まるでパックンフラワー?ウバユリの蕾から開花、種ができるまで観察してみた
小野寺葉月
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長野ではスーパーでもドライフラワーが売っているのを目にします。その中でこれ何なのかな?と思うものがありました。秋から冬にかけて売っているのですが、なんだかパックンフラワーのような形で・・・それはウバユリでした。春先から芽が出てきたウバユリはなかなか特徴的なフォルムです。観察してみることにしました。
目次
パックンフラワーのようなこれは何・・・?
冬、雪で地上の植物が枯れていくなか、パックンフラワーみたいな茎がスッと立ち上がっていました。
ドライフラワーで2,3本まとめて売っていたなあと思いながら観察しましたが、これは実がはじけた状態のまま、枯れたものです。
近所の方が「これはウバユリだよ」と教えてくださいました。
ウバユリってどんな植物?
植物名 | ウバユリ(姥百合) |
学名 | Cardiocrinum cordatum |
英名 | Giant lily |
科名 |
ユリ科 |
属名 |
ウバユリ属 |
原産地 |
日本 |
ウバユリはユリ科ウバユリ属の背丈が1mほどにもなる植物です。夏、7月~8月に花を咲かせます。ウバユリを漢字で書くと「姥」百合。花を咲かせたときには葉がおちてしまうことが多く、葉(歯)がないことから「姥」に見立てられました。
ウバユリは「一回繁殖型」の植物です。種から発芽(有性生殖)する場合は、芽吹きから花が咲くようになるまで6~8年かかると言われています。有性生殖のほかに「栄養繁殖」をすることができます。栄養繁殖とは、根や茎、葉などの栄養機関から次の世代の植物が繁殖する方法です。ウバユリは鱗茎という、茎がうろこ状に変化したものを根の位置に持ちますが、鱗茎から新しい鱗茎が生えてきます。一回繁殖で生長したウバユリは、種からの発芽であっても鱗茎から増えたものであっても、開花した後に鱗茎ごと枯れてしまいます。
栄養繁殖とともに有性生殖もされるため、種もつくられます。この種は数が多く、一つの実に500個前後入っています。薄い種で、風が吹くとぱあっと飛んでいきます。種から発芽して何年もかけて花が咲いても一年で枯れてしまうウバユリですが、種が多くそこら中にまかれるために次の年また近くのどこかから芽が出てみることができます。
ウバユリの生長記録
6月、蓼科で散策中にウバユリを見つけました。
ウバユリのことを一度調べたときにユリ科のなかでも葉が特徴的だと書いてあり、生え方もほかの植物と異なっていたのですぐにわかりました。葉はかなり大きくて、蕾がふっくらしています。
もう少し背が伸びた状態。蕾も膨らんでいます。
7月のウバユリ
茎がすすす、と伸びあがり、蕾だと思っていたところからはいくつかの蕾が出てきています。
蕾が美しいウバユリ
まるで魚が上向いているようなフォルムをしています。
それが!何日かすると、さらに茎が伸び、つぼみも一つ一つ別の状態に。
ウバユリが開花しました
左下の花がすこし開花しています。
花の中は茶色い模様があり、柔らかい香りがします。虫がたくさん花粉を集めに来ていました。
花が終わったウバユリ
9月、花が終わったウバユリは種を中に入れてパンパンに膨らんでいました。
中はどんな風になっているんでしょうか?
立ち枯れたウバユリ
10月、ウバユリは花が終わり立ち枯れていました。果実は茶色く乾燥し、三つに裂けていました。中には種がたくさん詰まっていて、風で飛んでいきます。
ウバユリの種
3つの部屋の中にたくさん入っているウバユリの種です。裂けたところは櫛のようになっていて風を受けると種が外に舞い上がります。
種は軽く、薄くて風に吹かれてどんどん飛んできます。飛ぶことがウバユリの生存戦略なんですね。
食用にできるウバユリ
ユリ属の植物は根(鱗茎)を食用にします。鱗茎は、葉が変化したもので養分がたまっています。「ユリ根」としてスーパーで販売されているもので、流通しているのはほとんどが北海道で栽培されているコオニユリの鱗茎です。オニユリ、ヤマユリなどの種類でもユリ根を食べることができます。そしてウバユリの鱗茎も食べることができます。
ウバユリの鱗茎は花が咲くと枯れてしまいます。が、子どもの鱗茎を近くに作ります。ウバユリの鱗茎は秋ごろ掘り出して食べます。
ウバユリの食べ方
食べ方はゆり根とほぼ同じです。ウバユリの鱗茎はよく洗い、水から茹で、竹串がスッと通るほどまで茹でます。ゆであがったら出汁で煮崩れさせないように気を付けながら煮詰めます。また、水洗いしてから天ぷらなどにしてもおいしいです。塩で食べるのがおすすめです。
北海道で大切にされたオオウバユリ
北海道などにはウバユリよりも大型のオオウバユリがあります。オオウバユリはウバユリよりもさらに丈が高く、2mほどにもなります。北海道ではアイヌ民族がオオウバユリの鱗茎を「トゥレプ」と呼び、穀物以上に大事にされていました。
旧暦4月のことをアイヌ語で「モキウタ」と呼びます。意味は『すこしばかりウバユリを掘る月』。
5月を「シキウタ」と呼びます。『本格的にウバユリを掘る月』いう意味だそうです。この時期に女性達が山野をめぐり、オオウバユリの鱗茎を集めます。集めた鱗茎から澱粉を採るそうです。澱粉をお団子にしてお粥に混ぜたり、薬として使われていたそうです。
山や沢へ行く機会があったらぜひウバユリを探してみてくださいね。
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