高山性オダマキの花と育て方 -趣味の山野草-
LOVEGREEN編集部
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春になると園芸店や花屋でよく売られているオダマキ。その多くは日本のミヤマオダマキや海外に自生しているセイヨウオダマキを交配させて作られた園芸品種です。園芸品種のオダマキは丈夫で育てやすく花数が多いものやカラフルな見た目のものなど、毎年多くの品種が作出されています。
交配種のオダマキもとても可愛らしくて良いのですが、今回は交配種のオダマキではなく、山野草に分類され原種が多い高山性のオダマキとその仲間たちをご紹介します。
目次
原種とは
原種とは品種改良される前の野生に存在している種(亜種・変種含む)のことを指します。そのため、交配種以外にも人為的に選抜されたものや、交配・交雑したものなどは栽培品種という扱いになります。ただし、個人的には野生に生えているものの中から選抜して採取されたものに関しては、栽培品種ではあるものの原種と考えて良いのでは……と思います。当然実生による選抜は人為的なものなので栽培品種だと思いますが……。
とは言え、原種や栽培品種を細かく気にするのは学術的な記述や品評会などに出展する時が殆どで、普通に栽培を楽しむ場合にはそこまで気にしなくても良いように思います。どちらかと言えば原種かどうかよりも、交配(交雑)種か否か、という区切りの方が大きいでしょう。そのジャンルの原種に見慣れていると、やはり原種の選抜品種と交配種はどことなく雰囲気が変わっていて見た目での判断が出来てくるようになってきます。
また、原種だから優れているだとか、交配種だから劣っているということは無く、どの品種もそれぞれ良いポイントがあると思います。
高山性オダマキとその仲間
日本の野生に生えている高山性オダマキは主に中部地方以北の冷涼な地域に分布しています。ミヤマオダマキなどは産地によって分けられて流通しており、流通量が多いもので言えば、青森県八甲田山に自生している八甲田ミヤマオダマキや、北海道徳舜瞥山原産の徳舜瞥ミヤマオダマキなどがあり、花色や大きさに差があると言われています。また、白花や桃色花を咲かせる花色変異種も固定化されて流通しています。
ミヤマオダマキ以外にもヤマオダマキやシズノオダマキなどが日本に自生しています。ヤマオダマキは高山性ではなく、標高の低い野山にも自生しています。
また、現在オダマキと言えば西洋オダマキの交配種のことを示す場合が多いですが、狭義でのオダマキはミヤマオダマキの選抜種であろうと言われているオダマキ(Aquilegia flabellata var. flabellata)というものがあります。
Aquilegia flabellata var. flabellata
オダマキはミヤマオダマキよりも1~2周りほど大きいことが特徴です。A. flabellata の基本種として登録されていますが、主に民家の近くでのみ発見されていて山の中などでの発見が少ないため、ミヤマオダマキの選抜種ではないかと言われています。とはいえ、そのあたりが詳しく記載された文献を見つけることが出来なかったため、正確なことは分かりません。
オダマキ/徳舜瞥ミヤマオダマキ/八甲田ミヤマオダマキ/早池峰ミヤマオダマキ/白花ミヤマオダマキ
オダマキとミヤマオダマキの見分け方については葉の形を見るのが有効かと思います。オダマキの葉が2~3分裂するのに対し、ミヤマオダマキは3全裂するそうです。(参考文献:大橋広好・ほか編(2008)『新牧野日本植物図鑑』北隆館, p134)
それを踏まえて画像の葉を比較してみると、オダマキは3分裂なのに対し、白花ミヤマオダマキ以外のミヤマオダマキは3全裂(葉が3枚に分かれている)になっています。また、葉の色の違いも出ています。オダマキと白花ミヤマオダマキは白いブルームがかった緑色なのに対し、ミヤマオダマキは普通に近い葉の色をしています。
このことから画像の白花ミヤマオダマキは、オダマキの白花個体である可能性が高いでしょう。
八甲田ミヤマオダマキの葉裏
ミヤマオダマキは葉裏から茎に掛けて細かい毛が生えています。葉裏と茎に毛があるものがミヤマオダマキ、葉の無いものがオダマキだと言われていますが、葉の特徴からオダマキに分類されたものにも極少量ながら毛が生えていました。
オダマキの葉裏
また、オダマキ、ミヤマオダマキの毛は簡単に抜けるため、葉によってはミヤマオダマキでも毛が生えていないものがあったりと、分類の基準に葉裏の毛を判断材料にするのは少々難しいような気がします。
株の大きさで言えば、一般的にミヤマオダマキは草丈10~20cm程度と言われていますが、オダマキは20~30cm程度の大きさで、高山植物の宝庫である礼文島のミヤマオダマキは最大25cm程度まで生長するようです。
オダマキの花
山野草の中でも比較的大振りな花を咲かせるオダマキ。クリスマスローズのように少しうつむき加減に咲く姿もオダマキが日本人に好まれる理由の1つです。
八甲田ミヤマオダマキ
基本的に青~紫色の花を咲かせるミヤマオダマキの定番種です。ミヤマオダマキの中でも小型なタイプで、草丈5cm程度で開花します。高山性の山野草ですが、育てるのはさほど難しくありません。
徳舜瞥ミヤマオダマキ
八甲田ミヤマオダマキと同じく、通常のミヤマオダマキよりも小さいサイズで開花するタイプです。花の色や形などは八甲田ミヤマオダマキとほぼ同じです。同時に複数輪の花が咲くとボリューミーでとても見ごたえがあります。光の加減によってガクの色がグラデーションに見えるのも美しいです。
菊咲きミヤマオダマキ
ミヤマオダマキの花びらが多弁化したものです。花色はオダマキですが、見た目は完全にキク科の花のように見えます。性質は強健で、普通のミヤマオダマキと同じ育て方で問題ありません。
白花風鈴オダマキ
小さい風鈴のような花を咲かせる風鈴オダマキ(Aquilegia ecalcarata)です。白花や交配種の乙女風鈴オダマキなどがあります。かつてはセミオダマキ属に分けられていましたが、近年オダマキ属に統合されました。距が発達していないところが普通のオダマキと違います。
ルリオダマキ(ピコティ)
花弁がクリーム色の覆輪(ピコティ)になっているルリオダマキです。ミヤマオダマキには無い独特な赤紫色が非常に美しく、覆輪の入り方も良いです。偶然発生したものですが、自家受粉したため実生と栄養繁殖による固定化を目指しています。ルリオダマキとミヤマオダマキを見分けるポイントは距が伸びているか丸まっているかです。前者がルリオダマキで、後者がミヤマオダマキになります。
キバナノオナガオダマキ
アメリカ南西部の高山帯に自生している原種オダマキです。黄色い花弁と長い尾、天を仰ぐような花の向きが何ともカッコいいオダマキです。つぼみの段階もロケットの様でカッコよく、少年心をくすぐられます。
オダマキの種まき
オダマキは自家受粉と交雑がしやすい植物です。開花後にできるシードポットの中には無数の種が入っており、発芽率も良好です。
シードポットを割ると中からゴマのような種が出てきます。基本的にはティッシュなどに包んで冷蔵庫で秋まで保管し、涼しくなった9月下旬ごろに蒔くと良いでしょう。もちろん採りまきでも大丈夫ですが、その場合は夏越しに気を付けましょう。
山野草の土などに種を蒔いて2週間~1か月程度で芽が出てきます。オダマキの種は発芽に光を必要とするため、土の中に種を埋めないように注意してください。
発芽からさらに2~3週間程度するとオダマキらしい葉が出てきます。この後はなるべく徒長させないように日当たりを調整してあげましょう。また、株が大きくなるにつれて求める水分量も高くなるため、水切れに注意しましょう。
今回はたまたま斑入りのオダマキが発生しました。恐らく生理障害によるものではないかと思います。
発芽後は水切れに注意しながら管理すれば最短で2年後には開花するようになります。
高山性オダマキの育て方
種類によって育て方が若干変わってきますが、基本的には水はけの良い土を使って植えて、半日陰の風通しの良い場所で管理します。使用する土は市販の山野草の土が便利です。水やりは土の表面が乾いたら水やりをしましょう。地植えの場合はほとんど水やりは必要ありませんが、植え付け直後などは水切れを起こしやすいので注意が必要です。寒さにはとても強いので、屋外で越冬可能です。その代わり暑さには弱い傾向があるため夏越しに注意しましょう。
詳しくはミヤマオダマキの植物図鑑をご覧ください。
オダマキの紅葉
秋になり気温が下がってくるとオダマキの葉が紅葉しだします。最初は黄色に染まり、徐々に赤く染まっていく様子は非常に美しいです。
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