フジバカマ(藤袴)とは?|アサギマダラが集まる理由、花の特徴や育て方
山田智美
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フジバカマ(藤袴)の花をご存知ですか?旅する蝶々アサギマダラが集まる花として有名な秋の七草です。名前の由来や別名、花や葉の特徴、育て方、花の咲く季節、似た花を咲かせる種類など、フジバカマ(藤袴)について詳しく紹介します。
目次
- フジバカマ(藤袴)とは?フジバカマ(藤袴)基本情報
- フジバカマ(藤袴)の花咲く季節
- フジバカマ(藤袴)の花や葉の特徴
- フジバカマ(藤袴)にアサギマダラが集まる理由は?
- フジバカマ(藤袴)は秋の七草
- こんなにある!フジバカマ(藤袴)の種類と似た花
- フジバカマ(藤袴)の育て方
フジバカマ(藤袴)とは?フジバカマ(藤袴)基本情報
- 学名:Eupatorium japonicum , Eupatorium fortunei
- 科名・属名:キク科ヒヨドリバナ属
- 分類:多年草
フジバカマ(藤袴)とは
フジバカマとは、キク科ヒヨドリバナ属の多年草です。原産は中国。遠い昔に薬草として大陸から渡ってきたものが日本で野生化した帰化植物だと考えられています。フジバカマの花の色は、藤色というよりも淡いピンクから白。つぼみの時は淡いピンクの粒がギュッと詰まったような見た目で、開花すると小さな花びらが広がって、白い花火のように見えます。
フジバカマ(藤袴)の名前の由来
フジバカマという名前の由来は、日本に伝わる伝説が元となっているという説があります。
秋の野に薄紫色の袴を身に着けた美しい少女が悲し気に佇んでいました。人々は少女の様子が気になりましたが、あまりの美しさと神々しさに誰も声をかけることができませんでした。気になった村人が翌朝様子を見に行くと、その少女が立っていた場所から、少女の袴と同じ薄紫色の花が咲いていたそうです。人々はあの少女が花に姿を変えたのではないかと噂し、以来この花は、少女の袴の色に因んで「フジバカマ」と呼ばれるようになったと言われています。
フジバカマ(藤袴)の別名の由来
フジバカマは別名として蘭草(らんそう)、香草(こうそう)とも呼ばれます。由来は、かつての中国では香りの良い花に「蘭」の字を当てていたから、あるいはフジバカマの香りには邪気を払う力があり、蘭のように高貴な花とされていたからなど、諸説あります。
フジバカマ(藤袴)の香り
フジバカマは、葉に桜餅を思わせるような芳香があるのが特徴です。この香り成分はクマリンといって、桜の葉と同じものです。フジバカマの香りから桜餅を連想するのは自然なことのようです。フジバカマの香りは、咲いている時よりも乾燥させている途中、生乾きくらいの状態の時に強くなります。昔の日本の貴族たちは乾燥させたフジバカマの葉を着物に忍ばせて香りを身に纏ったそうです。
フジバカマの香りを手軽に楽しむなら、生花を自宅に吊るしましょう。乾いていく途中が一番香りを楽しめます。秋にはフジバカマの花束を部屋に吊るして、和の香りを楽しむのも風情があってよいのではないでしょうか。
フジバカマ(藤袴)は絶滅危惧種?
フジバカマ Eupatorium japonicum は絶滅危惧種に指定されています。かつては帰化植物として日本の野原や河原に咲いていたそうですが、今では野生のフジバカマにはなかなかお目にかかれません。
現在フジバカマとして流通しているものの多くは、絶滅危惧種のフジバカマ Eupatorium japonicum ではなく、育てやすい近縁種です。
フジバカマ(藤袴)の花が咲く季節
フジバカマの花が咲く季節は、8月~10月頃です。フジバカマは秋の七草にも数えられ、秋を代表する花とされていますが、実際にはまだ暑い夏から咲き始め、秋まで咲き続けます。
秋の花だと思って、秋が深まってから野に探しに行っても出会えないかもしれません。晩夏から秋にかけて咲く花だと覚えてください。
フジバカマ(藤袴)の季語
「藤袴」は秋の季語です。万葉集にも読まれているように、秋の野に咲く花ということで秋の季語とされています。
フジバカマ(藤袴)の花や葉の特徴
フジバカマ(藤袴)の花の特徴
フジバカマの花は、小さな花の集合体。切り花で流通している時はほぼつぼみの状態なので、小さな丸い粒がぎゅっと詰まったように見えます。花が咲き始めると、糸のように細い花びらを広げ、ふわふわとした羽毛のような優しい花姿になります。
フジバカマの花はつぼみの頃の方が紫色が濃く、花が咲くに従って淡い紫色から白の花火のような姿になっていくのも魅力です。
フジバカマ(藤袴)の葉の特徴
フジバカマの葉は、3枚に裂けたような形状で茎に対生しています。裂けていない葉もあります。葉の先が尖っているのが特徴です。
フジバカマの芳香は、花ではなく葉にあります。フジバカマの葉には桜餅を思わせるような甘い芳香があります。昔の貴族はフジバカマの葉を入れた香り袋を着物に忍ばせたり、お風呂に入れたりして楽しんだそうです。
フジバカマ(藤袴)にアサギマダラが集まる理由は?
アサギマダラという蝶がフジバカマに集まるという話は有名です。アサギマダラの名前の由来は、浅葱色(水色)のまだら模様があるから。アゲハチョウくらいの大きさで、季節によって北から南へと長距離を移動することから「旅する蝶々」とも呼ばれます。その飛距離は1000km以上とも、2000km以上とも言われています。
アサギマダラがフジバカマを好む理由は、フジバカマの香り成分であるクマリンに惹かれているとか、フジバカマに含まれるピロリジジンアルカロイドが雄のフェロモン生成に必要だからとか言われています。
人為的に植栽したフジバカマでも、アサギマダラは寄ってきます。アサギマダラを呼ぶためにフジバカマを育てるという試みが各地で行われています。
実際にアサギマダラがフジバカマに集まってくる様子を見たことがあります。アサギマダラは他の蝶と比べてとてもゆっくりと飛びます。フジバカマの花から花へと飛び回る姿はゆったりとしていて、見惚れるほど優雅でした。
フジバカマ(藤袴)は秋の七草
フジバカマは秋の七草の一つです。秋の七草とは、山上憶良が万葉集で詠んだ二つの歌が由来とされています。
秋の七草とは、「オミナエシ(女郎花)、ススキ(尾花)、キキョウ(桔梗)、ナデシコ(撫子)、フジバカマ(藤袴)、クズ(葛)、ハギ(萩)」の7種類です。
秋の七草は、春の七草のように食べられる花ではありません。その花姿を愛で、香りを楽しみ、秋を感じる、季節の移ろいと情緒を楽しむことを目的しています。フジバカマは秋の七草の中でも特に香りが良いことで有名です。
フジバカマ(藤袴)は秋の七草だけど外来種
秋の七草は、万葉集にも登場するくらい昔から日本で愛されてきた秋の野花ですが、この中でフジバカマだけが中国からの帰化植物であるということはあまり知られていません。学名も Eupatorium japonicum となっているので日本固有種のようですが、実は外来種というのがおもしろい話です。
▼秋の七草について詳しく紹介しています。
こんなにある!フジバカマ(藤袴)の種類と似た花
フジバカマの仲間で、フジバカマによく似た花を咲かせる種類を紹介します。
ユーパトリウム(セイヨウフジバカマ)
- 学名:Eupatorium
北アメリカ原産で、フジバカマと同じくヒヨドリバナ属の多年草です。ユーパトリウムと呼ばれる品種にはいくつかあります。フジバカマのように薄紫色の花を咲かせる品種の他、白花種や葉茎は濃い茶色のものなどがあります。
ヒヨドリバナ
- 学名:Eupatorium makinoi
フジバカマを少し小ぶりにしたような花です。乾燥気味の土地を好みます。フジバカマよりもピンクが濃いのが特徴です。白花種もあります。ヒヨドリバナも葉を乾燥させると芳香を放ちます。
ヒヨドリバナという名前の由来は、ヒヨドリが渡る秋に咲き始めるからだとされていますが、実際には7月頃から咲き始めます。
サワヒヨドリ
- 学名:Eupatorium lindleyanum
サワヒヨドリもヒヨドリバナと同じく、フジバカマによく似た花を咲かせます。サワヒヨドリはやや湿った土地を好みます。葉は対生しているのが特徴です。
ヨツバヒヨドリ
- 学名:Eupatorium glehni
ヨツバヒヨドリも他の種類と同じく、フジバカマによく似た花を咲かせます。ヨツバヒヨドリは湿った土地を好みます。葉は3~4枚輪生するのでヨツバヒヨドリと名付けられたそうです。
フジバカマ(藤袴)の育て方
場所・用土
庭植え、鉢植えともに日当たりの良い場所で管理します。肥沃な土壌を好むので、庭植えのフジバカマは腐葉土たっぷり漉き込むようにしましょう。鉢植えは市販の園芸用培養土で問題なく育てられます。
水やり
表土が乾いたら、たっぷりと水やりします。乾燥が苦手なので、水を切らさないように注意しましょう。
肥料
特に必要ありません。過肥は花付きが悪くなる原因となります。生長が悪くなってきたと感じたら、緩効性肥料を適宜与えてください。
病害虫とその対処法
うどんこ病やアブラムシの被害にあうことがあります。風通し良く管理するようにし、見つけ次第薬剤を散布します。
冬越し
フジバカマは冬には地上部が枯れて越冬します。秋の花を楽しんだら地際で刈るようにして、翌春の芽吹きに備えてください。
フジバカマは薄紫の楚々とした風情の花を咲かせ、乾燥させた葉からは芳香を漂わせる魅力的な秋の七草です。花を愛でて、葉の香りを楽しむ。フジバカマの魅力を知って、秋には秋の情緒を味わってみませんか。
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