧野富太郎先生が描いたキバナノツキヌキホトトギスです。
屋内には中央空間からの自然光が入ってくるため、植物が本当にきれいに見えます。
展示館中庭には牧野先生が命名された植物や、植物図に描かれた植物など、牧野先生にゆかりのある植物がたくさんあります。
ところどころにある水盤は木々の影や日のきらめきが映し出されて見ているだけで気持ちが静かになってゆきます。
水盤にうつる木々もまた表情が違って見飽きません。
トサノアオイ
開花サインがわかりやすく、統一されていて素敵です。
ちょうど5月の開花時期に見ることが出来ました。
バイカオウレン
牧野先生が大好きだったバイカオウレン。葉っぱの形が植物園のシンボルマークになっています。
牧野富太郎記念館の本館と展示室は屋根付きの回廊でつながっています。車椅子やベビーカーにも対応でスロープがあります。
雨の日に見てほしいところ
2日目に行ったときは雨だったのですが、雨どいが水生植物の鉢に合わせて設計されていたり、雨でも違った表情で楽しむことが出来ました。
雨だと床の木が濡れてまた違った雰囲気。
雨どいのデザイン
水生植物の鉢と雨どいを連動させています。
雨が降ると雨どいを伝って鉢に流れ込みます。その波紋も含めて見れて雨の日の見どころです。
石の水盤
水盤に雨の模様ができたり消えたり。
雨の日の植物
雨の時の植物たちも雨の時しか見ることができない美しさを持っていることが分かります。
ナツロウバイ
ナツロウバイも咲いていました。夏、と付いていますが本来の開花は5月です。
ブンタン
土佐文旦も有名なブンタンの木は白い花をつけていました。
ヌマスギの気根
南園の50周年記念庭園には池があり、そばに大きなヌマスギが生えていました。その池の縁に90度ほどヌマスギから離れた場所にヌマスギの呼吸根がありました。
温室
ビカクシダ
ヒスイカズラ
青みのある緑・・・なんとも表現しがたい色。
ヒスイカズラの花が落ちていたのできれいに並べてみました。
ネオレゲリア
ティランドシア・ウスネオイデスももさもさと。
食虫植物
温室の中には食虫植物もいます。
アリストロキア・サルバドレンシス
ダーンダーンダーンダーダダーンダーダダー♪と口ずさみたくなるフォルム!
ビカクシダ
ティランドシア・ウスネオイデスも大きい!
温室の外へ
マキバブラシノキ
キッコウチク
模様が亀の甲羅のようなキッコウチク
おまけ
南園の外に一体だけ恐竜がいます。
植物園は小さなお子さんと一緒でも大丈夫!
ご覧の通りかなりのボリュームの植物園で、1日では足らずに2日間通ってしまいました。それでも物足りないと思ったので、ご近所に住んでいる方が本当にうらやましいです。3歳になりたての子供と一緒に行きましたが、ベビーカーの貸し出しもあって広い園内でも大丈夫でした。エリアによっては山のような上り下りがあるため、ベビーカーを降りていく場面もありましたが、本館や展示室などおむつ替えシートのあるトイレもありますので小さいお子さん連れでも十分楽しめます!
牧野植物園は大人から子供まで、植物が好きな人も今まであまり興味がなかった人も、いろいろな楽しみ方ができると思います。ぜひ、行ってみてください!
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