お正月飾りにもぴったり! 神聖な植物ヒカゲノカズラをご紹介
小野寺葉月
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ヒカゲノカズラという植物をご存知でしょうか。古来より日本では神聖なものとされてきた植物で、シダの仲間です。緑が少なくなってきた雪の中で青々としているヒカゲノカズラは、地域によってはお正月の飾りとしても使われている植物です。
目次
ヒカゲノカズラとは?
ヒカゲノカズラはシダ植物です。日本の山野に古来から自生している多年草で、カズラ(蔓)とついているようにツル性に思えますが、実際には木や植物に巻き付いたりすることなく、地を這うように生えています。ヒカゲノカズラ植物門、ヒカゲノカズラ網、ヒカゲノカズラ目、ヒカゲノカズラ科、ヒカゲノカズラ属のヒカゲノカズラ。ヒカゲノカズラ植物門の中には、イワヒバ類やミズニラ類などが含まれます。日本では沖縄以外のほとんどの地域で分布しています。生け花やアレンジメントなどで使われることが多いようです。
ヒカゲノカズラの自生地の様子
庭に、冬になっても青々としている蔓のような、手芸などで使うモールのような、そんな植物を発見。これがヒカゲノカズラです。
雪をかき分け、見てみるとかなり長いことがわかります。
地を這うようにふさふさと広がっていく様は、コケのようにも見えます。別名がたくさんある植物のようで、ムカデカズラやキツネノエリマキ、ウサギノネドコなど、地方によって呼び名があるようです。ムカデノカズラはムカデのような見た目だからでしょうか。キツネノエリマキやウサギノネドコは、実際に触ってみるとその名前の由来がわかります。みずみずしく硬めの筆のような触り心地です。
薬指と小指の間あたりから、地面に向かって白い根が伸びています。この根が30cmおきぐらいに生えていて、岩の間や地面にしっかり固定されているような状態です。
ヒカゲノカズラは神聖なもの?
古事記の中で、天照大神(アマテラスオオミカミ)が天岩戸に籠る場面が出てきます。天照大神が岩戸に隠れてしまうと世界がやみに包まれてしまうため、その時なんとか岩戸から天照大神を引っ張り出そうと、皆がいろいろな儀式をする中、天宇受賣命(アメノウズメ)は桶の上で着物を脱ぎ、「裳紐」をたすき掛けにして躍動感たっぷりに踊って見せます。それを見た八百万の神々は大いに盛り上がり、気になった天照大神が天岩戸から出てくる・・・という話があります。
ここで天宇受賣命(アメノウズメ)がたすき掛けにしている「裳紐」がこのヒカゲノカズラだという説もあるそうです。
ヒカゲノカズラは神事でも使用されることがあり、奈良県の率川神社(いつがわじんじゃ)の三枝祭(さいくさのまつり)などでは、巫女が鬘にヒカゲノカズラをつけ神楽を舞います。ちなみに三枝祭は別名「ゆりまつり」とも呼ばれるお祭りで、酒樽に笹ゆりをかざるそうです。
また、京都の伏見稲荷神社では毎年新年の1月5日に行われる大山祭に、御膳谷という五穀豊穣を願う神事があります。そこで神事に参加すると、「ヒカゲノカズラ」を首に巻くように配られるんだそうです。
クリスマスの時に常緑樹であるもみの木に生命の力を感じて大切にするように、ヒカゲノカズラも冬でも常緑であること、切ってもすぐに枯れず青々しい様子を保つこと、そのようなことから、日本でも古くから神聖な植物として大切にされていたのですね。
ヒカゲノカズラを使ったお飾り「掛け蓬莱」
お正月飾りに「蓬莱飾り」というものがありますが、関西では「掛蓬莱」というお飾りがあります。
ヒカゲノカズラをベースにしたお飾りで、長寿を祈願するものなのだそうです。長寿を祈るからか、ヒカゲノカズラは長ければ長いほど上品だとされているんだとか。
今回は掛け蓬莱を作ってみることにしました。ご近所さんに藁もいただき、ヒカゲノカズラも庭で採取したものを使います。
材料
水引(赤・白)各30本
藁 適量
ヒカゲノカズラ 適量
今回は庭で採れたヒカゲノカズラ1m30cm前後のもの3本で作ります。
①一つかみほどの藁を2つに分けてそれぞれをより合わせます。より合わせたら2本をさらにより合わせます。
水引は赤と白それぞれひねって一重の輪を作っておきます。
②一重になっている水引の輪に、赤と白の水引を絡ませ、写真のように二重になるようにし、赤と白の水引で固定します。
余った水引は切らないように背面に隠しておきます。
③藁で作った輪にヒカゲノカズラを通し、藁とヒカゲノカズラの間部分に水引を固定して、出来上がりです。
本来は床の間に飾るようですが、店舗などでは軒先に飾られることもあるそうですよ。
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