編集部のこぼれ種#26「牧野富太郎博士が愛した植物園|牧野記念庭園に行ってきました♪」

戸松敦子
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植物と一緒に暮らしているLOVEGREEN編集部の、何気ない出来事や発見、雑談などなど……日々の一部をふらっとのぞいてみてください。今回は、NHKの2023年度前期連続テレビ小説「らんまん」の主人公のモデルとなる植物学者、牧野富太郎博士がこよなく愛した地を訪れたお話です。
練馬区立牧野記念庭園を知っていますか?植物学者の牧野富太郎博士が大正15年から30余年を過ごした住居とお庭の跡地です。博士の偉業を末永く後世に伝えるため、昭和33年に庭園として開園したそうです。
先日、植物好きの仲間と一緒に訪れることができました。
ダイオウマツとカンザクラ’大寒桜’
牧野博士は、ほぼ独学で植物知識を身につけ、1,500種類以上の植物を発見・命名し、日本の植物分類学の基礎を築いた一人として知られています。植物知識の普及活動にも尽力し、植物を知ることの大切さを子どもから大人にまで広く伝えた方です。「雑草という名の草はない」という、博士が残した名言をご存知の方も多いのではないでしょうか。著書「牧野日本植物図鑑」は、今なお研究者や愛好家の必携の書とされています。
入ってすぐに、立派なダイオウマツがあるのですが、ダイオウマツの下で牧野博士のほぼ等身大パネルがお出迎えしてくれました。(^^)
庭園内には、博士が学名を発表したり、和名を付けた植物など、博士にゆかりの深い植物が生育しています。のどかな野山の景色を思い起こさせるような楚々とした植物たちです。
スエコザサ
牧野博士は、限りない植物研究への励ましと愛をささげてくれた妻へ感謝と敬意を表し、妻が亡くなる前年に採集した新種のササの学名を「sasa suwekoana Makino」と命名してスエコザサという和名を付けたそうです。歌碑には、「家守りし妻の恵みや我が学び世の中のあらむかぎりやすゑ子笹」と刻まれています。
バイカオウレン
牧野博士が愛した花として有名なバイカオウレンは、ちょうど花が終わって白い花びらが散ってしまっていたのですが、その姿も可憐で美しく絵になっていました。
バイカオウレン
- バイカオウレンは、キンポウゲ科オウレン属の常緑多年草。東北南部から四国の山林、雑木林に自生します。明るい半日陰と豊潤な湿地を好みます。横に広がるように生長し、木漏れ日が入る山野に群生する姿が美しい野草です。 早春の2月~3月頃、白い花を咲かせます。早いものでは1月の末に咲いていることもあります。花の大きさは、直径1.5cm程度。5枚の白い花びらと中心から飛び出したしべ類が印象的です。白い花びらのように見える部分は、実は花びらではなくがく片です。これはキンポウゲ科の花によく見られる特徴で、クレマチスやクリスマスローズなども同様です。花びらは、しべに混じるようにして存在している黄色の部分。よく見るとスプーンのような形をしています。 葉は縁に切れ込みがある5枚の小葉からなり、学名についているquinquefoliaは「5葉」という意味があります。別名のゴカヨウオウレンも小葉が5枚であることに由来します。 バイカオウレンの名前の由来は、花が梅の花に似ていることからバイカ(梅花)、根が黄色いのでオウレン(黄連)だとされています。キンポウゲ科オウレン属の特徴は、根が黄色いところ。オウレンとは漢字で黄連と書き、黄色のヒゲのような細かい根を連ねる特徴に由来します。
サクラ’仙台屋’
牧野博士が植栽したとされる樹木は、樹木版の二次元コードの横に「ぐるぐるまきの」が印されています。博士が大切に育てていた樹木が時代を超えて花を咲かせ、私たちも見ることができるなんて本当に感慨深いですよね。
サクラ’仙台屋’
サクラ’仙台屋’は高知市内の仙台屋という店の前にあった品種で、牧野博士が名づけたと言われています。
アブラチャン
小さな黄色い花と名前が可愛いアブラチャン。その名の由来は、果実や樹皮に油が多くよく燃焼することから、油とチャン(瀝青)を合わせたのではないかという説があります。
トサミズキ
可憐な黄色い花が連なって下垂して咲くトサミズキ。高知県に自生している花木です。
トサミズキにとてもよく似たヒュウガミズキという花がありますが、その違いは小さな花が集まってぶら下がるように開花する花数で見分けることができます。ヒュウガミズキの花の数は1~3個、トサミズキの花の数は8個前後です。
カンザクラ’大寒桜’
庭園を訪れた時、入口で桜のアーチのように美しく咲いていたカンザクラ’大寒桜’。普通の桜よりも早く開花する品種です。
クサイチゴとハナニラ
白色の可憐な花が咲き終わると、キイチゴのような赤い実をつけるクサイチゴ。樹木の株元には様々な小さな花たちが健気に咲いていて、一つ一つの花をゆっくり見ているととても穏やかな気持ちになります。
ハナニラ
ハナニラは、春に星の形をした可愛い花を咲かせます。英名はSpring starflowerです。光に反応する性質なので、太陽に向かって花を咲かせ、夜や曇り、雨の日は花を閉じます。
ハナニラ(イフェイオン)
- ハナニラは、3月~4月に星形の花が開花する球根植物です。葉がニラの香りがすることが名前の由来ですが、葉に触れない限りは匂いません。 秋に球根を植えると翌春開花し、開花後の球根は植えっぱなしにできます。庭や花壇などに地植えにした場合は、球根を植え付ければその後の管理は不要です。植え付けた球根は分球し、年を追うごとに花数が増えていき、群生させると目を引きます。植えっぱなし球根の中でも最もほったらかしで管理できるので花壇や落葉樹の足元、空いているスペースなどに植えておくと重宝します。 ハナニラは光に反応する性質で、夜や曇り、雨の日は花が開きません。太陽に向かって花を咲かせるため、朝は東、午後は真上、夜は西を向き、時間帯によって花の向きが動く特徴があります。 基本種の淡い紫色をはじめ、さまざまな園芸品種があり、白、紫系濃淡、ピンクなど花色が豊富です。主な開花時期は3月~4月ですが、少し早い2月~3月に咲く黄花ハナニラや12月頃から咲き始めるイフェイオン・パルビフローラなどもあります。
カタクリ
カタクリはまだ雪が残る森でいち早く花を咲かせ、春の訪れを知らせてくれる植物。牧野博士が暮らしていた当時は近隣にも生育していたそうですが、現在都内で見られるのは珍しくとても貴重です。
アミガサユリ(バイモ)
釣り鐘の形をした花がうつむいて咲く、清楚で美しいアミガサユリ。細くて先がカールしている葉の姿も魅力的です。
フリチラリア
- フリチラリアは、春咲きの球根植物です。フリチラリアの仲間は豊富で、和名が「ヨウラクユリ」のFritillaria imperialis(フリチラリア・インペリアリス)、茶花で有名な「バイモユリ」のFritillaria thunbergii(フリチラリア・ツンベルギ)、パイソン模様のようなFritillaria meleagris(フリチラリア・メレアグリス)、「クロユリ」の和名で有名なFritillaria camtschatcensis(フリチラリア・カムチャトケンシス)などがあります。 花は釣鐘型に咲くのが特徴で、ちょっと変わった形状から愛好家も多い花です。フリチラリアと聞くとあまり耳馴染みがありませんが、バイモユリやクロユリは日本でも古くから茶花として親しまれてきました。 フリチラリアは春に開花し、夏には地上部が茶色くなって枯れていきます。高温多湿が苦手なので、夏は掘り上げて冷暗所で保存するか、日陰に移動させて乾燥気味に管理する必要があります。
「花在れバこそ吾れも在り」と刻まれた大きな顕彰碑は、牧野博士が命名したキンモクセイの隣にありました。
講習室の入口には、佐々木香菜子さんが描いた「牧野記念庭園の春」が飾られていて、優しい色づかいの素敵な絵とガラス越しに見えるお庭の美しさがとても印象に残りました。
牧野博士に関する数々の書籍も置かれていて、もっともっと牧野先生について知りたくなりました。
訪れた際にちょうど「拝啓 牧野富太郎さんへの手紙」という手紙コンテストの巡回展が行われていて、「牧野富太郎賞」などに選ばれた作品が展示されていました。牧野博士や自然、植物への思いが真っすぐに伝わってきて心がジーンとしました。牧野博士生誕160年を迎えた今も、博士の教えが多くの人々の心に響き続けていると強く感じました。
自分は植物愛が強いと自負していたのですが、牧野博士を知れば知るほど、まだまだ足りないと思ってしまいます。みんなでもっともっと植物を愛でていきましょう~。(^^)
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